プロローグ
―――王国ラルク城国王の間に続く通路―――
「・・・ハァ~・・・」
ため息がさっきからずっとでる。
「何でそんなに憂鬱そうな顔してるのよ」
隣でキビキビと歩く女性は幼馴染のルシ。
「だってよ~。・・・ハァ~・・・。溜息がでるのもしょうがないだろ・・・ハァ~・・・」
「また・・・あなたは少しは自覚を持ちなさいよ!!」
ダラダラと歩いている俺の目の前に立ちはだかり、キツイ目つきで睨む。
全身白い鎧を身に纏い、胸の甲冑には天使の羽と騎士の剣のマークが刻まれている。
ルシはこの王国ラルクの最強部隊。白騎士の部隊の隊長を務めている。
部隊には第一部隊から第十部隊まで存在し、数字が少ないほど精鋭とされ、ルシはその第一部隊の部隊長だ。
彼女は天武の才に恵まれた存在で、この王国に入隊してわずか二年でここまでの地位に辿り着いた人物だ。
正義感が人一倍強く、勝気で強情な所もあるが、面倒見も良く。
訓練での指導。部下への適切な指示・指導も完璧にこなしている。
そして、自身もその才に溺れず毎日訓練を続けている。
周りの人や部下達からはとても慕われ人望が厚い存在だ。
ルシに恋焦がれる男達は大勢いるという。
何せ彼女は美人でもあるからだ。
そんな彼女と幼馴染の俺はと言うと、
一応この王国の兵をやっている。
ルシと一緒に入隊をしたのはいいが、
俺は彼女みたいに正義感や勝気な性格とは無縁な輩だ。
それでも部隊長はやっているが、
訓練の指示・指導とか面倒なものはサボって部屋の掃除をしたり、メイドさんの手伝いとかしている。
じゃあ何で入ったかと言うと
「・・・ルシ。肩にゴミはついているぞ」
「む?どこだ」
「ここだ」
俺はルシの肩に付いていた小さなゴミをとって見せた。
普通なら絶対に気が付かない小さいゴミ。
「あ、あとここも汚れているな」
俺は胸元にしまってあるマイハンカチを取り出し拭いてやった。
「・・・相変わらずだな。その性格」
「そう思うんだったらもっと綺麗にしろ」
呆れた様子で俺の行為を受け止めるルシ。
そう。俺は潔癖症なのだ。
そして、綺麗好きでもある。
これが俺が入隊した理由だ。
王国に入ったら綺麗な部屋が用意される。
それに釣られて入隊したんだが・・・。
一般の兵にそんな部屋なんて用意されるはずがないのを後で知った。
綺麗な部屋を求めるあまり俺はその時だけ頑張った。
そして部隊長になれた。
俺の目標は達成した。
なのに・・・。
「どうして俺が勇者なんかに・・・ハァー・・・」
「またため息をついてから・・・。ほらさっさと行くぞ。国王が待っているぞ」
「わかってるよ・・・」
「そんなに勇者になりたくなかったらなぜ優勝した?」
「・・・・・・」
そう。
俺は優勝してしまったんだ。
自分の性格を憎んだのは初めてだ。
まさか、あんな所まで俺の性分が出るなんて・・・。
「突っ立てないで早く行くぞ!」
ルシは俺の首元掴み引きずる。
「わ!ヤメロ!歩くから。だから引きずるな!汚れる!!」
「白騎士第一部隊隊長ルシ参上致しました!」
片膝を付く。
「カルロ参上致しました」
床を軽くはたいて片膝を付く。
「・・・ご苦労」
王室の間には玉座に座るラルクの国王。
老人でありながら凛々しい顔つきの国王。
魔王の軍勢を幾度となく立ち向かいこの国を守ってきた人物だ。
「顔を上げよ」
「「はっ!」」
俺とルシは同時に国王に顔を上げた。
その時俺は目にしてしまった。
「貴殿が先日行われた大会の優勝者か」
「はい(国王の足元に埃が・・・・)」
自然と目がそっちの方にいってしまう。
「素晴らしかったぞ。あの剣捌きにあの動き。並大抵の者ではまず出来ないな」
「いえ、偶々です(取りたい・・・)」
「謙遜するな。あれは貴殿の実力だ。・・・それにしてもまさか傷一つ、いや、かすり傷一つ追わないで優勝するとはな・・・驚いたぞ」
「・・・・・・(気になる・・・すごく気になる!)」
「でだ、貴殿には勇者としてこの大陸に存在する魔王を討伐し、人々の願い。平和な世を叶えてほしい。本来ならこんな事を頼むのは心苦しいが、我が国の兵も無限ではない。今も村や町が魔の軍勢に襲われ苦しんでおる。貴殿の力で救ってほしい。頼めるか?」
「・・・・・・(どうやってあの埃を取るか・・・考えろ!考えるんだ!!)」
「・・・やはりすぐに返答をするのは難しいか・・・」
「・・・(あの馬鹿者が!)。・・・(雷よ)走れ」
―――ビリ―――
「うっ!?」
「どうした?」
「いえ。何でもありません」
いきなり体中に電気が通ったぞ!
