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第一話 視察

よろしくお願いしますm(_ _)m

(こんな馬車どこから引っ張り出してきたのかしら)


酷く乗り心地の悪い馬車に揺られながらエラはそう思う。最近の馬車はかなり乗り心地が良くなったと聞く。ここまで乗り心地の悪い馬車が貴族、ましてや公爵家の屋敷にあるとは考えにくい。


(お義母さまが嫌がらせのためにわざわざ用意したってことでしょうね)


憂鬱な気分で窓から景色を見る。辺りには長閑な田園風景が広がっており、王都にあるようなレンガ造りの建物はひとつも見当たらない。


公爵令嬢であるエラがこのような辺鄙な地にいるのには理由があった。




先日、いつも通り部屋にこもって読書をしていれば、義母であるリリーから呼び出しを受けた。普段、顔も見たくないと言ってことごとくエラを避けているというのに、自分から呼ぶとは何事だろうか。


待たせると機嫌を悪くしそうなので急いでリリーの部屋へと向かう。リリーの部屋のドアを開けると、そこには書類仕事をしているリリーと紅茶を飲むエラの義姉のミアがいた。


「お呼びでしょうか、お義母さま」


エラがそう問いかけると顔をしかめながらリリーは答える。


「ミアに王立リートン学園の視察の仕事がきたのよ」

「そうですか」

「そうですかじゃないわよ!? こんなに可愛いミアを下級貴族ばかりが通うリートンに送るなんて正気の沙汰じゃないわ!」


リリーの顔には血管が浮き出ている。その怒りの矛先が向けられないようにエラは無難な対応を心がける。ただでさえ嫌われているのだ。何を言われるかわからない。


しかし、想像していたような的はずれな罵倒は来なかった。


「代案を用意したの」

「代案、ですか?」

「えぇ、ミアがダメならエラが行けばいいでしょう?」

「私が、ですか?」


(ミアにきた仕事を私が引き受けてもいいのかしら?)


そんなエラの疑問を見透かしたかのような返答が返ってくる。


「ミアは体調が優れないから自宅療養させていただくと報告したわ。代わりにエラを送ると言ったら向こうも納得したみたいだし。まぁ、誰でも良かったってことね。そんな仕事をミアに頼まないで欲しいんだけど」

「お母さま、私はリートン学園に行ってもよろしかったんですのよ? 下級貴族ばかりとはいえ素敵な方もおられると思いますわ」

「もう、ミアったら本当に優しい子ね」


リリーとミアがそんな茶番を繰り広げている中、静かに部屋を退出しエラはすぐに準備に取り掛かった。


そして今に至る。




実はエラからすれば王立リートン学園の視察は好都合であった。義姉であるミアを中心にしてまわる家から早く抜け出したかったのだ。今回の視察は実際に学生として通いながら調査するという少し特殊なものらしい。つまり、視察期間は家に帰らなくてもいいということだ。


リートン学園を見下しているため、リリーが来る可能性がほとんどないというのも、エラにとってはありがたいことだった。リリーはなにかとエラを忌み嫌ってくる。その理由が自分の容姿にあることにエラは気づいていた。


馬車の中で思わずフードの中に隠している自分の髪を見る。それは雪のように白い髪だった。そして、窓に反射して映るのは赤色の目。昔はこの容姿だけで反逆罪にかけられることもあったという。


エラの住むデーモン王国を創ったといわれている悪魔メティム。それの唯一の宿敵であった天使リムエルの容姿が白髪に赤目だったというのだ。


だからリリーがエラのことを忌み嫌うのはある意味正常な反応とも言える。しかし、仮にも家族である人間からそのような目で見られるのは幾らか応えるものがある。


(もしかしたら、リートン学園の生徒なら容姿なんて関係なく、本当の私を見てくれるかもしれない)


天使によって創られたといわれるアンジェラ王国との国境近くに位置する王立リートン学園。保守主義が大半を占める上級貴族とは違い、進歩主義が勢力を伸ばす下級貴族。


そんな学園なら天使リムエルと似た容姿をした自分でも受け入れてくれるのではないか。



齢14の少女は、そんな淡い期待を抱いて王立リートン学園の門をくぐった。












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