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黒い覚悟  作者: ビターグラス
15 化け物と従う者は
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逃げ道

 化け物は抵抗するタービュライから視線を外し、もう一人の得物を見た。その得物は手を組みながら、じっとしている。狩るなら抵抗しないものから。化け物は祷花に近づいていく。動きは鈍い。しかし、タービュライは彼女を守ることは出来ない。赤い着物の女性が邪魔をしてくるのだ。タービュライは冷静に彼女を助けられるような行動を考えるが、彼女が自分を止めることだけの行動をしてくる以上、彼女を抜けて祷花の位置まで駆け付けることは出来ないだろう。自分でどうにかしてもらうしかない。彼の視界にちらと彼女の姿が目に入った。何かを祈るように手を組んでいる。そこから何が起こるのかはよくわからないが、何かしようとしているのは理解できる。彼はとりあえず、彼女の力を信じるしかない。助けに行けないのだから、自分にできるのはそれだけだった。


 黒い化け物も近づいてきて、自分に危機に陥っていることを自覚しているのか、していないのか。彼女は神に祈り続けていた。既に、彼女の体には神の力が宿っている。それ以上に何を欲してるのか。それは一つだけだった。この状況を打ち破るための力だ。今借りている力だけではまだ足りないと思った。だから、彼女はまだ祈りを止めることはない。もしこの状態で死んでしまうのなら、彼女はそれまでだと思っている。自分出来る最後の悪あがきは、祈りだけだと考えている。そして、彼女に手を貸す神はその祈りを受け取ったようだ。彼女の体に今までで一番、自身の体に力が沸いているのを感じていた。だが、すぐには攻撃しない。彼女は近づいてくる黒い化け物と距離を取った。


 タービュライは彼女が動き出したのを見て、自分の信頼が間違っていないと認識した。あの剣士さんと一緒にいることになったのだから、こんな場所でやられることはないと確信していたのだ。そして、それは自分も同じである。この情報を持って、剣士さんに会うことが今の彼を動かしている要因の一つだ。だが、タービュライは彼女に攻撃はしていない。今まで、タービュライが女性から逃げようとしてそれを追うだけと言う展開が続いていた。女性も攻撃らしい攻撃はしてこない。センスをたまに振っていたが、それが彼に当たることはなかった。


「あら、獲物に逃げられそうだわぁ。逃げるなら貴方達無くとも良いのでしょうけど、主人は彼女に少し執着しているようね」


 タービュライを負いながらも、彼女には化け物を視界に入れる余裕があったようだ。これで本気を出されていたら、すぐにやられていた可能性があっただろう。だが、これでいい。そもそも、この空間から逃げ切るのが目的だ。祷花がどう考えているかはわからないが、彼女も逃げることを優先しているだろうと、考えて徐々に彼女との距離を詰めていた。相手の女性はそれに気が付いていたようだが、それを妨害する様子はない。祷花が既に抵抗できる状態になってしまったからだろうか。そして、ようやくタービュライは祷花の隣に移動することが出来た。


「巫女さん。逃げますよ。この空間の中にも出口があるかもしれません。それか、相手が諦めれば逃げ切れるかもしれません。どうでしょう。体力は持ちそうですか」


「は、はい。逃げ切りましょう。……出口はないようですが、この空間を打ち破れそうな場所はあるみたいです。神様が教えてくれました」


「いいですね。では、そこから逃げることにしましょうか。案内、お願いします」


 二人は目を合わせず、敵の二人から視線を外すことはなかった。化け物も本当に、動きが遅いのかはわからない。もしかすると、簡単に勝てそうな相手だからそういう行動をしている可能性はあるだろう。女性は既に素早い動きを見せている。少なくともタービュライより素早く動くことは確認できている。だが、この状況でも逃げ切れないとは思っていない。


 二人は敵に背を向けて、移動を開始した。祷花がタービュライの前に出て、彼を先導する。それと同時に、タービュライが敵二人の迎撃をするつもりだった。しかし、敵の内、女性がかなり素早く既に彼等と並走していた。


「逃げるつもり? 無駄よ。主人のこの空間の中に綻びなんてないわぁ」


 彼女は余裕そうに扇子で口元を抑えて嗤っているいるようだった。しかし、二人は女性の言葉を気にすることなく、綻びに向かっている。その間、並走している女性は常に無駄だとか、意味ないと言ったような言葉を吐き続けていた。そして、少し移動した先で、祷花が足を止めた。そして、何もない空間を拳で殴りつけた。その瞬間、その空間全体が震えた。何もなかった空間には日々が入っていた。その奥から、光が溢れていた。

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