正直なのはいいが時と場合を考えてくれ・・・
「なあルシ。後どれくらいで町に着くんだ?」
「まだだ」
ルシは道のない森を突き進む。
その後ろをカルロがついて行く。
――ザシュパキ―――
「早くつかねぇかな・・・よっと」
―――ザシュザシュパキバキ―――
「・・・」
「それにしても・・・よいっしょ。険しい・・・いよっと。森だな・・・どっこいっしょ!」
―――ザシュザシュザシュパキバキバキ―――
「・・・・・・」
「ふぅ~。どうしたルシ。立ち止まって」
「カルロ」
「どうした?」
「もっと早く歩け」
「おいおい。俺は早く歩いてるぜ」
「では、お前が通った道を見てみろ」
「道?」
カルロは自分が通ってきた道を見た。
木々が生い茂り、地面には草が生え、道といえる道がない。逸れてしまうと完全に迷う森だ。
「道がなくて険しい森だな」
「そうだな。道はない・・・はずだった」
「はずだった?」
「お前が通るまでだ。もう一度見てみろお前が進んできた道を」
ルシに言われカルロは再度自分が来た方向を見た。
自分に触れそうな木の枝は剣で切り落とし、生い茂る草も防具に付着しないようにしっかりと踏み草の道が出来ていた。
「うむ。綺麗に出来てるだろ?」
「そうではないだろ。その行動で遅れてるんだ」
「そうなのか。・・・仕方ないね」
「・・・ハァー。それをしてなけれ今日くらいに着いているんだぞ」
「そんな事言ってもな。防具に傷がついたらどうするんだよ」
「いいではないか、防具はその為にある」
「確かにそうだ。だがな傷が付いた防具は買い換えないといけないだろ」
「・・・まぁ、最終的には、そうだな」
「そうだろ。だから傷をつけないようにしているんだ」
「傷ってお前。木の枝や、草でか?」
「ああ。当たり前だ」
「・・・・・・」
「その目は何だよ」
「いや、いい。兎に角それをしてもいいが、あまり明確にするな。魔物が着いてくるリスクが増える」
「わかったよ」
「では行くぞ」
ルシと俺は森を進んでいった。
「今日はここで野宿にするか」
日が沈みかけ、夕暮れから夜になってきた。
「明日の夕方には着くだろう」
「そうか。いや~長かったな」
「誰のせいだ。本来なら今日の昼には着いてたんだぞ」
「反省はしている。だが謝らない」
「反省してるだけいい」
―――ガザガザ―――
「「・・・・・・」」
二人は剣を構えた。
「魔物か?」
「わからん。だが、油断はするな」
「へいへい」
―――ガサガサ―――
音が大きくなる。
「・・・近いな」
「来るぞ」
ルシが言った瞬間それは飛び出した。
「グルル・・・」
「・・・狼か」
ルシはそう言った。
目は赤く、綺麗な銀色の毛、体は子供くらいの大きさだった。
「結構大きな狼だな」
魔物ではなくても十分危険な獣だ。
二人は慎重に間合いを取った。
「グルル」
狼は二人を交互に見る。
「カルロ。あいつが襲ってくる瞬間を仕留めるぞ」
「ああ」
「グルルル」
狼は徐々に近づいてく。
「「・・・・・・」」
「グルル・・ル・・・」
「・・・ん?」
ルシが何かに気が付いた。
「どうした?」
「カルロ。こいつ傷を負ってるぞ」
「傷?」
そう言われて狼を見る。
「・・・本当だな。罠にでもかかってしまったのかな」
カルロは狼の後ろ足から血が出血しているのに気が付いた。
「グルル」
狼は足を引きずりながら近づいてくる。
「どうする?」
カルロは剣を構えながらルシに聞く。
「・・・ここは私に任せてもらってもいいか?」
ルシはそう言った。
「・・・わかった。まかせる」
「すまないな。・・・安心しろお前に危害は加えるつもりはない」
ルシは剣を置いた。
「ガルルル」
ルシが近づくと狼は臨戦態勢になり体を低く構え始めた。
「落ち着け。私はお前を手当てしたいだけだ」
「ガルルル」
「怯えなくていいぞ」
ルシは手を差し伸べた。
「ガウ!!」
「ッツ!」
「ルシ!」
狼がルシの腕に噛み付いた。
「今助ける!」
カルロは剣を抜こうとした。
「待て」
しかし、ルシが静止を掛けた。
「・・・私は大丈夫だ。だから剣を下ろせ」
ルシは冷静に言ってはいるが、腕から滴り落ちる血を見ると軽い傷ではないことがわかる。
「だけどルシ・・・」
「いいから」
助けようとするカルロに再度静止を呼びかける。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・わかった」
「すまんな」
ルシは腕に噛み付いている狼に目を向ける。
「ガルルル!」
「安心しろ。怖がらなくいい」
狼に優しく言う。
「ここに来るまでに怖い目にあったんだろ?大丈夫だ。私はお前に怖い事はさせん」
「・・・・・・」
「手当てをさせてくれないか?」
「・・・・・・」
