表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

Introduction 4 ~復活~

ユーロアビドタワー24階、メインエントランス。

の天井裏。

の排気口に鉄朗はいた。

鉄朗は物音をたてないよう慎重に、疑似型電車輪を滑らせ進んでいく。

とそこへネズミが一匹現れた。


「ゲッ!ネズミだ...リアルクローンか?」


疑似型電車輪で轢いてしまわぬよう鉄朗はネズミを追い払おうと手で仰いだ。


「ネズミ?誰のことだ?」

「おわ!!」


突如、何者かの声で驚いた鉄朗は尻餅をつく。

どすーん

っと排気口内に尻餅の音が響き渡る。


(何でこんなところに人がいるんだよ!ってか音が!やべぇ...)

「わしはネズミじゃないぞ。よく見たまえ。」

「だ、誰だ!貴様」

「わしか?」


鉄朗は恐る恐る振り向く。

するとそこにはアルパカの着ぐるみを着た義体人形がそこにいた。


「あ?え...ドクター?」

「正解」


鉄朗は一先ず安心した。

ドクターとは渡井ハインツ雪則のことである。

ハインツが義体人形を操作し、鉄朗の後を追ってきたという次第であった。

このデータバンク侵入作戦において、三人とも名前をコードネームで呼び合うようにしていた。

レオン(リョウコ)、バレット(古上鉄朗)、そしてドクター(渡井ハインツ雪則)である。


「ドクター、何でこんなところに?」


鉄朗は尻餅をついたままハインツに質問した。


「まぁ、それなりの理由があるわけではない。心配だから来たのだ。」

「あははは...心強いです...」

「何、わしが勝手に来たんじゃ。何も気にすることはない。二人で挑めば、安心じゃろい。それに、これが鉄朗にとっての最初の仕事になるわけじゃ。補助輪がいるじゃろ。」

「ま、まあ...」


鉄朗は気を取り直して排気口を進んでいく。

アルパカの着ぐるみを着たふざけた義体人形も後を追っていく。


「あ、そういえば、ドクターの作業はどうしたんです?管理システムのセンサークラック。」

「ああ、聞くと思ったが、レオンが全部対応すると言ってな。聞かんのじゃよ。それでわしは暇だったってわけ。」

「なーるほど。」




その頃レオンは、タワー最下層、マザー室の潜入に成功していた。


「よし、あとはあのお二人さんを待つだけね。のんびり屋さんの似た者同士って結構厄介だったりするのよね。」


マザー室内は独自AIの起動を防ぐべく、オフライン状態の閉鎖エリアとなっていたが、オフライン状でも起動できる防犯システムの犬型ロボット、通称アビドッグがレオンの匂いに勘づいた。


「ん?!嗅覚を持ったロボットなんて、下品にも程があるわよ。」


ドガガガガガガッ!!!


雷弾式サブマシンガンでレオンが応戦する。

アビドッグを一匹倒したが、それに呼応して4匹のアビドッグが目覚め立ちふさがった。


「ふーーっ、なんで私こっち選んだんだろ。」


ドガガガガガガッ!!!ジャンジャン!!キン!ドォン!


一瞬の攻防戦、レオンは神懸かった反応速度でアビドッグ4匹を破壊した。


「ふぃーーーっ!勝った勝ったぁ~。大勝利ね。」

「突撃しろお!!!!」

「!!!」


レオンが安心していた束の間、アビドの警備部隊がマザー室に攻め込んできた。


ギンッ!!!


警備部隊と剣術でぶつかる。


「なぁあ!!中途半端な奴ら!殺すと気分悪いのよ!」


バシッ!バシッ!シュカーーン!!!


警備部隊は5人いたが、5人ともレオンの素早い剣さばきによって切り捨てられ、倒れこんだ。

レオンは刀剣から血を薙ぎ払い、腰の鞘に刀を納めた。


「一服ね!」


胸ポケットからディオンポリのジュースを取り出して、飲もうとした。

その時だった。

死んだと思われていた警備部隊の一人が倒れながらも通信を使って何かをしているのをレオンが見つけた。

レオンは一目散にその隊員に駆け寄る。


「こぉんの野郎ぉぉ!!!!!」


ザッ!!


レオンの刀が隊員の胸を貫き、地面にまで貫通した。

隊員の通信装置を見ると、データバンクに0.1%のエネルギーラインが完了しているのがわかった。


「まずいな。」


0.1%は極々少ない量の情報であったが、アビドのオンライン復旧システムの起動に必要なエネルギーラインとしては十分なパーセンテージであった。


「早くても、3分か...」


レオンが導き出した計算上、復旧までに3分かかる。

復旧すれば出口閉鎖までは1秒もかからない。

カウントダウンが進む。

レオンはすぐに脱出を試みることはなく、マザー室内のシステムのログを確認し、バレット達に連絡を取ろうとしていた。


「奴ら、生きて帰れればいいが...バレット...」




その頃、バレット達はデータバンクのあるシークレットルームに潜入していた。

シークレットルームにはそれといった異常もなく、順調に進んでいるようにみえる。

遠隔操作していたドクターに無線通信が入った。


「ザーー...ザーー...ザーー...」

「む。レオンか。どうした。」

「ザーー...コードRED...」

「む!...ふむ。わかった。」


コードRED。この暗号は敵に見つかり、存在が知れ渡り、オンラインが復旧してしまうという緊急事態のことを知らせるコード。

ドクターは義体操作に戻り、バレットとシークレットルームの状況を確認した。

バレットは特に異常なし。シークレットルームも静かなものだった。


(何かがおかしい。静かすぎる...)


