表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒い覚悟  作者: ビターグラス
15 化け物と従う者は
88/96

信じているのか、いないのか

「それが昨日までの出来事です。もし、剣士さんたちが今日戻って来なかったら、少し手がかりでも集めようと思っていたところでした」


 世留はタービュライの話を最後まで大人しく聞いていた。黒い化け物の話をしたところでは、世留の雰囲気が変わり、さすがのタービュライも少し顔が強張ってしまった。しかし、それでも彼は暴れることなく、彼の話に耳を傾けていたようだ。


「タービュライ。ありがとう。あいつらは、まだ、この地域にいるはずだってことだ」


 サラは彼が一人でどこかに行くような気がして、彼の服の袖の辺りを掴んだ。世留はそれに気が付いて、彼女の顔を見たが、彼女の意図は伝わらなかった。


「ワタシが彼等との接触はありましたが、この町から離れたのかすらわかりません。彼らは、彼らだけの空間があるようです。食事の時だけ、外の人を空間内に入れて、化け物の餌にするようですが。こちらからその空間に入るのは無理だと思います」


 世留は彼の話を聞きながらも、自分の超能力を使えば鑑賞できるかもしれないと考えていた。空間に干渉するという特性は同じだ。しかし、まずは黒い化け物たちを見つけてからでないと、復讐を遂げることもできない。


「とりあえず、化け物に会った場所に連れて行ってくれ」


 タービュライと祷花はその言葉に頷いてサラと世留を連れて、昨日の通りに移動した。




 昨日と同じ通りに来たが、人通りはそこそこある。昨日とは違い、人気ひとけすらないというようなことはない。タービュライはあの空間を脱出したルートを逆のルートを辿る。路地であっても、大きな通りからの喧騒は聞こえる。タービュライはこの冷静な状態で考えると、すぐにあの空間がおかしいことに気が付かなかったことに自身の危機管理能力を疑う。彼がそうしている間に、世留は刀を出していた。刀からは黒いもやが出ていて、それが何かを調べているかのようにそこかしこに広がっている。もやが得たものは刀を伝って、世留に送られる。


「わかった。あの空間を作り出したのも、ここらへんだ。どこに移動したのかもある程度はわかる、か」


 世留はぶつぶつと呟いていたが、大通りほど騒がしくない路地ではその言葉もそこにいた全員の耳に届いていた。世留は黒いもやを回収して、刀を消失させた。タービュライも祷花も、彼が黒いもやを使っているのに驚いていたが、あの化け物のような恐怖心は生まれなかった。


「そうですか。それで、あのお二人はどちらに行ったのでしょうか」


「いや、ここからは俺一人でいい。タービュライはわかるだろ。あれがどれだけ危険なのか。お前たちをあの危険には晒せない。だから、ここでお別れだ」


 祷花は目を丸くして、突然突き付けられた別れの切り出しに、自身の世界が止まるのを感じた。サラは彼の言葉通りにする気は最初からない。勝手についていくと決めているのだ。タービュライは自身の安全を優先するために、彼に付いて行くことにした。自分一人より、三人といた方が安全だ。


「その、私、もついていきたいです。自分の身は、自分で守りますから」


 最初に声を上げたのは祷花だ。彼女は手をすり合わせて、自信なさそうにしながらも、彼女は自身の意見を述べた。世留は首を振るだけで、彼女の銅鏡を拒否した。しかし、彼女はまだ手をすり合わせて彼の目を見つめていた。世留はその目から視線を外して、彼女を無視したつもりだったのだが、顔を逸らした先にサラがいた。彼女の視線には置いて行かせないという固い意志が見受けられた。そもそも、彼はああいったが、サラが勝手についてくることは予想の範疇だった。祷花とタービュライに説得させるつもりだったが、そのタービュライは同じ方向なので、と言って、一緒に行動するかもしれない。そんなオーラが見える。


 世留はその三人を本当に置いていきたかった。実際に戦ったことはないが、あの化け物と対峙した時に、誰かを守りながら戦うことは出来ないと思った。だが、今は少し違った。三人が居れば、あの化け物から三人を守りながらも戦えるかもしれないと考えていた。それだけ、共にいた時間が長いのだ。そもそも、ネクロマンサーになったと言っても、その人の根本が変わるわけではない。世留の場合は、復讐と言う目的があるからこそ、暗い雰囲気や威圧するような話し方をするが、元は情に厚く、人に優しい彼の性格が元から変わったわけではないのだ。だからこそ、彼はここで三人が付いて行くつもりだったのなら、勝手についてくればいいと思っていた。


 彼が考えている間に、祷花は未だに手をすり合わせていた。足もすり合わせて、落ち着かない。それもそのはずで、彼女だけはこの町で彼と別れると思っている。彼女は無理やり付いて行くという選択はまだできない。あの町での受け身で育ってきた彼女は命令やお願いからは逃れられない。だから、彼女は自分の心を押さえつけていた。しかし、今回ばかりは我慢できない。大好きな人との別れなど、経験したくはない。今だけは、我慢できなかった。


「あの、私、も、その……」


 彼女の小さな声にそこにいた他の三人が視線を映した。タービュライは彼女が何を言うのか理解できていた。サラはあまり興味なさそうだ。世留は彼女の言葉をただ、待つ。


「わ、私も、一緒に行きますっ! 世留さんが、駄目だって、言っても、ついて、行きますから」


 心臓が早鐘を打ち、彼女は目をぎゅっとつむっていた。それが彼女の精一杯だった。あの化け物から逃げるときにした覚悟よりも遥かに覚悟がいることだったのだ。それでも、彼女は自分の声を、わがままを叫んだ。彼女はつむっていた目を開けるとそこには誰もが驚いた顔をしていた。その理由は、彼女が大きな声を上げたからでも、自分の意志を伝えたからでもない。彼女だけ本当に置いて行かれると思っていたことだった。祷花は三人の顔を見ても、それを理解できず、三人に見つめられて、顔を赤くした。その顔に両手を当てて、俯いてしまったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