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黒い覚悟  作者: ビターグラス
10 イケメン二人と戦闘を
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恐慌のオグリッサ

 ジータルと世留が戦闘を終えて、握手しようと手を伸ばしたその瞬間、世留は殺気に気が付いて、後ろに飛んだ。そして、世留の元居た場所にはオグリッサが髪を揺らしてそこにいた。右手には短剣を逆手に持っていて、明らかに世留を殺そうとした動きだった。


「オ、オグリッサ? どうした?」


 ジータルもその様子に戸惑いを隠せない。そもそも、ジータルとは違い、常に冷静と言ってもいいような人である彼が、取り乱すこと自体珍しいことだ。


「僕たちを騙してたんだよね。どうせ、死霊に食わせる餌だとか思ってたんでしょ。餌としてはちょうどいいからね。模擬戦で疲れ切ったところでその片刃の剣で斬る。ネクロマンサーは血を吸えばいいだけだから」


 ジータルには、彼が何を言っているのかわからなかった。世留は、ネクロマンサーなんて知らない。ネクロマンサーと言う言葉も死霊使いと言う言葉も、彼の居た地域にはないのだ。そもそも、死者の霊を使役する問う発想自体ない。だから、彼は自身のしていることが、何かを怒らせるとは思っていないのだ。


「さぁ、次は使役してる死霊を使うの? なんでもいいや、僕は君を殺すっ!」


 両足で、地面を蹴って飛び跳ね、その先には未だ、戦闘態勢にない世留がいた。彼は相手の短剣を刀で受け止める。それでも、反撃が出来ない。いきなり攻撃され怒りを向けられても、意味が理解できない。ジータルの仲間のようなので、すぐに殺すことが出来ない。しかし、このまま攻撃をいなしたり、躱したりし続けることは出来ない。どこかで、彼を止めるか、殺すかしないと自分が殺されるかもしれないのだ。それだけは、駄目だ。未だ、仇を取っていないのだから。


 世留ははっとしたような気分になった。自分がやらなくては行けないことを思いだした。そう言った気分だ。こんなところで寄り道している場合ではないのだと、どこかの誰かが、彼の心で呟いた。その言葉が、自然に心に響き渡り、そこに染みわたる。それが、彼の表層に表れた。


 彼の周りには黒いもやのようなものが出て、彼の体からそれが離れると、宙に染み込むように消えた。黒い刀が呼応するように、黒いもやを纏い始めた。


「俺の邪魔、するなよ」


「やっと、正体を現したね。ネクロマンサー!」


 オグリッサが狂ったように声を上げる。ジータルはもう、動揺と混乱で動けない。事態を視界に収めているものの、現実を見ていないだろう。


 オグリッサは再び跳びあがり、短剣を世留に当てようとした。しかし、その刃が彼に届くことはなく弾かれた。オグリッサは右手が上に移動したが、左手には水の球が出現していた。それが彼の戦闘スタイルだ。素早い移動でかく乱して、短剣と魔法で戦闘を行う。魔法自体の威力はギリギリ物理干渉を引き起こせる程度で、それを零距離で相手にぶつけるのだ。消費する魔気も少量で済む。短剣と魔法を組み合わせた戦術。そして今、オグリッサの手の中の水球が世留の作った空間の隔たりにぶつけられ、爆発を引き起こした。水蒸気のような煙が出て、一瞬だけ視界が利かなくなる。その一瞬で、オグリッサは突き飛ばされた。彼は地面に足をつけて、土を抉りながら吹っ飛びそうな勢いを殺していた。彼が視線を上げると、彼の居た場所には刀の頭を突き出した彼がいた。彼は刃を振るわず、彼を無力化しようとしていた。


 一瞬だけ、ネクロマンサーの力に飲まれそうになった夜だが、すぐに正気を取り戻していた。そうなった理由は簡単で、遊羽の生前の笑顔と、サラや祷花、タービュライと行動を共にしたことを思いだしたからだ。世留自身が、彼らの笑顔を思い出してしまったのだ。その笑顔を裏切るようなことは出来ない。彼らを脅かすものは何者であろうと殺してやろうと思うが、オグリッサは違う。そして、彼は何となく、その黒いもやが何なのかを理解していた。それは、まさしく死に関するもので、他人の死を黒いもやに変換して、自身の生に供給するというものだった。だから、彼はほとんど疲れることがなかったし、他人に比べて圧倒的な持久力を持っていたのだ。


 それに身をゆだねることが出来るなら、きっと復讐も簡単にできるだろう。だが、それは敵対するもの全てを殺すということだ。他人の死を吸収出来れば強くなるのだから、生き物を殺し続ければ、それだけ強くなることだろう。だが、彼はその復讐でも、元から持っていた優しさを捨てきれていない。だから、サラと共に行動したし、タービュライの護衛の依頼も受けた。祷花の時もそうだ。だから、オグリッサだけを斬り殺すなんてことはしたくないのだ。


「俺は、あんたを殺せない。何があったのか知らないが、気のすむまで戦ってやる」


 彼は黒い刀身の刀を握りなおして、その先をオグリッサに向けてそう言い放った。

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