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黒い覚悟  作者: ビターグラス
13 勇者と呼ばれた敵は
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限界

 勇者は自身の剣が世留の体を斬り裂いた感触が手に伝わり、敵わないと思っていた相手に、一太刀入れることができた喜びに口角が持ち上がっていた。しかし、勇者はそれで油断することはなくなっていた。これまでも戦いでも、大怪我した時は大抵、油断した時なのだ。勇者は剣を握る手に力を入れて、油断を消すように全身を緊張させた。


 世留は自身の傷から未だに流れ続ける血を見つめていた。ネクロマンサーの力でいくら出血しても力が抜けたり、死に近づくということはない。しかし、血が流れ続けているということはネクロマンサーの力が多く消費されているということである。この状態のままでは世留でも死ぬだろう。彼は自身の超能力で止血した。ネクロマンサーの力の消費を少しは抑えられるが、減っているのは間違いない。長時間の戦闘はできないだろう。


 世留は無意識に力を抑えている。ネクロマンサーの力の力をある程度制御できるようになってからはよりその傾向が強い。今回も、勇者を殺すという意識はあるものの、最初から力の全てを利用して戦っているわけではない。彼が全力を出せば、勇者は五秒と立っていることは出来ないはずである。それもそのはずで、敵以外に被害をなるべく出したくないという無意識が働いているからであった。近くにはサラもいるのだ。彼女の居るであろう方向は把握しているが、彼女が動いていないとも限らない。彼女以外にもたまたま通りがかった人もいるかもしれない。彼は復讐者であるわりには様々なことに配慮しているのだ。そのせいで、彼は全力は出さないのだ。


 その縛りも彼が生命の危機に瀕しては気にしてはいられない。彼は無意識の内に、黒い力に手を伸ばしていた。彼の刀から黒いもやが発生している。そのもやが彼の体に吸い込まれていく。まるで、勇者とは正反対の反応だ。しかし、もたらす結果は同じだ。身体能力の強化。勇者はそのもやを何らかの強化だと感づいた。


「僕は神の試練に挑み、勝利したものなり。今こそ、自らの限界を超えるときっ。制限、解除っ!」


 勇者が何事かを叫ぶと、彼の体が光に包まれた。今度はそれが維持され、彼の体が太陽のように発光し続ける。体だけでなく、彼の身に着けている全てのものが光始めた。世留は、勇者がまだ力を残していたことを予想していたかのように、冷たい視線を勇者に注いでいた。そして、彼は軽く一凪ぎ、刀を振った。その瞬間、勇者の体がその場から吹っ飛んだ。それは斬りつける技ではなかった。隔てた空間を素早く移動させ、それをぶち当てたのだ。振りは軽いが、その空間がぶつかった勇者への衝撃は軽くはなかった。吹っ飛んだ勇者は地面に剣を無理やり突き立てて、地面に着地した。口から少量の血が吐き出され、彼はそれを赤い手袋で拭った。勇者にはそうしている時間すらなかった。次の攻撃が目の前に迫ってきていたのだが、見えない隔たりに、すぐに気が付くのは難しかった。突き刺した剣も巻き込んで、地面が抉れる。大量の土と一緒に勇者が土の波に巻き込まれた。かろうじて、上半身だけは、土の塊から出ていた。勇者の体は未だに光続けている。彼は戦う意志を消してはいないのだ。どれだけの実力の差を見せつけられようと、彼は自分が勝たないといけないと思い込んでいる。それは彼の決意の一つだったのかもしれない。しかし、どれだけ強い意志を持とうと、世留の復讐心には敵わない。土塊を物ともせず、勇者の体の一部が隔てられた。仰向けに倒れていた彼の腹に大きな斬り傷が出来ていた。彼を包む光が弱まる。勇者はそれでも、土塊の中から剣を地面に突き刺して立ち上がった。空に立つ世留を睨んでいた。彼は赤い手袋をした手を世留に向けた。


「火よ、荒ぶる火よ。闇も光も消滅するほどの、大いなる炎よ。……邪悪も善も無へと帰せ。ディフィートエクスプロージョン」


 世留の目の前に、光の球が出現した。そして、それは周りの魔気を吸収し、その吸収の作用で、周りのものも引き寄せられている。世留の服や髪もその光に引き寄せられているが、彼はびくともしていない。やがて、吸収を終えると一度、辺りがしんと静けさに満ちた。そして、次の瞬間には世留の目の前で、彼を巻き込み、大地も削り取るほどの大爆発を起こす。サラがいる位置にも爆発の熱波が届いて、彼女は思わず顔を背けていた。しかし、すぐに顔を彼の居たはずの場所へと向ける。彼がこの程度で死ぬとは思えない。しかし、これだけの爆発の中、生きているとも思えない。それに体力全快の状態でこの魔法を受けたわけではない。彼女は祈ることしかできなかった。

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