再会
サラが握っていた刀を消して、世留は彼女の手を見た。刀が消えただけで血は止まっていない。彼は超能力を使って傷口を閉じた。それは勇者と戦ったときに使ったものと同じだ。サラの額には汗が浮かんでいたが、倒れるほどではないらしい。そうなる前に、彼女から刀を離すことが出来てよかったと安堵する。
「いきなり、やめてくれ。本当に」
「ご、ごめんなさい。でも、元気になってくれてよかった」
彼女は疲れながらも、世留に笑顔を向けていた。本心から、彼の無事を喜んでいた。それを感じてなお、鈍感な振りをできるほど、世留は冷徹な男にはなれなかった。
「……、ああ。おかげで元気にはなった。後は魔獣でも倒す」
黒いもやに惹かれて魔獣たちは出現する。それらを細切れにして、一気に血を奪う。刀は全ての血を漏れなく吸収した。世留は完全に全快した様子で、一つ息を吐いた。
彼が吸血している間、サラは自身の血だらけの手を見ていた。右手の中心を走るように、真っ直ぐな傷口が伸びていた。傷口は綺麗についているため、すぐに治るだろう。しかし、サラはこの傷跡が掌に残ってほしいと思っていた。彼女が初めて、世留を回復させ、彼の役に立てた証なのだ。彼女にとってはその傷は勲章だった。だから、消えてほしくないのだ。
「サラ。休憩してから、あの町に行こう」
全快した世留を見て、サラは再び笑った。これからも彼に頼ることは多いかもしれないが、彼の役にも立っていこうと、彼女は密かに決意した。そして、彼女は自分が彼のことを愛しているということに薄々気が付いていた。しかし、それを認めてしまうと歯止めが効かなくなるかもしれないと思い、彼女は世留が復讐を果たすまで、その心をしまいながら、彼と共にいようと思った。
サラの心境の変化には全く気が付かない、世留は休憩すると話してから、彼女の隣に座った。服が触れ合うほどの距離に彼から座るのは初めてのことだった。いままでは、世留や祷花が自らその位置に来ることはあったかもしれない。彼は無意識に助けてもらったサラに心を許していた。復讐の心は未だ無くならない。それでも、復讐以外のことを考えながら旅をするのも悪くないかもしれないと考え始めていた。
世留とサラが立ち上がり、休憩が終わる。二人は隣に並びながら、道を行く。次の町まではそこまで距離は無いように見えた。
案の定、次の町にはすぐについた。そこで地図を買った。情報屋から貰った地図によればここらで、大湖が乗っている地図を買えるかもしれないと思い、地図を見ると、大湖が中心にある地図を買うことが出来ていた。まだいるかはわからないが、起鼓詩まではそこまで遠くはないようだった。地図を買う代金は既に円になっていたため、金に困ることはなさそうだった。
こうして、長い帰路にも終わりが見えた彼らは、何事もなく起鼓詩まで辿り着いたのだった。そして、タービュライも祷花も最初に取った宿に滞在してくれていた。ようやく、再会した。タービュライも祷花も、最初こそ喜んでいたが、二人がいない間に、この町に何かあったらしい。
「剣士さん。落ち着いて聞いてほしいのです。……この町に、アナタの復讐対象が来ていたかもしれません」
「なっ。それは、本当かっ!」
世留がタービュライに詰め寄り、タービュライは両手を上げて、彼に落ち着くようにジェスチャーをした。世留は何とか冷静さを取り戻して、話を聞くことにした。
「ええ、はい。起こったことを全て話すと長くなりますが、話した方が良いでしょうか」
「頼む。黒い化け物を追いかけたいが、タービュライの話を聞いた方が良いはずだ」
「わかりました。では、お話しましょう。剣士さんたちがいきなり姿を見せなくなって、そこまで時間が経っていない頃の話です」
タービュライはそう前置きをして話を始めた。
話は世留たちがファーネランドに連れ出されたところまで戻る。世留たちがいなくなった後も、二人がこの町に戻ってくると確信して、タービュライと祷花は彼らが戻ってくるまで、この町にいることを二人で話し合って決めた。話し合いとは言っても、会話は五往復もしてないだろう。二人とも彼らが戻ってくると思っているのだから、最初から意見は一緒だった。
「巫女さん。ワタシは少し物売りをしてきます」
「あ、はい。あ、あの、お手伝いしてもいいですか。一人だと何をしていいのかわからなくて……」
祷花は少し恥ずかしそうにそんなことを言った。タービュライは彼女の言葉を笑うこともなく、微笑ましいものを見るような笑顔になった。
「ええ、構いませんよ。それどころか、アナタのような綺麗な人が売れば、商品の売れ行きもいいでしょうし」
そこに他意はない。客観的にみて彼女は綺麗な人だと事実を言っているつもりだ。そのせいか、祷花は少し俯いて、照れていた。




