精神科で見た、ある保護室での出来事
掲載日:2026/04/10
精神科に入って間もないころ、
患者体験として、
保護室に入ったことがある。
⸻
扉が閉まると、
空気が変わった。
⸻
独特の臭いと、
逃げ場のない圧迫感。
⸻
壁には、
無数の文字が刻まれていた。
⸻
「助けて」
「ここから出して」
「地獄行き」
⸻
英語で、
「heaven」
⸻
他にも、
意味のわからない数式のようなものが並んでいた。
⸻
ここで、
心が落ち着くはずがない。
⸻
そう思いながら、
外に出た。
⸻
⸻
入れ替わるように、
一人の女性が入ってきた。
⸻
壁を指差し、
静かに聞いてきた。
⸻
「これ、なんて読むの?」
⸻
「ヘブン、ですか?」
⸻
女性は首を横に振った。
⸻
そして、
はっきりと発音した。
⸻
「heaven」
⸻
「もっと勉強した方がいいわよ」
⸻
そう言って、
保護室に入っていった。
⸻
⸻
しばらくして、
中から笑い声が聞こえた。
⸻
独り言。
⸻
そして、
突然の怒声。
⸻
⸻
看護師たちが集まり、
扉が開けられた。
⸻
その先の様子は、
よく覚えていない。
⸻
⸻
後日、
その女性は退院したと聞いた。
⸻
⸻
そして、
船から飛び降りたとも。
⸻
⸻
それが、
本当かどうかはわからない。
⸻
⸻
このテーマに関連する長編も書いています
▶ カクヨム
https://kakuyomu.jp/works/2912051597199534420




