【あとがき】第四章 アレが来る!②ニョルズ尋問
本編「オレ、オーディンになったらしい。〜ラグナロク不可避⁈ もうすぐフェンリルに食われることになってるんだがどうすりゃ回避できるんだ?〜」(N7288LN)の各エピソードで使用したネタとその解釈なんかを書いています。
まずは本編をお楽しみください。
■戦争の「原因」? グルヴェイグの謎
アース神族が「神話の9世界」を構築して間もなく、アース神族とヴァン神族との間で戦争が起こります。この戦争に固有名詞が振られていないのでかねてからと同様に「アース=ヴァン戦争」と呼んでいきます。
戦争の引き金となったのは、グルヴェイグという魔女がアースガルズに乗り込んできたことから。グルヴェイグがセイズという魔術を使うことからアース神族に危険視され、憐れ彼女はくし刺しに。 …マジかアース神族。野蛮過ぎるだろ。この件、グルヴェイグが「性的にくし刺し」という説もあったりしますが、それは…と思いつつも、オーディンのヤリ〇ンっぷりを見てきますとあるいは…と思ってしまうあたり、オーディン、お前信用無いな!(笑)
このグルヴェイグがまたおかしなヤツで、なんと蘇ります。蘇って…あろうことか、またアースガルズへ。おいおい…そして今度は火刑に処されます。これで済んだかと思いきや。なんと蘇ります。蘇って…あろうことか、またアースガルズへ。おいおい…そしてまたもや火刑に処されます。これで済んだかと思いきや。なんと蘇ります。3回殺して3回蘇ります。さすが魔女。
…とか思ったでしょ? おかしくないですか? 3回殺して3回蘇ったってことは、最終的に生きているってことでは…? 私が北欧神話の資料を集め始めた初期に引っ掛かった謎の1つでもあります。
ところでこのグルヴェイグ、イメージが黄金との結び付きが強いせいでフレイヤと同一人物では?と考える説もあります。でもそれってヴァン神族を3回殺しちゃったことになるよね? ヤバくね? 何がヤバいって、そんな何度殺しても蘇るヴァン神族と戦争なんかしちゃったら、勝てるわけなくね? 不屈の闘志どころじゃないよ? だって焼いても蘇るんだもん。さすがにそれは…ということでフレイヤと同一説は却下。そこで私が考えたのが、グルヴェイグは「ヒト」ではなかったのでは?という説。我々的にはおなじみのゴーレム。これは北欧神話でもモックルカールヴィという似たようなものがあるので一応技術的根拠はあります。そしてグルヴェイグは自分の意思ではなく、ヴァン神族の思惑でアースガルズへ送り込まれたのでは、と私は睨んでいます。そしてゴーレムですから「死んだ」とは言い切れない。なんならいくらでもコピーがあるよ!みたいな。綾波みたいなもんです。
■北欧神話世界の構造
その根拠をお話しましょう。
そのためにはちょいとしんどいですが、北欧神話の9世界ってヤツを理解してもらいます。
【第1層:アースガルズ(神々の領域・上位レイヤー)】
【第2層:ミズガルズ(人間界)】
【第3層:大海(外洋)】
【第4層:ニヴルヘイム(氷と霧の世界)】
【第5層:ムスペルヘイム(炎の世界)】
【第6層:ヨトゥンヘイム(巨人の国)】
【第7層:ヴァナヘイム(ヴァン神族の国)】
【第8層:アルフヘイム(光のエルフの国)】
【第9層:スヴァルトアルフヘイム(闇のエルフ/ドワーフの国)】
Copilotにまとめてもらいました。層の数字にはあんまり意味がないと考えてください。とりあえず9個あるってことで振ったみたいな扱いだそうで。
アースガルズというのがアース神族の住まうエリア。この下の層(物理的ではなく次元的なものらしい)にミズガルズがあり、その周りにヨルムンガンド君がのびのび育つ海がある、そんな感じです。
さてこれらの世界の名前を見てみると、妙なことに気付きますよね。「ガルズ」と付くのは2つだけ。それ以外は「ヘイム」と呼ばれる。ガルズは英語ではgard、つまり城壁のようなものを指します。城壁で囲まれたエリア、それがガルズ。そしてここが大事。北欧神話の冒頭はミズガルズとアースガルズが誕生した話で、その他のヘイムができた、とは書いてありません。っていうか、そもそもニヴルヘイムとムスペルヘイムから2つのガルズが生まれています。ということは…他のヘイムも元々あったのでは? こういう大事なこと。ちゃんと書いておけよ、北欧神話!
■北欧神話の政治問題
ここからは私の仮説です。お外で話したら笑われちゃうかも。
まずアースガルズが築かれた場所。これが元々ヴァナヘイムやヨトゥンヘイムだったところなのでは? 無理やり入って領土の主張つまり侵略ですが、当然諍いの元になりかねません。そこでアース神族は本土防衛のために城壁を築いた。これがガルズの正体。アースガルズとヴァナヘイム・ウヨトゥンヘイムは同じ次元というか平面にあると考えられるとCopilotも言っとりますので、侵略・征服した土地のかなりの部分が元々あるいは全部がヴァナヘイムだったことから、そもそもアース神族とヴァン神族との間に領土問題があったのでは?と推測しています。
そして次。アース神族とヴァン神族とでは文化が違った。特にアース神族は秩序を重んじ、よりにもよってその周囲、すなわちヴァン神族にもそれを強要しようとした。ただでさえ領土問題で苛立ってるところへ文化面でも口出しされる。これがヴァン神族にとって非常に不快、ストレスだったのでは? ある意味宗教問題みたいなもんです。
不快に思ったヴァン神族は、アース神族にちょっかい出すことにしました。それがグルヴェイグの派遣。あるいはアース神族がセイズを嫌っている様子から、グルヴェイグを送って反応を見る、偵察の働きだったとも。そしてそれはヴァン神族の想像以上の反応をアース神族が見せることで、グルヴェイグ殺害事件を理由として宣戦布告。これがアース=ヴァン戦争の始まりだったのではなかろうかと。
ある意味、第1次世界大戦前夜のバルカン半島みたいなもんです。サラエボ事件をきっかけに大戦争へ突入、みたいな。戦争そのものは一進一退で膠着状態、結局痛み分けで休戦へ。どっちが勝ちともいえない協定を結ぶことに。ポーツマス条約みたいなもんですかね。
オレオー本編で東雲オーディンが語る推測は、すなわち私の推測でもあります。グルヴェイグ殺害がアース=ヴァン戦争の「原因」とされることが多いのですが「開戦のきっかけ」ではあっても戦争の「原因」ではなく、そもそも争いの下地はあったのだ、という話。
根拠らしい根拠はなく、こう説明した方がすっきりするな、というだけなんですが、いかがなもんでしょう? ともかく、これを下地にこの先の話が進みます。




