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黒い覚悟  作者: ビターグラス
13 勇者と呼ばれた敵は
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寂れた町

 道も大湖がある地域へと移動できる地図の端まで後少し。サラは無口であまり世留を見ないということ以外はいつも通りだった。ここまでの道のりで魔獣が何度か出たが、世留が一瞬で片付けた。そして、道中で通行人の振りをして、隣を歩く彼女に危害を加えようとした男を二人ほど殺した。サラの服が汚い血で汚れそうなのを、世留が空間を隔てたことで事なきを得た。少し怖かったものの、サラは世留を信じ切っていたため、助けられた後も大して取り乱すことはなかった。殺した男の処理はいつものように彼の刀が血を吸い、細切れになった肉片はその場に放置していれば、魔獣か動物が食うだろう。


 そして、きっとこの地域で最後である町が見えてきた。サラの出身の都から遠くはなれたこの場所は辺境の地であるためか、町を囲う塀はない。栄えているわけでもないのか、大した大きさもない。最後に訪れるには寂しい見た目の町だった。


 町に入っても寂れているという印象は変わることはなかった。町は円形の広場を中心に円形に広がっている。広場に近いところに宿屋や食堂、必需品が売っている店があるだけだった。それ以外は個人宅でそれぞれが、何らかの仕事をしているようだ。一応、円状の一画が畑になっているようで、この町は他の町と取引と言うよりかは、自給自足で生活しているようだ。


 そして、彼らが町に入った時には、広場に人が集まっているようだった。円形の広場の中心には誰かがいて、その中心にいる人物を讃えているような騒ぎが聞こえてきた。そこにほとんどの人が集まって騒いでいる中、町に入った世留たちに声をかける女性がいた。


「やぁ、この町に何か用? それともだたの通り道?」


 抑揚が無く、棒読みの言葉。わかり切っていたことだが、歓迎はされていないらしい。世留は通り道だと伝えると、女性は興味なさそうな表情をした。彼の返事に言葉を返すことはなく、話はそれ以上ないと言っているようだ。世留は彼女を気にすることなく、この町に関わるべきでないと思い、町を後にしようとした。しかし、この町を最短で抜けようと思ったら、人が集まっている広場を通らなくてはいけない。遠回りするのも納得がいかず、最終的に広場を通ることにしたのだった。世留が先を歩き、サラがその後ろを付いて行く。広場に入りかかったところで、中心にいた人物が視界にはいった。どこかで見たことがある。忘れていた記憶を思い出した。黒髪で印象に残りにくい顔。それが逆に印象に残っていた。胸には見覚えのあるチェストプレートを着けている。振り上げている剣もおそらく見たことあるものだろう。この旅の最初の方に出会った勇者だ。世留の中には彼の名前はない。名前を聞いた気はするが印象に残らなかったのだろう。そもそも、世留が抱く彼の印象は悪いのだ。


 世留は彼を気にすることなく、広場を横切ろうとした。しかし、今度は勇者が彼を見つけてしまった。広場の中心から跳びあがり、世留に斬りかかる。ジャンプした衝撃が乗っているはずなのに、世留は一つもびくともしなかった。勇者の足が地面に着いたところで、彼は刀を振る力だけで彼を後ろに下がらせた。勇者の足が滑り、土煙が上がった。


「聞いたよ、世留。サラを誑かしているってさ。早くサラを解放してくれないか」


 世留は勇者の言っていることが全く理解できなかった。サラは彼女の意志で自分に勝手についてきているのだ。最初から、そうだ。


 勇者は世留からサラに視線を移して、言い放つ。


「サラ。彼から離れて、僕のところに戻ってきてほしい。君は騙されているんだ」


 もちろん、サラも彼の言っていることが理解できない。彼女は自分が自らの意志で彼に付いてきている。彼は面倒くさそうにしていることもあるくらいだ。それに今の彼女はどうあっても世留と一緒に旅をすると決めているのだ。それを勇者に止めることは出来ない。


 しかし、勇者と言うのは厄介で、彼は一日前に、この町を襲った魔獣数匹を倒して、町の英雄扱いだ。そして、英雄の言うこととただの旅人の言うことなら信じるのは英雄の言葉だろう。そして今、町人たちの冷たい視線が彼らを突き刺していた。世留もサラも気にしていないが、敵意も混じっているところから、あの都の時と同じことになるかもしれないと思った。だから、彼はサラの手を引いて、自分の目の前に移動させ、横抱きで彼女を抱き上げた。そして、空中の空間の隔たりを作り出し、その上に乗る。勇者では届かない距離だ。しかし、勇者の相方は魔法使いであった。そのせいで、空にいても魔法の攻撃が来た。だが、世留はそんな魔法程度で動揺することはなく、壁を作り出して魔法を防ぐ。サラにも魔法が当たらないように壁を作り、その場所から逃げ出そうとした。


「逃げられると思わないでほしいよ。僕だって――」


 勇者が腰を落として、それを伸ばして跳躍した。

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