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Explosion 1 ~バックアップメモリの異常~

俺はアレクサンダー・ノア。

アルジェリア人だ。

今は日本にいる。

なぜ日本にいるかって?

俺は普段、バックパッカーとして旅をしているんだ。

今は日本に上陸して、様々な景色を記録して歩いている。

最近行ったところ?

ん~...そうだなぁ。

田舎の方、森とかに行ったなぁ。

見たことない場所に訪れると新鮮な気持ちになれるんだ。

今日は森じゃなく、街の方に歩くつもりだ。

重くないかって?

あぁ、リュック。

大丈夫。森に行ったときの飲料用の水と肉が入ってるだけだから。

思ったより軽いんだ。

さあ、歩くぞ~。




時を同じくして・・・

特殊執行部隊 戒團 本部。

戒團 第二隊員の天塚久は監視モニターの前でオペレーションを行っていた。


ピピピピ....


「こちら天塚。第三隊、状況を」

「はい。こちら第三隊 雲平。徹東組、追い詰めました。突入許可お願いします。」

「まだだ。罠の可能性も捨てきれない。部屋のスキャンが終わるまでそのまま待機。」

「了解。」


特殊執行部隊 戒團かいだん

彼らは今、徹東組てっとうぐみと呼ばれる反社会勢力の制圧に取り組んでいた。

そして第二隊の下層にあたる第三隊は徹東組の本丸に赴いていた。


徹東組は5年ほど前から戒團が追ってきた闇組織。

徹東ヲサム、徹東シヲン、徹東タカヲの三兄弟がトップに君臨していた。

悪逆の限りを尽くす組織で、著名人、政治家を脅し、はたまた殺し、見せしめにするなど残虐な行為をすることもあった。


天塚は4年前、戒團の第五隊に所属しており、第五隊は徹東組突入作戦を実行した。

しかし、徹東組突入作戦を逆手に取られ、罠にはめられた第五隊は天塚一人を残し、隊員11名死亡という悲惨な結果を生み出した。

このことから天塚は徹東組に強い復讐心を持つようになり、執着して執行に取り組んでいた。


「天塚くん」


監視モニターにいる天塚を誰かが呼んだ。


「所長」


天塚が所長と呼んだこの人物。名はハラ エイ

かつて戒團は探偵事務所「弥勒」として創設された。

創設メンバーは原叡と原の元夫、そして原の友人の三人であった。

原が元夫と離婚してまもなくして探偵事務所は表面上、閉鎖された。

しかし、裏では原の友人の協力のもと、ある非政府組織の関連をつてに特殊執行部隊の創設を計画していた。

そして現在、戒團として世間の裏で探偵家業を営んでいるという状況である。


「上空の防犯ネットから徹東タカヲの位置情報を掴んだわ。」

「おぉ、遂にですか。だいぶ近づきましたね。こちらも東棟の制圧までもう間もなくです。」

「スキャンか。私が変わろう。タカヲの追跡に合流できるか?」

「了解です。」


天塚は戒團のガレージに行き、専用のバイクにまたがる。


「こちら天塚。第二隊長 鶴木。これからタカヲ追跡に合流する。」

「了解。」


天塚はバイクで森林を抜け、タカヲがいるとされる秋涼団地 第13棟に向かった。

秋涼団地は計24棟ある団地で、街と隣接する一般家庭が住居している区域であった。

天塚は団地の近くまで来ると、バイクのライトを消し、ゆっくりと団地周辺を探索する。


「ここでドンパチやっちゃぁ、さすがにまずいな。」


時は夕暮れ、子供たちが走って遊んでいるのも見えた。

天塚は第13棟の前にやってきた。

ヘルメットの中で、額に汗が流れる。


カランッ


「!!!」


天塚の背後で何かの音がした。

天塚はすぐにバイクを盾に振り向く。

と、そこには一人の見知らぬ青年がイヤホンを付け歩いているだけだった。


カランッ


青年は空き缶を蹴って歩いていた。

天塚の方へ向かって歩いてくるが、特に何も気にしない様子だった。


「...幸せはぁ...」


青年はイヤホンの曲を何か口ずさんでいた。


「ふーーーっ...」


天塚は一気に緊張がほぐれたように、ため息をした。


「こちら天塚。今のところタカヲはいない。鶴木、そっちはどうだ。」

「こっちもだ。位置情報的にはもう第13棟の中、または周辺にいてもおかしくないはずだ。」

「だよな。デヴァイヤを使ってるんだが、一向に見つからん。」

「棟の方も外観からスキャンしたが、いなさそうだ。念のため部屋で確認をしよう。」

「了解。俺から第四隊を派遣する。」


結局、徹東タカヲは秋涼団地に姿を現すことはなかった。

防犯ネットの情報に誤りがあったとするならば、徹東組は防犯ネットの偽造を行ったとしかいえない。

天塚は裏に巨大な闇が潜んでいると睨んだ。




その頃、第三隊は徹東組 関西支部 東棟の制圧に成功していた。


「お疲れ、雲平くん。」

「はい、ありがとうございます所長。ただ、三兄弟がどこにいったのかわかりませんでした。東棟は痕跡すらありませんでした...」

「秋涼団地にもいなかったそうよ。これはまた難解になりそうね。明日、状況レポートまわしといてね。」

「了解しました。」


所長が監視モニターの椅子を後ろに回すと、鶴木と天塚が立っていた。


「ただいま戻りました。」

「お疲れ、二人とも。結果は残念だったけど何か手がかりは見つかったかしら?」

「はい、この男です。」


天塚がスクリーンに接続し、画面を表示する。

データを並べ、一人の顔写真にフォーカスする。

団地にいた青年の顔だ。


「この男、紺芽 拓男。24歳。5日前から秋涼団地で徘徊をしています。そしてある一定の場所で一定の時間止まっています。」


天塚は写真を切り替える。


「第13棟」


スクリーンに第13棟が映し出された。


「怪しいわね...もうこの青年に賭けるしかない。」


所長は少し笑みを浮かべる。


秋涼団地 第13棟。

ここでは半年前に一人、一か月前に一人、行方不明者が出ていた。

そして今日、徹東タカヲが秋涼団地 第13棟で行方不明になったと思われる。

これらに関連性があるかどうか、そして青年の謎、四人目の行方不明者になってしまうのか。


戒團は事件を未然に防ぐべく、調査を続ける。

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