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黒い覚悟  作者: ビターグラス
11 さまよい歩いて
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静かな夜

 世留はサラの様子が少し変だということに気が付いていた。元々、一般人からすれば、変人と言う扱いだろうが、それとは別に様子がおかしいということだ。あの都のことがまだ気になっていて、落ち込んでいるとか、そう言った様子でもない。何せ、彼女はいつものように可哀そうな人を探しているかのように辺りを見回していたり、会話の中にも陰りのようなものは見えない。歩いていても、速度が遅くなったり、考え込んでいるという様子もない。しかし、時折、視線をどこかにやっていて、口角を少し上げて微笑んでいたり、自分に視線を向けていたり、といつものような変人さと言うわけでもなさそうなのである。


 そんな彼女に声をかけることもなく、世留はサラが疲れない程度の速度で、彼女の前を歩いている。もちろん、周りの警戒を怠っているわけではない。自身の体力が無くなれば、刀の力でまた魔獣が寄ってくるだろう。魔獣程度ならどうとでもなるが、複数の人間相手だと厳しい場面になる可能性はあるのだ。だからと言って、常に危機感を表に出して、移動するというのは彼女にとっても疲れることだろう。世留は黙々と道なりに進むだけだった。




「サラ。そろそろ暗くなる。休憩にするぞ」


 辺りは夕暮れ。もうすぐ日が沈むだろうという時間になり、二人はそこで夜を過ごすことにした。と言っても、タービュライがいるわけでもないため、特に何か支度をしないといけないというわけでもない。世留は森の中に入り、魔獣を殺して食料にすることにした。動物よりかはおいしくはないが、食べられないというほどでもない。一般的に食されているものでもあるため、サラも世留も魔獣の肉を食べたことがないというわけではなかった。世留は食事をしなくても生きていけるため、そこまで大きな魔獣ではない。見た目はウサギ。印象としてはウサギにしては少し大きいかなと思うくらいのサイズだ。世留はフェリアから動物を食べられるようにする処理の仕方を聞いたことがあったので、それを思い出してその魔獣を処理した。処理してしまえば、もはやそれは肉の塊にしか見えないだろう。焼けば、食べられるだろう。サラの方を見ると既に焚火の用意はできているようで、彼は自身の刀とそこら辺の石を打ち合わせて、着火剤になりそうな草に火花を当てた。何度か試すと、焚火にも火が燃え移り、肉を焼く準備が出来ていた。焚火の上から肉を括り付けた樹の枝をセットして、丸焼きにすることにした。鍋などがないため、他の調理方法が思いつかなかったのだ。サラも特にそれを気にしている様子はない。


 ぱちぱちと焚火から燃えた気が弾ける音がする。焼けている肉の香ばしい匂いがする。世留が超能力を使って、吊るした丸焼きから、肉を削いで食べやすい大きさにカットしたものを、適当な木の枝に突き刺してサラに渡した。彼女はそれを受け取って、世留の方を見た。彼女はその肉が嫌なわけではなく、世留と一緒に食べたいと思った。おいしいと言いあわずとも、一緒に食べることで嬉しいかもしれないと思ったのだ。しかし、それを素直に口にすることが出来ない。彼女は何度か言葉を口から出そうとしたが、それが外に出ることはなかった。どこか気恥ずかしいのだ。その原因は彼女にはわからない。世留も彼女の様子が不思議だった。結局、サラは無言で焼けた肉を黙々と食べていた。


「まだ、食べるか」


「……はい。……その、一緒に、食べませんか」


 そう言えたのは、世留が声をかけてくれたから。返事の勢いに乗せて、溜まっていた言葉を声に出した。世留は口を開けて、何かを言おうとした。だが、彼も木の枝に肉を突き刺して、食べることにしたらしい。彼はなぜ食べているのかわからなかったが、その時だけは食べないという選択肢はなかった。彼女の潤んだ目からは今にも涙が落ちそうで、しかし、悲しいというわけではなさそうで。そんな彼女の言葉を拒否することは出来なかったのだ。世留にとっては、それが不思議だった。


 食事を終えて、残りの肉を刀に吸わせて、後片付けを完了した。彼が片付けている間にも、サラは頭を揺らしていた。満足に食事を出来て、眠くなったのかもしれない。幸い、ここら辺は夜でも寒くはない。焚火もある。


「サラ、眠れ。大丈夫だ。火も魔獣も人も、俺が見張りをするからな」


 そう言うと、サラは何とか睡魔に対抗しようとしていたが、やがて、体を横にして眠った。揺らめく焚火の火が、彼の瞳に映る。静かな、長い夜を、彼は色々な記憶を思い出したり、考え事をしたりして、過ごしていた。

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