配信② 義体の性能を派手に試すぞ!
「これで……最後ッ!」
戦闘開始から2分後。並み居るゴブリンを豆腐の様に軽々と斬り伏せ続けた俺は、遂に最後の一体の命を終わらせた。
首を断たれたゴブリンは全身が真っ黒になり、すぐに塵となって消滅する。
「うっし、もう誰もいないだろう。いや~疲れ……て無いな。そりゃそうか、心臓も肺もねえんだから」
俺はスポーツブラの襟を引っ張り、胸の谷間を大きく露出してその中に剣を仕舞う。
――そういや、視聴者の反応はどうだろう。着いて行けないって意見ばかりじゃないと良いが。
襟を正し、視界の端に映るコメント欄に目をやる。
:エッッッッッッ
:おい今のもう一度やれマジで
:クソ、エロいなこいつ・・・元男の癖に・・・
「……お前らさあ」
呆れつつも、自分に非があることは分かっているのでこれ以上は言わなかった。あと気持ちは分かるし。
「で、どうだった? 初めてダンジョン配信の戦闘を見て貰ったわけだが、面白いと感じたか?」
:迫力はあった 悪くない
:美少女が暴れてる画は良いけど、戦い方がシンプルすぎる
:ロボなんだろ? もっとロボらしい事出来ないの?
――だろうな。だがこれは『テスト』だ。この体が本当に俺の思い通りに動くか、ミツキを信じた上で試したんだ。結果は問題なし、想像以上だ。
「ロボじゃない、義体だ。ともかく今のは、あくまでも魔物がどう消滅するかを見せるためのデモンストレーションに過ぎない」
「もっと派手にやる事も出来たが、それじゃあ魔物から血は出ないって証明出来ないだろ? そう言う事だ」
:お、強がりか?
:もっとおっぱいから物を出してくれるって事で良いんだな?
:気軽に見せてくれてええんやぞ
「おっぱいの話から離れろお前ら! 拝んだって剣以外は出ないからな!」
「……まあ少なくとも、俺の本気の姿はお前らを満足させられるはずだ。男心をくすぐるように出来てるし、そう立ち回るつもりだ」
「先に進もう。もし俺の予想があってれば、もう次の部屋にはボスがいるはず」
「安心しろ、A級のダンジョンは他の冒険者の配信で履修済みだ。余程のことが無きゃ、このダンジョンは二段構成で終わるはずだぜ」
:フラグやめろ
:フラグだな
:はいもうダメです
「配信が長くなって困るのはお前らの方だろ!」
そう吐き捨てるように言い、俺は地面に落ちた鍵を拾って大広間の出口へと向かった。
◇ ◇ ◇
ボスの間まで向かう道中、俺は配信に来た「マイフレンズ」達にマイのおすすめ配信アーカイブを聞いていた。
「ふーん。つまりおすすめは、5年前の緑鬼プレイ配信のアーカイブって訳だな」
:マジでいいぞ
:マイマイのリアクションの良さが現れてる
:切り抜きでもいいから見てくれ
「切り抜き……ああ、非ダンジョン配信者の間で流行ってる、名シーンだけを切り抜いて動画にする文化だな。ダンジョン配信にもあるぞそれ」
「もし俺やマイの配信を見てダンジョン配信に興味を持ったら、是非他の配信者の攻略切り抜きも見てみて欲しい」
:気が向いたらな
:マイの配信追うのに忙しいから無理
:男の配信者は追う気になれん
――素直な奴らだな。その分、やりやすくはあるが。
そうこうしているうちに、俺は長い長い坑道の一番奥にたどり着く。
そんな俺の目の前には巨大な石の扉がそびえ立っており、ただし俺の目の高さには、その巨大さに見合わない小さな鍵穴があった。
「おすすめして貰った物は今度見るとして、ひとまずダンジョン配信の解説に戻るぞ」
「さて、この扉の向こうに居るのはこのダンジョンの主、いわゆるボスと言われる魔物だ」
「どいつもこいつも似たり寄ったりな雑魚と違って、ボスは扉を開けるまでどんな奴が飛び出してくるか予測が出来ない。デカいか小さいか、人型かドラゴンかもな」
「だからこそ、配信者の個性はボスとの対峙の仕方に表れると言って良い。だって、アドリブ力が直に試されるワケだからな」
:なにそれ 死ぬじゃん
:嫌なガチャだなあ
:俺、冒険者にならないって決めたわ
「死なねえよ。なぜ冒険者協会はランク制度を採用してるか分かるか? 適正以上の魔物の相手を、顧客である冒険者にさせないようしてるからだよ」
「……その、はずなんだがなあ」
:ボスに殺された犠牲者が何言ってんだ
:説得力ゼロだぞ
:じゃあマイマイヤバイじゃん
「まあ、マイなら大丈夫だ。試験会場でアイツの動きを見たから分かるが、アイツは割と何をやっても上手く行くタイプの冒険者と見ている」
「彼女がどんな個性的な戦いを見せてくれるか、今から楽しみでならない。だがまずは、ここから生きて帰らないとな」
鍵穴に鍵を差すと、巨大な扉は光と化して消滅する。そうして現われた空間、その中心にいたモノは――
「……は?」
サムライ風の鎧に身を包み、巨大な刀を持つ……皮膚が真っ黒に変色した皮膚が真っ黒に変色したボスオークだった。
:オイオイオイなんだアレ
:すげー、オークが鎧着てるよ
:なんかコイツの吐く息黒くね?
黒い、ボスモンスター。それを見た俺の脳裏には、黒いボスゴブリンに殺される光景がフラッシュバックしていた。
「……嘘だろ……」
呆然と立ち尽くす俺。そして次の瞬間――
「最ッ高じゃねえかこりゃあ!!」
俺は、思いっきりガッツポーズガッツポーズをしていた。
「一度殺された奴と、同じ見た目を持つボスへのリベンジマッチ! 初配信でこのバトルをしたら、『過去を克服した』設定を持った状態でキャリアを再スタート出来るぞ!」
「濃いバズりの気配がするぜ……一層、やる気が湧いてきた!」
:草 ちょっとは恐がれよ
:コイツやばすぎw
:再生数の亡者じゃねえか
「っと、危うく視聴者がいることを忘れかける所だった。せっかくここまで見てくれたんだ、サービスの一つもしてやらねえとな」
「俺さ、元は男だったから分かるんだ。お前らがどういう画を欲していて、どういうものにときめくのか」
「――男って、こういうのが好きだよな」
俺は左手で腰を叩き、腹の中心に『EXミシックドライバー』を出現させる。
太い純鉄製のベルト、メカニカルな模様が刻まれた長方形のバックル、そしてその中心に埋め込まれた虹色に光る平らで丸いLEDランプ。
――健康優良男児なら、誰しもこういうオモチャを腰に巻いたことがあるだろ?
:うおおおおおおおおおおおおおお
:変身! 変身だ!!
:オモチャ販売しろ!!
「そう急かすな、キッチリ言うべき台詞は言ってやるとも」
俺はボスオークに向かって歩きながら、右腕に出した『EXミシックブレス』下部にあるボタンに左手の親指を掛ける。
「――魔導覚醒!」
そう叫んでボタンを押すと、全身の肌を電子回路のような空色の紋様が泳ぎ始めると共に、急激に腰まで伸びた髪や瞳も赤く輝き出す。
それに加えて両の手の甲に青い魔方陣が浮かび上がり、バックルのLEDは澄んだ赤色へと変化する。
――そう、コレがこの義体の戦闘モードである、『殲滅形態:Mode1』への入り方だ。イカすだろ?
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