情報屋
そして、翌日。彼らはソフの案内でギルドに案内されていた。
昨日の夕食後は、特に誰も何も話さずに夕食を食べ終えて、世留が全員分の代金を支払って、店を出た。ソフがお金を持っているのだとしても、幼い見た目の彼女に代金を払わせるというのは中々罪悪感があり、彼が払うことにしたのだ。ソフは世留の申し出を頑なに断ろうとしていたが、店主が払ってもらえと一言言っただけで、彼女は引き下がった。そして、それから店を出て、三人はソフの家に戻った。サラとソフは眠っていたが、世留は窓の外を見て、夜を超えた。この町は夜でもしんと静まり帰ることはなく、どこかで人が騒いでいる声が聞こえてきていた。
「到着。ギルドよ」
見た目は木製でボロボロだ。昨日の夕食を食べた店よりも酷い。塗装されていないからそう思うのかもしれない。片開きの戸を開けて中に入っていく。中も外をあまり変わらない。壁はボロボロで、埃が舞っている。天井を見れば、小さな穴が開いている場所がいくつかある。雨が降れば明らかに雨漏りするだろう。かろうじて、床には壊れている様子はない。ギルド内の大きさは、フェリアのギルドよりは少し広いだろうか。カウンターには一人の男が座っていた。椅子から今にもずり落ちそうな座り方で、足はカウンターに乗せて、居眠りをしているようだった。そして、彼らが入ってきたことに気が付くと、カウンターから足を降ろした。男はぼさぼさの髪に目が飲まれているかのような髪型で、服装もだらしない。汚いというわけではないのだが、着ているワイシャツは上から二つ目のボタンが開いている。とても、カウンターにいるべき人とは思えないだろう。しかし、この町なら仕方がないのかもしれないと思えるのが不思議だった。
「ドット、お客さんよ。情報屋の方」
「あー? ああ、おちびか。ん-、あー、よく寝た……」
ドットと呼ばれた男はソフに気が付くと、大きく伸びをしたのにも関わらず、再び猫背のような姿勢になった。それから、世留の方に顔を向けた。彼をじっと見ているようだが、ドット以外は彼がどこに視線を向けているのかわからない。
「ふぁ~。……んで? 何を知りたいんだ?」
あくびを一つして明らかにやる気がない。世留はこんなやつが出す情報が正しいのかと疑いたくなった。この見た目もだらしない、態度もだらしないとなれば、正しくない情報を売ってお金を払えとか言ってきても不思議ではない。しかし、ソフが紹介した相手でもある。
「起鼓詩、大湖がある方向が知りたい」
「……ああ? 情報屋、舐めてんのか?」
その言葉は世留ではなく、ソフに向けられていた。彼の目が見えないせいで、怒っているのかもわからない。しかし、その言葉を向けられたソフは大して驚いたり、怯んだりしている様子はない。それが日常茶飯事なのかもしれない。
「おい、あんた。地図だ。四百シーカでいい」
彼は一枚のスクロールを投げて、世留が手で受け止められれる位置に投げた。世留はそれを受け取り、カウンターまで移動して代金を置いた。彼は置かれた代金を数えることもせずに適応にカウンターの下の棚に置いた。外からは目に着かないが、中々管理が杜撰だ。
「おい、おちび。こういう客は俺のところじゃなくてもいいんだよ。地図くらい売ってるだろ、どこでも」
「すまない。情報屋、と言ったか」
ドットがソフと話している間に割り込んで、世留はドットに話しかけた。彼が情報屋だというなら、もしかすると彼の復讐相手のことを知っているかもしれないと思ったのだ。それを彼にすぐに説明した。
「黒い化け物ね。怒りと悲しみの妖精か。悪いがここらの地域のことしかわからんからな。俺のところに情報がないんだったら、あんたの故郷がある地域にいる可能性が高いだろうな。少なくともここらの地域には来てないな」
すらすらとはっきり話す彼に少し驚いた。先ほどまで面倒臭そうにしていたはずなのに、そう言う情報だけはてきぱきと話しているのだ。だが、話し終わると彼はすぐに猫背になり、俯いた。そして、再び彼は顔を上げた。
「それだけか? じゃ、俺からもいいか」
ドットは世留から視線を外し、彼の横にいたサラに視線を向けた。先ほど彼は、こういったのだ。ここらの地域で知らない情報はない、と。そして、それはもちろん
聖女と呼ばれる彼女の境遇を知らないというわけではないだろう。そして、あの王のような男が彼女を捕まえ、世留を捕まえたときの報酬の話を知らないはずがないのだ。
「あんた、聖女だな。ファーネランドでは、大変な罪を負ったとか、負わないとか。まぁ、大方そこの男のせいだろうが」
サラはドットの方を見た。世留が刀を出現させた。
「世留のせいではありません。彼は私をいつも助けてくれました。ファーネランドでもそうでした。私は彼のせいで今こうなっているなんて思いません。いえ、違う見方をすればそうかもしれませんね。彼のお陰でこうしていられる、と」
彼女は俯いていた顔は既に真っ直ぐにドットを見ていた。ドットは彼女のその様子に面食らったようにした後、両手を頭の後ろで組んで、体重を椅子の背にかけて、再びカウンターに足を乗せた。
「あっそ。とっとと行けよ。……おちび、こいつらもう連れてくんな。……俺は寝る」
三人は素直にギルドを出ていった。




