ようやく一息
「なんだ。本当に俺は必要なかったみたいだな。かなり強いみたいだ」
盾を持っていた男は肩を落として、自分がこの場に来た意味が本当にないことに気が付いて、そう呟いていた。魔獣が倒れたのを確認して、男は盾を地面に降ろした。
「すまん。俺はマジで邪魔しただけだったな」
男は紳士のように、彼に頭を下げた。最初こそむかついたが、よく考えれば、彼は善意で助けようとしてくれたのは間違いないだろうと思い、世留は彼を責める気にはならなかった。サラも無事だし、言うことはない。
「一応、自己紹介するわ。俺はジータル。討伐専門の冒険者。このでかい盾を使って戦ってる。あんたの名前聞いてもいいか?」
快活な笑み。世留は名前を行っても特に悪いことにはならないだろうと思い、彼も名乗ることにした。
「へぇ、ヨルっていうのか。あんまりここらじゃ効かない名前だな。他の地域からきたのか」
「来たくて来たわけじゃないがな」
「なぁ、いきなりで悪いんだが、少し俺と戦ってくれねぇか。あんたの強さを体感してみたいんだ」
彼は後頭部に手をやって苦笑いで、そう提案した。世留にそう言った人たちは今まで、彼の邪魔をするような敵ばかりであったが、彼にはその害を与えるような雰囲気はない。そのせいで、彼の気が緩んでいたのだろう。
「ああ、わかった。ただし、明日だ。サラがもう限界なんだ」
世留がサラに視線をやると、そこには既にしゃがんで目をつむっているサラがいた。もはや、人間が耐えられる限界を超えているのは間違いない。二日間ほぼ睡眠をとらず、休憩もなし。無茶な移動であるのをわかっていたからこそ、彼女を負ぶっていこうとしたが、彼女は自力でここまで来たのだ。こんな状況でも眠ってしまうのは無理もない。世留は疲れ切ってしゃがんでいた彼女をゆっくり立たせて、彼女を抱き上げた。ジータルはあの戦闘を経ても、人一人を抱き上げるだけの体力が残っているのが不思議だったが、あの圧倒的な強さを考えると、そこまで不思議でもないかなと思いなおした。
「ジータル。すまないが、護衛を頼む。この状態じゃ、倒せる魔物も少なくなるから」
頼られたジータルは二つ返事で、世留の頼みを了承した。世留が彼にそう頼んだ理由は、世留たちよりもあの町に詳しそうだったからである。詳しい人がいれば、あの町でも、過ごしやすくなるかもしれない。少なくとも、サラに必要なものを買うのにも彼と繋がることは悪い結果にはならないはずだ。
最後に倒した魔獣たちの体の一部を回収可能な限り持っていく。彼が超能力で斬り倒した魔獣たちはバラバラになりすぎて、体の一部を回収しても、どの魔獣かわからないようなものもある。しかし、一応、魔獣の残骸は回収した。手に持てる量は少数だったが、ジータルが袋を取り出していた。彼はそれに魔獣の一部を次々と入れていく。大体回収し終えると、彼はその袋を世留に渡した。それは見た目以上にものが入る袋だった。ジータルはそれを世留に渡した。彼はジータルからその袋がどういうものか説明されて、彼はお礼を言って、その袋を受け取った。もちろん、仕事が終われば、ジータルにそれを返すつもりだ。魔獣の回収を終えて、彼らはクリーターに戻っていく。
結局、彼らの帰り道には弱い魔獣しか出てこず、ジータルが戦う必要はなかった。彼自身は、その弱い魔獣と戦おうとしていたが、魔獣が彼らに近づくだけで、バラバラになるため、ジータルは最初の頃は怖がっていたが、それが世留の実力だと思うと、怖くはなくなった。怖くはなくなったが、護衛の頼みは意味を成さなくなってしまったことが少し残念だった。
町に入り、ギルドへと移動する。ギルドの中の賑わいは最初に入った時と変わらない。サラを抱いたまま、ギルドで依頼の達成報告をしに来た。その様子に受付の人は焦った様子だったが、抱かれている彼女がぐっすり眠っているだけだとわかると、落ち着いたようだった。それでも、かなり奇異な見た目をしている。女性を横抱きで、ギルドに入ってきているのだ。それでも、世留は気にしていないようで、依頼の報告をするのを待っている。
「えと、クリーター周辺の魔獣討伐ですね。魔獣討伐の証として、魔獣の体の一部を持ってきてもらっていると思うのですが、提出をお願いします」
彼はジータルから借りている袋から、いくつもの魔獣の破片を提出した。全て、違う魔獣の物で、受付の人もその量に動揺していた。しかし、それでもその人は仕事のプロであった。動揺をすぐに隠して、魔獣の一部をじっとみて、それを持っていた紙に魔獣の数を書き込んでいた。
この受付の人は完全鑑定能力を持っている人のみがなる仕事である。完全鑑定能力は超能力の一種ではあるが、この鑑定能力は多くの人が持っている超能力の一つであり、珍しい能力ではない。だが、こういう鑑定能力があるおかげで、冒険者たちは不正することなく、魔獣の討伐により金を稼いで生活できるのである。
「すみません。時間がかかってしまいました」
「いや、これだけあれば仕方ない」
「ありがとうございます。では、さっそく報酬をお支払いします」
彼は袋を渡された。その中には彼が見たことのないお金が入っていた。
「合計で、七万三千シーカです。フラワーコンバートまで討伐されるとは。あの魔獣はこの依頼とは別に、討伐依頼が出ていましたので、そちらも依頼も達成と言うことで報酬金額を追加しておりますので、ご安心ください。それでは、ありがとうございました。次回の依頼も無理なくお願いします」
報酬を受け取り、彼はそのまま、最初に入ろうをした宿を取った。宿を取る前に、部屋を分けようかと思ったが、今持っている金額が、どれだけ持つのかわからない以上、できる限り節約しなければいけないと考えて、彼とサラは同じ部屋になった。それから、サラを清潔な白いシーツのベッドに寝かせた。これでようやく、彼女もゆっくり休めるだろう。