あたりを見回す。

すると、データバンクの作業をしていたバレットが喋りかけてきた。


「どうしたんです?ドクター。」

「いや...やけに静かだと思ってな。いいから作業を続けろ。」

「暗号通信なんか使っちゃって」

「!!!!!」


ドクターは驚きの表情を隠せなかった。


(コイツか!)


ドクターの義体がバレットの肩を掴んで語りかける。


「鉄朗!どこでVに感染した!」

「鉄朗って...まさかコードRED!だから暗号通信...」

「どこでだ!」

「お、俺データ感染なんかしてませんよ。何も変なのに触ってないし。」

「思い出せ!!侵入前はクリーンだった。わしが一番わかっておる。何でもいい!思い出せ!」

「えっっっと......ネズミなわけないよな.....あとは」

「ネズミ!?」

「え?ネズミいたでしょ。排気口に。どこにだっているよ。」

「わしは見とらんぞ!そもそも、データバンクシステムの生命監視装置で動物が排除されておることは覚えておらんのか!」

「え?あ?え?あ?」

「まずい!バレット!」


バレットが倒れた。

ドクター義体はバレットを抱える。


「やはりネズミか。巧妙なVを感染させたな。まさか記憶操作もできるマイクロタイプだとは...」


ドクターの義体は左足首を取り外した。

この左足首、実はロケットである。

ロケットでシークレットルームを破壊しようとした。


ドッカーーーーン!!!


シークレットルームはびくともしない。


「や、やはり...バレットをここで飢え死にさせるつもりであったか...人ではないなこの鬼畜」


シークレットルームから出ることはほぼ不可能となった。

ドクターは考える。


「ニアテクはあと数分で終わせることができる。だがバレットの方は...これは...古式を使うしか方法は無いな。」


ドクターはレオンにもう一度暗号通信を繋いだ。


「生きとるかリョウコ。生きとるテイで話す。バレットに古式を使う。以上だ。」


ドクターはニアテクのロードを停止させ、バレットの深層メモリーをデータバンクに接続した。

データバンク内の外部出力システムを用いて古式にバレットの深層メモリーを移行させるというものだった。

ただし、これは100%機能するものではない為、バレットの深層メモリーは欠損してしまうことになる。

あとは古式の準備ができるかどうかであった。


「リョウコ...頼む...お前次第じゃ」


ポワーーーーン


データバンク内の外部出力システムが古式を認識し、アップロードを開始した。


「さすがじゃ!リョウコ!」




その頃、ある倉庫。

リョウコがこの倉庫から古式と言われる義体人形を引っ張り出したのだ。

脱出、移動、人形捜索。

リョウコは汗だくでヘトヘトだった。


「貸しよ...ハァ」




それから1週間が経ったある病院の病室。

ある一人の男が目を覚ました。

病室のネームプレートには鶴木ツルギ ソウと書かれていた。


「鶴木さん」


看護婦がやってきた。


「お見舞いが来ましたよ。」


そう言うと見舞客が一人入ってきた。

看護婦は鶴木の点滴とメモリー接触部分の首の後ろを確認してから、病室を出た。

見舞客は鶴木を知っていそうな人物であった。

逆に鶴木は見舞客が誰なのか見当も付かなかった。


「なぁにツルギちゃん。またドジ踏んだって?」


見舞客はニコニコしながら馴れ馴れしく話しかけてくる。


「あぁ...話は聞いてる。お前記憶失ったんだろ。...へへへ。ドジがでかすぎるぜ。」


鶴木はまだ何となく不信感を抱いていた。


「あれ?まだ俺のこと疑ってる?俺はお前の仕事仲間の特殊執行部隊 戒團 第二隊員の天塚アマツカ ヒサだよ。」


天塚は鶴木が写ってる集合写真等を見せた。


「あ、俺だ。」

「だろ!やっと思い出したか!」

「な、なんどなく...」

「アハハハ!よかったぜ」


打ち解けた二人の会話の声が病室の外まで響き渡った。




鶴木の病室から出た看護婦は病院の暗い地下のある部屋に向かっていた。

暗い廊下。奥には扉があった。

看護婦がノックをする。


コン。コン。コン。コン。

カチャ


ノックに反応して扉が開いた。

部屋の中も暗い。

そこには誰かが座っていた。

看護婦がその誰かにしゃべりかける。


「回復は順調。まぁ彼が一体誰になったのかは定かではないけど。」

「・・・」

「ていうか、よく見つけたわねぇアレ。まさかあるとはね。実は私もちょくちょく探してたのよ。あんな直前で種明かしされちゃあ...私もびっくりしたわ。」

「・・・」

「とにかく、もうこれ以上首突っ込まないことね。って言っても比は完全にあの子にあるんだけど...まさか、公共の病院で手術したにも関わらずあんなオンボロにされちゃあ...」

「ふぅ.....」

「あら、ごめんなさい。気が立ってるのはわかるわ。あんたの方針もわかってる。だからって寂しいわよね。もう会えないんだから。」

「お前は会えるだろう。きっと」

「会いたくなったらね。...でもどうかしら」

「...囁かないのか?」

「...ふっ、私の場合は...どうかしら...フフッ」


看護婦は胸ポケットから煙草を取り出す。

火を付け、部屋の扉を開けた。


「んーーーーっ、とりあえず私はまた泳いでみるわ。楽しいから。」

「・・・」

「またいつか会いましょう。じゃあね。ドクター」


扉はゆっくりと静かに閉まった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