不動の盾
ヲリ要塞の防衛に成功したカルロ達は数日の間駐屯していた。
その数日の間に一通の手紙が届いた。
それを読んだルシは優雅に食事をしていたカルロを引きずり、北西へと向かっていた。
手紙の内容は簡単に書かれていた。
ナダレの町が壊滅。敵はそのまま西へと進行中
魔物軍勢を引き連れて西へと進行する。
「・・・ったく。何で俺がこいつらを引き連れていかないといけないんだよ」
進行する軍勢の一番後ろで男は呟いていた。
男は黒い肌で髪は長く口からは二本の牙が突き出ており体格もがっちりしていた。
「アハハ。まぁそう言わないでよ。魔王様の命令なんだからさ」
呑気に話しかけるその人物は黒い鎧を纏っていた。
「ならどうしてお前が付いて来ているんだよ」
「それも魔王様の命令だからね」
「・・・っち。雑魚を引き連れるのは好きじゃないんだよな」
「それはそうだけど君一人だと好き放題するでしょ?」
「それなら雑魚がいても変わらないだろうが」
「指揮する者がいないと色々と大変だからね」
「・・・それを俺にやらせるってのか・・・」
「その通り。頑張って指揮をしてね。君も魔王軍の将なんだからね」
「ホロイドは勝手にやってたのによ・・・」
「彼はそのせいで今回はお留守番になったんだよ。命令に背いたからね」
「あいつ戻ってきた時珍しく楽しそうだったな」
「まぁね。面白い素材を見つけたからね」
「それであれを使ったのか・・・」
「そうそう。やり過ぎだったよ。多分今は研究に打ち込んでるんじゃないかな?」
「だろうな。あの実験馬鹿は。まったくあいつの戦い方は気に食わないぜ」
「君と正反対だからね」
「己の力で破壊するのが一番楽しいってのにな」
「君の場合は破壊しすぎて何も残らないのが欠点だけどね。もう少し手を抜いてくれないかな?こっちも色々とやることがあるんだからさ」
「うるせぇよ。俺は俺のやりたい事をする。それはあいつ(魔王)にも言っている。だから協力してるんだ」
「そうだったね」
「だけどシシス。お前が言ってた奴等がこなかったら勝手にやらせてもらうからな」
「いいよ~」
「おいお前らちんたら歩いてるんじゃねぇ!!もっと早く行け!!ぶちのめすぞ!!」
自分の苛立ちを隠さず部下に命令する。
「・・・あ~やっぱ今のなし。ゆっくり進軍しろ。俺は寝る」
「まったく君は自由奔放だね」
「カルロ急げ」
足に魔法を掛けて移動速度をあげているルシが後ろにいるカルロに言う。
「わかってるよ。ウォル。ちゃんとついて来てるか~?」
カルロも同じく魔法を掛けルシの後を追う。
「ワンワン!」
ウォルはその二人の後を追うように走る。
「にしても、いくらなんでも早すぎじゃないか?」
「当たり前だ。遅れたらたくさんの人の命が奪われることになる」
「いや、そうじゃなくてさ。敵の進行がだよ」
「どういうことだ?」
「俺たちが戦ってから数日で別の場所が襲われてるってのがな」
「あちらにも戦力はあるから当然だろう」
「ああ。そうだ。だけど、なぜ今までそうしなかったんだ?」
「・・・・・・」
「敵には戦力があったにも関わらず今まで攻めてくる気配がなかった。だけど俺たちがヲリ要塞で戦ってからすぐに進行を開始した。おかしくないか?」
「・・・何か理由があるとお前は思ってるんだな」
「・・・まぁな。もし今回も敵の大将がいたら聞いてみたいな」
「なら、なおさら急がないとな」
「そうだな。あ、ちなみに目的地まで後どれくらいで到着するんだ?」
「このペースだとあと2日ってところだな」
「風呂は?」
「ない。川か湖でしろ」
「宿は?」
「そこら辺にあるだろ。ただで寝れるぞ」
「飯は?」
「現地調達だ」
「そんなの耐えられない!!」
「我慢しろ」
「イヤダイヤダイヤダイヤダ」
「我侭を言うな」
「言いたくもなるわ!だいたいどうして走ってるんだ!!馬でも借りていけばもっと早く到着しただろ!それに食料も持ってこれたはずなのに」
「・・・・・・あ」
「おい!考えてなかったのかよ・・・」
「仕方ないだろう。緊急事態だったんだ」
「それでも冷静な判断をしないと駄目だろ。それでも白騎士第一部隊隊長か・・・」
「すまない」
「・・・いいよ。怒ってないし。今後は気をつけてくれよ」
「ああ」
「あ~あ、野宿か・・・また草の整地から始めて木を切ってベッドを作成しないといけないのか・・・」
「どれだけ地べたで寝るのが嫌なんだ・・・」
「地べたで寝るんなら俺は勇者を辞める!!」
「・・・・・・はぁ・・・」
「・・・隊長。整列、完了しました」
全身鎧で覆われた小柄な兵士が任務の終了を告げに来た。
「ご苦労」
男は白い鎧に包まれ右手には大きな盾を装着していた。
男の名はゼル。
白騎士第六部隊隊長である。
部隊はネールの町の入り口前に軍の配置しており、全員がゼルと同じ盾を構えている。
「皆聞いてほしい」
ゼルは整列している自分の部下に言った。
「今敵はこの町に進行してきている。我々はその進行を止め迎撃するのが任務だ。我等が止めなければ町の人々の命が奪われる。それだけではない。その先の村や街。そして、国王の住む王都もだ。だが、我等は『不動の盾』と呼ばれる部隊。如何様な敵も突破することが出来ない守りを持っている。恐れるな。仲間を信じ迎え撃ち我等の守りを敵に見せつけ絶望させろ。仲間の為、家族の為、愛する人の為。この戦いを勝利に導くぞ」
ゼルの言葉を受けた部下は一斉に雄叫びを上げた。
「隊長。お疲れ様です」
ゼルの隣で先ほどの兵が言った。
「疲れてはない。これからが正念場だ」
「はい」
「お前の力にも期待をしている」
「頑張ります」
「ああ。頑張ってくれ。リヴァ」
「はい」
「それと勇者が今この町に向かっているはずだ」
「・・・勇者、ですか」
「そうだ」
「強いのですか?」
「強い。白騎士第一部隊隊長のルシに勝った奴だ。我等でも太刀打ち出来ない」
「ルシ様が負けた・・・信じられません」
「私が言っているのにか?」
「いえ。・・・ですが・・・」
不意にゼルは鎧を着ているリヴァの頭をなでてやった。
「その気持ちはわかる。だが、その戦いは白騎士の隊長しか知らない。私はその男の力を目の当たりにして確信した。リヴァも見るといい。納得する」
「・・・わかりました」
「不服そうだな」
「・・・・・・はい」
「どうやったら信じる?」
「・・・私の守りを突破する事が出来たら」
リヴァのその言葉を聞きゼルは笑った。
「無茶を言うな。お前の守りは私以上・・・いや、王国一だ。それを突破するという事は誰もあの男に勝てないと言う事になるな」
「させません」
鎧の中からでも伝わるリヴァの闘気が伝わる。
「勇者が到着しても戦う事は駄目だ。今はその力を敵に使え」
「では、終わってからはいいでしょうか」
「言っても聞かないのだろう」
ゼルの問いに無言で頷く。
「・・・好きにしろ」
「はい」
ゼルに一礼し、自身の持ち場に戻っていった。




