ノゾキアナの恐怖 隣
うっかりやらかした。
住んでいるアパートに、小さな穴があいた。
僕が家具を移動させているとき、間違ってぶつけてしまったためだ。
はじめは、「あちゃー」と焦ったけど、冷静になると別の感情が湧いてきた。
せっかくあるんだからと、ちょっとのぞいてみることにしよう。
と、好奇心が。
最初はダメだと我慢していたけど、やっぱり好奇心には勝てなかった。
小さな穴に目を近づけて、そっとのぞき込む。
そこには、とても綺麗な美女がいた。
思わず目を奪われてしまう。
数秒で終わらせるはずだったのに、美しすぎて目が離せない。
ちょっと色白すぎるけど、プロのモデルもびっくりするくらいの美貌だ。
食い入るように見つめていたら、その美女がこっちを見て、にこりと笑った。
途端に、僕は金縛りにあったように動けなくなった。
硬直している間に、美女がノゾキアナのほうへ向かってくる。
そこで、今更ながらのジジツにきがついタ。
この僕の部屋は、一番角にある。
今向いているほうには、へヤなんてナかったハズだ。
ナラ、今みているものはイったい……。
ノゾキアナのすぐそばまでやってきたビジョが、邪悪な表情でにこりと笑った。
「二ガサナイワ」
そのとたん、思考に靄がかかって、意識がぷつりと途切れた。