狼はルシの腕を開放した。
「いい子だ」
ルシは狼に手当てをしてあげた。
手当てをされてる間、狼は大人しくしていた。
「よし。終わったぞ」
「・・・クゥ~ン」
狼がルシの頬を舐めた。
「ハハ、お詫びのつもりか?」
「クゥ~ン」
「気にするな。私は大丈夫だから。今度は罠にかかるなよ」
「ワオン!」
狼は森の中へ姿を消した。
「・・・ふぅ」
「何がふぅ・・・だ。心配したぞ」
「すまない」
「謝らんでいい。それよりはやくその傷見せろ。菌が入ると大変だからな」
カルロはルシの腕を取った。
「っつ!」
「・・・結構深いな。よく我慢できたな」
「褒めても何も出んぞ」
「いらねぇよ。・・・少し滲みるが我慢しろよ」
カルロは袋から酒を取り出し、ルシの腕に少しづつかける。
「ック!・・・中々滲みるな・・」
「我慢しろ。綺麗に殺菌しないと大変だからな」
「・・・ありがとカルロ。・・・だがな」
「何だ?」
「手当てをしてもらって言うのは気が引けるが、・・・手袋をして口に布を巻いて体にエプロンを付けてする事もないと思うが・・・」
これでは手当てを超えて、大きな手術をされてる気分だ。
「俺に血がついたら大変だろ、手に付いたら綺麗に洗い流して殺菌しないといけないし、防具についたら磨きなおして錆びないように錆止めも塗らないといけなし」
「・・・そうか」
カルロは持ち前の潔癖症を活かし丁寧に手当てをした。
「よし、終わったぞ」
「すまないな」
狼に噛まれた腕は綺麗に布で巻かれていた。
「簡単な応急処置をしただけだから、街に着いたら見えもらえよ」
「あれで応急処置だったのか・・・心配はないと思うが、まぁそうするよ」
「じゃあそろそろ寝るか」
「そうするか」
「カルロ。それそれ行くぞ」
「ああ。準備はできてるぞ」
朝になり二人は森を抜ける為、歩き始めた。
「おいカルロ。早くしないとまた野宿になるぞ」
ルシは後ろで枝を切りながら草をしっかりと踏み潰しながらゆっくりと進むカルロを言った。
「そんな事言っても・・・よっと。汚したくないから・・・ほっ。しょうがないだろ・・・よいしょっと。どこかに近道はないのかよ・・・」
「文句を言うな。ここまで険しい森に近道なんてあるものか・・・ん?」
「どうしたルシ?」
ルシは立ち止まって前を見ていた。
「前に何かあるのか・・・」
カルロはルシが見ている先を見た。
「・・・あれは昨日の狼か?」
狼はこちらを見ている。
「あの狼お別れでも言いに来たのか?」
「どうだろうな。まぁ襲ってくる気配はないな」
暫くすると狼は森の中へと歩き始めた。
しかし、二人の視界から消えないように時々立ち止まる。
「・・・ついて来いってことか?」
ルシは狼の仕草を見てそう感じた。
「大丈夫なのか?」
「わからんが、悪い事は起きないだろう」
ルシは狼の後をついて行った。
「あ、おい待てよ!」
カルロも汚れと傷がつかないよう後を追った。
「・・・すごいな」
「ああ。まさかこんな短時間で森を抜けれるとは思わなかったよ」
二人は狼の後をついて行った結果、日が高く上がる前に森を出ていた。
「まさかあんな道があるとはな。お前も歩きやすくてよかったな」
「まったくだな。おかげで手間が省けたよ」
「・・・・・・」
狼はそんな二人をじっと見ていた。
「お前のおかげで早く森を抜ける事ができたよ。ありがとう」
ルシは狼の頭を優しくなでてやった。
狼は嬉しそうに尻尾を振った。
「ほら、カルロも礼を言ったらどうだ?」
「そうだな。ワンコロ助かったぜ。サンキュウー!」
笑顔を狼にむけた。
「では行くか。町はもうすぐだ」
「おう。あ~着いたらまず風呂だな。体を綺麗にしたい」
「男のお前が言うと気持ちが悪いな・・・わからんでもないが」
「気持ち悪いは余計だっての!」
「・・・・・・」
「ん?」
後ろから足跡が聞こえ振り向く。
「・・・・・・」
狼がいた。
「どうした?もう森に戻っていいんだぞ」
「・・・・・・クゥ~ン」
狼はルシの脚へと擦り寄ってきた。
その行動を見ていると狼が離れるの嫌がってるように思えてきた。
「ついて・・・来たいのか?」
ルシが沿う言うと
狼は尻尾を左右に振った。
「どうするカルロ?」
「そうだな・・・色々と大変だがいいんじゃないか?」
「よかったな。これからよろしくな」
「ワン!」
狼は嬉しそうにルシの周りを走り回った。
「そうだ。名前をつけてやろう。そうだな・・・ウォルなんかどうだ?」
「ワオ~ン」
「気に入ったか。ではウォル行くぞ」
二人と一匹は町に向けて歩き始めた。
「あ、そうそう」
カルロが急に話しかけてきた。
「どうした」
「俺にはなるべく近づけないようにしてくれよ。汚れちまうから」
「最低だなお前は」




