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Introduction 3 ~結束~

プリジェイルは東北の山奥の研究所を拠点としていた。


「こっちよ」


鉄朗はリョウコに導かれ、公道から外れた山林を切り抜け、歩いていく。

険しい岩を乗り越えると研究所が見える。

場違い感がすごい。

どうやって建てたのか気になるくらい山奥であった。

研究所に入ると電気は付いておらず、不気味な薄暗さを漂わさていた。


「ハインツ!」


リョウコが誰かを呼んでいるようだ。

薄暗い廊下の奥から金切の車輪の音が聞こえてきた。

車椅子に乗った誰かがこちらにやってきた。


「リョウコ、化け物を連れてきたのか」


化け物とはどうやら鉄朗のことらしい。


「化け物じゃないわ、鉄朗よ」

「鉄朗・・・ほう」


老人は鉄朗をじっくり見ながら鉄朗に近づいていく。

その老人の見た目は白髪と白髭のまさに日本版アインシュタインのような感じだ。


「鉄朗、彼はプリジェイルのメンバーでリーダーの渡井ハインツ雪則よ」

「・・・」

「しゃべれないのか?」

「無口なタイプなのよ」


ハインツは鉄朗をあまり信用していないように見えるが無理もない。

死神のような見た目の半身サイボーグの男を見れば誰だって不審に感じるだろう。「とりあえず、中に入りましょう」

鉄朗はリョウコとハインツに誘導されて研究所の診断室と呼ばれるところへ入っていった。


「とりあえずお前のことは調べてから判断するとしよう。鉄朗、衣服を脱いでくれるか?」


ハインツがそう言うと鉄朗は手慣れた手つきで服を脱いでいく。

そして、パンツ一丁の状態で診断室のベッドの上に座った。


「ほう、なかなかの義体化を備えておる・・・君の見た目からして、正規のルートでの改造は施してはないように見えたが、それはわしの間違いのようじゃな」


ハインツは鉄朗の首の後ろにある深層メモリーラインを調べ始める。


「では本丸を見ていくぞい。それ」


鉄朗は意識の中にグルグルしたものが流れ込んでくるのを感じた。


「君の中にバグをみつけた。厄介なタイプだ」


そう言うとハインツは鉄朗の頭から手を引いた。


「厄介なバグって?・・・」

「うむ、それは・・・」


と言いかけた瞬間だった。鉄朗は気を失っていた。

目を覚ますと鉄朗は自分のベッドに寝ていた。

窓から明るい日差しが差し込んでくる。

どうやって帰ってきたか思い出せない。

鉄朗がそう考えているとドアをノックする音が聞こえた。


「どうぞ」


鉄朗は何かを察したのか抵抗もせずその人物を招き入れた。


「おはよう鉄朗」


リョウコだ。

なぜ家がわかったのだろう。

その謎はすぐにわかる。


「君の深層メモリーから君の家を特定したんだ。」


リョウコの後ろからハインツが現れた。


「なるほど」

「うむ、君のバグも除去しておいた。何やら医者に設定された奇妙なバグであったなぁ。医者に何か注文でもしたのかい?」


バグ?鉄朗はプログラムドクターとの会話を思い出そうとした。


「深層メモリーで過去の医者とのやりとりを見ようとしたが、医者が何かしら細工をしかけたらしくてのぉ・・・」

「いや、思い出した。俺が頼みました。自分の欲望、不自由なく生きたいという欲望を抑えたかったがためにプログラムドクターにお願いしたんです。」

「ほぉ、そこまでして部位提供がしたかったと。」

「俺の生きる目的を作りたかったんだと思います。」

「無口になっていたのもその為かのぉ・・・右の頬を叩かれたら、左の頬も差し出す・・・ジーザスにでもなりたかったのかね」

「・・・どうでしょう」

「まぁ少なくとも君はうつ状態の傾向にあったのは間違いない。ノーマルタイプの実験でいうところのロボトミー手術を受けたとでも言っておこうか」


リョウコがクスッと笑った。


「いつの時代の話よ。アングラで生きていく爺さんは、いつまで経ってもノスタルジーに浸りたいものなのね。」

「それは世界人類共通の話じゃよ。神のいない世界に残るものは自我だけじゃ、その自我の中で最も美しいものは記憶じゃよ」

「美しいものだけで生きていける世の中じゃ、つまらないものよ。」

「バランスか・・・ひねくれた性格じゃ」

「昔からそうなの」


リョウコは煙草を取り出し、外に出た。


「それで鉄朗君、君はわしの下で働くか?」

「ええ」


鉄朗は即答した。

ハインツから信用を得たのであろう。




3か月後、流税警備組織アビドまたの名をユーロアビド・インダストリアルは急激な経済成長を遂げていた。

リョウコが目星を付けていた裏金の取引は大きく作用したようだった。

ウルからアビドへ資金が流出したことにより、ウルの経済バランスが一定値に留まる事態になっていた。

ウルトマが活動を停止した場合、ウルは一気に破産へと向かうだろうと考えられている。

ユーロアビド・インダストリアルの本社ユーロアビドタワーの地下にマザー室(特別コミュニケーター機能管理室)と呼ばれるいわゆる独自AIのマザーが眠る部屋が存在していた。

リョウコは先ずこのマザー室を物理的に破壊し、その影響でセキュリティが割れたところに鉄朗をユーロアビドタワー内にあるデータバンクに侵入させるという計画を考えた。

最終目的は独自AIが再始動するまでの間(約数分)にデータバンク内にハインツが作り上げたウィルス(ニアテク防アト増殖装置)を入れることである。

ニアテク防アト増殖装置はハインツが作り出したウィルスの中で最大級にやっかいなウィルスである。

その影響は、感染後、データバンク内にエラーを吹き出し、セキュリティシステムにわざと見つかるように警告させて、その後直ぐに完治したかと思わせた後に、感染のエラー警告を別ベクトルで発生させてさらに増殖させる、そしてまた偽の完治報告を通知する、これの繰り返しを一秒間に10回のペースでマクロしていく、これがニアテク防アト増殖装置である。


リョウコはレザースーツを身にまとい、隣接するビルの頂上に立っていた。

都会の夜、通り風がリョウコの髪をなびかせる。


「さあ、行くわよ」


リョウコがビルから舞い降りる。

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