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黒い覚悟  作者: ビターグラス
11 さまよい歩いて
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次の町への道へ

 世留が開けて、朝日が昇る。光に晒されて、サラが起きた。彼女が体を起こすと、体に掛けられていた布が落ちる。彼女がそれに気が付いて、それを持ちあげた。それは世留の羽織っていたものだとすぐに気が付いた。そして、視線は世留に向いた。彼は焚火を消していた。そして、彼の視線が彼女に向いた。


「おはよう」


 抑揚もなく、感情もない朝の挨拶だ。笑顔どころか、仏頂面で朝から見たい顔ではないだろう。しかし、サラにとってはそう言うわけではなかったようで、彼女は挨拶を返すだけで精いっぱいで、それ以上は何も言えず、視線を逸らすしかなかった。自身のその変化に戸惑うしかない。だが、それが嫌かと訊かれれば、嫌ではないと答えるだろう。


 彼女はゆったりと起き出すと、彼にお礼を言って羽織っていたものを返した。世留はそれに特に何も言うわけではなく、それを着た。焚火を崩して、燃えていないのを確認してから二人はそこから離れて再び道を歩いていく。




 昨日と変わらない速度で、道を進んでいく。しかし、今日はサラが世留の隣を歩いていた。時折、ちらりと世留の顔に視線をやりながら、たまにサラが喋って歩いていく。


「私たちは、あの二人の元に帰ることが出来るのでしょうか」


 その言葉は不安だからと言ったわけではない。ただ、単純にずっと思っていたことだ。世留と共にいれば、いずれ彼らの元に戻ることが出来るはずだと考えていたのは間違いない。ただ、自分が安心したかっただけかもしれにない。


「帰る。戻れないなんてことはない。それに、俺は復讐を終えるまでは野垂れ時ぬことはないからな」


 彼はそれを当たり前のように言い放つ。サラは彼の言葉を聞いて、少しだけ不安になった。彼がもし復讐を遂げるとき、彼は自身の死と引き換えにでもそれを成し遂げるかもしれないと思った。復讐を終えた後、彼はどうやって生きていくつもりなのか。サラにそれはわからなかった。ただ、彼女の願いは、彼と共にありたいというものだった。既に生まれ育った都には帰ることは出来ない。それなら、彼の復讐が終わった後も一緒にどこかに家を買って住んでも、旅をしてもいい。とにかく、一緒に生きていきたいのだ。もし、一緒にいることを許されるなら、まずは冒険者ギルドに登録して、一緒に仕事ができるようにならないといけないと彼女は将来のことを妄想した。彼と共にあれる未来を考えると、それは幸せな未来だと思ったのだった。




 しばらく歩くと、ぼろいレンガの壁が見えてきた。元は白かったのか、壁には傷と、黒い焦げ跡のようなものがいくつも媚びりついている。さらに風雨に晒され、年月が経ったのか、ひびや汚れがひどい。その壁を見れば、この町には入ろうと思うものはあまりいないだろう。遠くから見えるだけでも、壁の近くに人はいない。町への入り口が彼の居る方向にないのかもしれないが、人が集まる町なら、見える範囲に人が集まっていることだろう。少なくとも、あの町は人が集まる場所ではないのだ。


「いよいよ、ですね。犯罪者の集まる町。噂通りではないといいのですが」


「あの町がどんな町でも寄るぞ」


 世留はその町に何がいようと関係ないと思っていた。邪魔をする奴がいれば、いつものように殺すか、脅すかすればいいだけだ。そう考えていた。


 さらに歩くと、道の真ん中に黒い何かいた。世留には今まで感じたことがないような感覚を感じていた。その感覚はその黒い何かから感じていた。それに近づくように歩いているが、その黒いのも同じ速度で歩いているらしい。つまりは、その黒いのもあの町を目指していることになる。その黒いのは、時折振り返る。その視線が明らかに世留を見ているものだった。世留は相手のその行動に警戒度を高めていく。もしかしたら、あの都からの追手かもしれない。こんな場所で捕まるわけにはいかないのだ。捕まえられれば、サラは確実に処刑されるだろう。世留は彼女をまた救うことは出来るかもしれないが、前と同じようにできるとは思えない。サラに関しては捕まえる前に殺す命令が出ているかもしれないと、今更ながらに思った。処刑するが決まっているのだから、どこで殺しても変わらないはずだ。屍を持っていけば証拠にはなるのだから。


 目の前を行く黒いそれがちらちらと世留を見る度に足を止めるため、徐々に世留との距離が縮まっていく。近づく度に黒いのが振り返る回数も増える。やがて、相手が完全に足を止めて、世留の方に体を向けた。


 髪は黒いが、右耳にかかる髪だけが、白く染まっている。前髪が目を隠しているため、全く見えない。輪郭は丸みをおびている。花や口は小さく、子供のようだ。背丈も世留やサラよりも低く、世留の胸の下あたりまでしかない。しかし、彼女のいでたちはいようだ。頭以外の全てを黒いマントで隠している。そのマントに隙間はなく、中は全く見えない。


 相手の目は見えずとも、明らかに世留と視線が合っていた。

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