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黒い覚悟  作者: ビターグラス
15 化け物と従う者は
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顛末

 光の先には、人通りのある通りだった。先ほどのまでの、誰もいない空間から抜け出せたのだ。祷花は周りにいる人を見ると、安堵からか座り込んでしまった。タービュライとしても、心境は彼女と同じだ。しかし、彼は人前で、そんな姿を見せるわけにはいかないと、座り込むどころか祷花に手を差し伸べて立たせていた。道の真ん中で座り込んでしまうと、自身の印象は悪くなるかもしれない。印象が悪くなると、商売に響くだろう。彼はそれを意識せずとも、そういう振る舞いが出来る人であった。


 タービュライが祷花を立たせると、真っ直ぐに宿屋に向かった。祷花が、自立して動くのが難しそうな雰囲気で疲れていそうだったため、タービュライは彼女を背負う塔提案をしたのだが、さすがに恥ずかしがっておんぶするのは拒否された。結局、彼女と手を繋いで彼女を引っ張るしかなかった。彼女を背負うのに抵抗はなかったが、彼女と手を繋ぐというのは自分が思っているよりも恥ずかしかった。


 宿屋に着き、それぞれの部屋に移動した。祷花は疲れた様子でも、またあとで、と挨拶をして、部屋の中に入った。タービュライもそれに頷くだけで、自室へと戻った。


 タービュライは、ベットの上に体を投げ出した。普段はそんなことしないのだが、今回の戦闘に置いてはそうしたいくらいに疲れていた。しかし、彼はすぐに眠ることは出来なかった。あの女性と黒い化け物が世留の探している仇だとするなら、彼が戻ってきたときに伝えないといけない。そして、ただの彼の勘だが、この町の薬屋の豹変は黒い化け物のせいだろうと考えていた。化け物ではなく、あの女性が誑かしたという可能性の方が高いだろう。どちらにせよ、あの二人組がこの町に影響を与えていないとは思えないのだ。明日から彼らの調査もしなくてはいけない。そもそも、手がかりなど残しているとは思えないのだが。


 祷花は部屋に入ると、ドアの前で座り込んだ。今更ながら、あの時感じた恐怖の欠片が心に残っていることに気が付いた。しかし、その恐怖心を照らし、和らげている力がまだ、自分の中に残っていることに気が付いていた。神様がまだ、力を貸してくれていたのだ。今、力を返せば、恐怖心だけが残るかもしれないが、ずっと力を借りているのは悪いことをしているような気分になり、恐怖心より神様への感謝を優先した。


「ありがとうございました。また、力をお貸しくださるとありがたいです」


 彼女がそう言うと、力が徐々に抜けていくのがわかった。暖かな光が失われ、恐怖心が大きくなる。しかし、彼女はそれを自力で抑えた。立てなくなるとか、錯乱するとか、そういうような症状にはならないようにした。確かに、少しだけ常に怖いと感じる程度で、そんなものはすぐに忘れてしまうだろう。肝試しに行っても、一週間もすればその恐怖を忘れてしまうのと同じことだった。彼女はベッドの上に寝転がり、天井を見た。今日は、あの町を出てから初めて近くに世留がいない状態で冒険のようなことをした。近くにタービュライはいたが、それでも彼女の支えになっているのは世留なのだ。その支えがない状態でも、何とか生きて返ってくることが出来た。ほんの少しだが、それが彼女の自信になる。それでも、やはり、世留の近くにいたいと、いてほしいと思ってしまう。早く戻ってきてほしいと願ってしまう。彼女は彼の無事を願いながら、いつの間にか眠っていた。




 翌日。タービュライが町に出て、今日も調査をしようとしていた時。町の一つの通りに人が集まっていた。彼もその集まりの中に混ざろうと近くに寄っていくと、集まっている場所がどこかわかった。それはこの町一つしかない薬屋だ。なぜ、集まっているのか気になったが、その人だかりに混ざる前に誰かに肩を叩かれた。振り返れば、そこにいたのはインレイダーだった。彼は彼は怖い顔をしていた。


「どうやら、君がやったわけではないようだ。よかった」


 彼が言っている意味が良くわからず、彼は首を傾けた。


「いや、すまない。君にも知らせないといけないな。……薬屋が死んだ」


 その言葉に耳を疑ったが、目の前の男が冗談を言うような人ではないというのは、彼の肩書きからも理解できる。


「死んだって、どうしてですか。確かに薬の販売を独占して利益を上げていたみたいですが、それは商人でも同じ手法使いますよ」


「いや、人に殺されたわけじゃないようでな。何かに、腹を嚙み千切られていたんだ」


「……噛み千切られていたって、猛獣でも買っていたわけでもないのですよね」


 彼は口を動かしながら、白々しくも犯人と思われる人がわからないという風だった。しかし、彼の頭には思い当たる人物はいる。あの二人組が、自分たちを襲った理由は化け物の食事とやらが足りなかったからだ。二人を逃してしまった二人は、そのまま薬屋を狙ったのだろう。都合よく考えるなら、あの女性と薬屋の間に何らかの取引があり、昨日の夜に二人は会う。その時に、彼が食事の対象として処理されたのかもしれない。まぁ、この推理は推理と言えるほどの物ではないのだろう、と想いながら彼はインレイダーの前で立っていた。表情は先ほどから変えていない。


 それから二、三言話すと、組合長は人をかき分けて、薬屋の中に入っていった。タービュライは特に何かの証拠があるとは思えなかったので、彼には付いて行かずに、宿に戻ることにした。

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