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【完結】 次期聖女として育てられて来ましたが、異父妹の出現で全てが終わりました。史上最高の聖女を追放した代償は高くつきます!  作者: 林 真帆
第一章

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第21話 悪夢のような夜

「はい、どうぞ。早く持って行ってあげて」


 私はアベルに薬を手渡した。


「どうかしたの……?」


 アベルの様子がおかしい。〈急用〉だと言っていたのに、急いで帰る様子がない。


 それどころか、扉の前に立ったまま、微動だにしない。


 このままでは埒が明かないと判断した私は、自分から行動を起こした。


 私は、扉の前に移動し、取っ手に手をかけた状態で、


「もう帰ってちょうだい!」 


 と叱責するような口調で言った。


 すると、アベルは、取っ手に触れている私の手首を強く掴んだ。


「放して!」


 ありったけの力で手を振りほどこうとしたが、それ以上の力で手首を掴まれているので、振りほどけない。


 離れは、たとえ真っ昼間であっても、滅多に人が近寄らない場所に建っている。大声を出して助けを呼ぼうにも、助けは来ないだろう。


 ――自分で何とかするしかない。





 外に出れば、逃げられるかも知れないと考えた私は、扉を開けようと必死にもがいた。 


 しかし、より一層強い力で腕を引っ張られ、その衝動で、私は床の上に放り出された。


 さらに運の悪いことに、倒れこんだ勢いのまま、私は後頭部を強く床に打ち付けてしまい、そのまま気を失ってしまった。


 私の記憶はそこまでだ。

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