ルシの方を横目で見ると
『さっさと返答をしろ!』
言っているようだ。
・・・全く話を聞いてなかったな。
「そうか。・・・それで頼まれてはくれんか」
あ~・・・多分勇者になってくれってことか・・・。
すまないが、お断りさせてもらおう。
俺にはまだ、部屋の掃除と兵舎の掃除と草むしりと武器防具の手入れとああそうだ外の壁にヒビが入っていたなあれも直しておきたいしそうだいっそう新調するのもいいなそうなると兵舎の方もしないとだなとすると
「国王少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
「かまわんが。どうかしたのかルシ」
「いえ。すぐに終わります。・・・カルロ」
「・・・ん?何だ」
「ちょっとこっちに来い」
ルシに連れられて王室の外に出た。
「いったい何の話だ?俺はやらないといけない事があるんだk」
「この世界を綺麗にしたくないか?」
「・・・どういう意味だ?」
唐突に言われたその言葉の意味を理解できなかった。
「この世界をどう思う?」
「どうって。魔王の軍勢と戦争しているからひどい状態だな」
「その通りだ。それをお前の手で変えてみないか?」
「・・・俺にそこまでの力があるとでも思ってるのか?お前の方が適任だと思うがな」
「私には出来ないよ。・・・お前に負けた」
「あれは偶々だろ」
「偶々ではない。カルロ・・・お前しかいないと私は思っている」
「・・・・・・」
「・・・頼む」
頭を下げるルシ。
「・・・いくらルシに頼まれても、乗り気がしないんだよ」
「じゃあ考え方を変えたらどうだ」
「・・・どう変えるんだよ?」
「世界を救うではなく。世界の大掃除をするにだ」
「・・・・・・」
「どうだ。そうするとやる気は出てくるだろ」
「中々いいな」
「・・・やってくれるか?」
「わかったよ。やるよ」
「では、戻ろうか」
「了解」
それから、王室に戻り俺は勇者になることを了承した。
王はそれを聞き大賢喜んだ。
そして、ルシは
「お前一人では何かと辛い事もあるから私も一緒に同行しよう」
と言い出した。
嬉しい事だが、そうすると第一部隊の指揮はどうするのかと聞いたが
「心配するな。私には優秀な部下がいる。腕も確かだ。・・・国王宜しいでしょうか?」
「わかった。お主の部下達は優秀だからな。後の事はこちらに任せよ」
「感謝致します」
こうして俺の付き人(仲間)として一緒に旅をすることとなった。
ここから俺の世界の大掃除が始まる。
どこから手をつけていこうか今から考えただけでも興奮する。
俺の(潔癖症の)血が騒ぐぜ!!
「なあルシ」
「どうした?」
「国王の足元にあった埃どうやったら取らせてくれるかな?」
「・・・やめておけ」




