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3話 アフティの追う背中

 決闘の場所は村から少し離れた砂浜で行うらしい。

 ヴェルフリッツは村長達とその場所へ向かう。

「物分かりの悪いやつめ」

 ヴェルフリッツは一人ぼやいた。


 ヴェルフリッツとアフティは向かい合う。


 アフティの武器は木製の持ち手の先に尖った金属のついた槍、アフティは軽やかにヴェルフリッツに向かって構えた。


「くれぐれもお互い相手に致命傷を負わせてはならぬ、かすり傷じゃ、その時点で決闘は終わりとする、では始め」


 アフティが先に動く。


 アフティは腰を低くしてヴェルフリッツに接近し、目にもとまらぬ速さでヴェルフリッツに槍を突き出し。そしてヴェルフリッツがアフティの槍に手をかざすのは同時だった。


 次の瞬間ブンという音がして、アフティの槍が真っ二つに折れ、アフティはその衝撃を受け流すがその場にうずくまる。


「さっきのは……」

 アフティは膝をつく。


「ヴェルフ殿の勝利じゃ」

「お前は何をしたヴェルフ?」

「魔術です、あなたは魔術をあまり知らない様ですが、風の魔術であなたの槍を防いだんです、ですがどうやらあなたの槍はそれに耐えられなかったようですね」


 アフティは悔しそうに下を向いた。


「アフティさん、クラーケンはとても強いモンスターです。倒すだけの力も必要ですが、半端な武器では倒すことすらできない。ナッズさんの息子さん、彼も戦士ではなかったのですか?」

 アフティはヴェルフリッツの言葉にハッとして顔を上げる。


「どうなったかは知りませんが、彼の息子さんも被害にあわれた、あなたが焦る気持ちもわかるのですが、僕もクラーケン相手には分が悪い、海を知るアフティさんの力が必要です、手を貸してはもらえないでしょうか?」

 ヴェルフリッツがそう言うと。


「わかったヴェルフ、俺らを助けてくれ、頼む」

 アフティがやっと落ち着く。


「ええ、アフティさんよろしくお願いします」


 ヴェルフリッツとアフティはお互いに手を取り合った。


「アフティ、集会所に行っていなさい、私はヴェルフリッツ殿と話しがある」

 ルーベ村長がそういうと、アフティは一礼して村に向かう。


「ヴェルフ殿、やはりあなたにクラーケンのことを頼んでよかった。アフティのことなのですが」

 ルーベ村長が話し始める。

 アフティは父がクラーケンすら相手にする凄腕の海の戦士だったらしい。そしてずっとその父の後ろ姿を追いかけてきた。

 しかし、アフティの父は海の魔物討伐で命を落としてしまう。

 アフティは戦士としては優秀だったが、とても自らの父程の戦士ではなかった。

 だが、アフティはクラーケンが出たため、父の代わりにテオリ村の戦士長として任命されてしまう。

 アフティは焦るあまり、クラーケン討伐に4人の若者と出かけてしまったということだった。


「アフティの父はクラーケンなら一人で討伐することもできる凄腕じゃった、アフティの焦りをヴェルフ殿には理解してもらいたいのじゃ」

「わかりました」

 ルーベ村長の話を静かに聞いていたヴェルフリッツはそう言った。(そういえば、僕も父にあこがれていた。)そんなことをヴェルフリッツは思い出した。


「ヴェルフさん申し訳ありません」

「ヴェルフさんすみません」

「ヴェルフ、すまなかった」

 ファムとムークそしてアフティが謝ってくる。

「気にしないでください、それよりもクラーケン討伐について話し合いましょう」

 もう遅くなりかけていたので、ヴェルフリッツ達は話は明日にしようと言うことにした。


 アフティとベルフリッツは、ルティとマティが待っている家に戻る。


 アフティが家に入ると、ルティの声がする。

「アフティお兄ちゃん大変なの、ヴェルフさんがいなくなって」


「心配をかけたかな?」

 そういってヴェルフリッツが家に入っていくと、ルティとマディは驚いていた。


 その晩、ヴェルフリッツ達は前報酬もとい生活支給品の魚の干物や香草、そして林に生息している動物の干し肉をルティが調理してくれたものを食べた。


 アフティはおとなしく食事を食べ、散歩に行くと言って家から外に出て行った後で、食事が終わると、ルティが話してくれた。


 老人で戦士を引退したナッズと、アフティとルティとマディの父であるルーア、そして村長の息子であるカナックはこの村の戦士だったらしい、3人とも優秀な戦士で仲が良かったが、ナッズだけが生き残り、後の二人は帰らぬ人となったらしい。


「ヴェルフも無理はしないでね、絶対だからね?」

 ルティは心配そうに言ってきた。


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