学舎(まなびや)
古代史の授業はオレにとって一番だと思うんだが、どーして人気がねぇのかなぁ。
そりゃ剣術や体術、魔法学みたいな、実際に役立つモンが人気で貴族のボンボンから村から出てきた選ばれた奴らにとって手っ取り早いからなんだろうけどさ。
だが、ココから、この国の果て。
国境を越えた大山脈のさらに向こう、どんな場所にも歴史はある。
この街の城壁や神殿も、峠の環状列石もかつて同じように生きていた人間が作ったのだ。
だが、中には作られた理由も忘れ去られて、自然と一体になりつつやがて「完全」に忘れ去られるものも出てくるわけだ。
現に古代文字で解読が出来ないもの、そのせいで使えなくなった魔法もある。
人が作って、人が繋げたものが失われていくわけだ。…オレにはそれが耐えられない!
冒険者や騎士がいる限り、武芸は消えないだろうがとある分野が廃れたら、失われる可能性が生まれるのだ。
だったらオレは出来うる限り、残せるものを残したいと思う。
だから、この記述魔法をもっと効率よく使えないだろうかと常に考えているが、そのためには魔法理論も取らないといけない…が、これを取ると古代史が取れないわけで…。
「おーい、またやってんのか?」
ローブを着た青年が、同じローブを着た青年に語りかける。
「あぁ、何度も繰り返すことが大事だからな」
書きかけの日記帳を閉じたのは、声をかけた青年だった。日記帳やペン、荷物をまとめるとそのままカバンに詰めた。
「しっかし、どんどんペースが上がってるな。古代史の課題も…終わってるのか。どうして手のある俺の方が遅いのかねぇ…」
青年はぼやきながらカバンを持ち上げた。
声かけられた青年はそのまま立ち上がった。
「そりゃーお前の努力不足だろーな」
そういうと両手腕のない青年は肩で歩き始めた。
「はぁ…俺もお前ほど魔法が使えたらなぁ…便利なのになぁ」
その後ろをカバンを二つ抱えた青年が追いかけていく。
手をさしのべる賢者、手を出さぬ賢者
双賢と呼ばれるようになった彼らがこの世に残した多くの魔法は消えることなく受け継がれている。




