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黒い覚悟  作者: ビターグラス
9 綺麗な水の都では
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乱入者

 最初の魔獣の攻撃を躱して、彼は魔獣の近くに移動しようとした。世留は、自身に延びてきた舌をすぐには回収することできないだろうと思っていたのだ。しかし、その舌は、伸びきった後にも伸縮して鞭のように辺りの木々をへし折りながら、魔獣の元へと戻っていく。戻る舌の軌道上には、世留がいたが、彼は舌を切り裂くために、刀を構えた。そのまま舌が進んでくれば、向こうの舌が斬れるだろう。世留がそう予想した矢先に、舌が軌道を変えた。途中まで戻ってきていたはずなのに、その舌先が何かを感じたかのように、とある方向を向いた。その先にいたのは、ふらふらのサラだった。彼女は自身が魔獣に見つかっていることに気が付いていない。魔獣の舌がその位置で少し縮んだ。その次に来る行動は予想できる。その伸縮性からして、世留に当てようとした初撃よりかは遅いだろうが、それでも今のサラには魔獣の舌を見切ることは出来ないだろう。だが、世留には動揺している様子はない。それは当たり前だったのかもしれない。今のサラを一人にしておけるはずはなく、彼女の護衛としていつものように遊羽の亡霊をつけていた。だから、焦ることはない。彼女なら護衛を失敗することはないのだから。


 魔獣の舌が一気に伸びた。サラが何かに気が付いた様子だったが、彼女の視線の先にいたのは世留でその奥にいる魔獣には気が付かない。魔獣が大きすぎるのか、彼女が疲れ果てているのか。そして、その舌が彼女に向かって勢いよく伸びていく。遊羽の亡霊が刀を出現させて、サラの周りに斬撃の壁を作り出した。その壁に舌が当たれば、ぐちゃぐちゃになるまで斬れるだろう。しかし、舌がその壁に当たることはなかった。その舌はサラと舌の間に出てきた硬質な何かに当たり、舌が弾かれ、地面に落ちた。虚を突かれたような動きで、のろのろと本体に引き寄せられていく。そして、その舌を弾いたモノは地面に立っていた。それは長方形の何かであったが、それの奥には人がいた。顔しか見えていなかったが、世留が見ても整った顔をしていると感じた。その顔におそらく地毛である金髪が余計に映える。盾で隠れて、世留からは見えないが、全身を包む白い鎧に身を包み、全身を隠している長方形のそれは盾だった。ところどころに傷や汚れがあり、その盾が彼と共に多くの修羅場をくぐってきたのだと伝わる。


「大丈夫か、嬢ちゃん」


 盾の男は、白い歯を見せて、見惚れる笑顔でサラに声をかけた。サラでなければ、すぐにその顔に絆されていたかもしれない。だが、サラは何が起きたのか理解できていないようで、男のことをきょとんした顔で見ていた。それもすぐにやめて、世留の方へと駆けよろうとした。


「サラ。来るな。戦闘中だ」


 サラは彼の落ち着いた言葉を聞いて、それ以上はそこで止まった。サラは世留が強いことを理解しているため、彼が負けるとは思っていない。反対に、弱っている彼女が世留の近くにいたいだけだった。しかし、それを理解していない盾の男はむっとした様子で、世留に近づいていく。


「そんな言い方ないだろ? それどころか、今俺がいなかったら、彼女は死んでいたかもしれないんだぞ?」


 世留の前に立ち、盾の男は彼に詰め寄った。しかし、世留は彼女を守る手段は整えていたし、ぽっと出てきた無関係な男にそう言われる筋合いはない。彼もむっとしたが、今は戦闘中だと意識して、冷静になる。盾の男を無視して、魔獣を殺すことにした。


「おいおい、無視するなよ。忠告だぞ。魔獣なんて――」


 男の言葉の途中で、魔獣の舌が盾の男に向かって伸びていく。盾の男はそれに気が付かない。それもそのはずで、世留ですら速いと感じる速度なのだ。イケメンと言うだけでは、その速度の攻撃に気が付くはずはない。世留は彼を守る必要はないと思ったが、ここで守れば先ほどの注意をそのまま無言で返せると思った。彼は伸びてくる舌を刀を振らずに、空間を斬り離して攻撃を弾いた。弾いた舌は速度が急激に落ちるため、盾の男からすれば、いきなり舌が出現したように見えるだろう。男は言葉を止めて、その攻撃に驚いた。


「な、まさか、いま、攻撃が来てたのか。それをお前が守ったのか……」


 なんとも理解能力が高い男である。一瞬で状況を理解するのは、いくつもの戦いを超えてきたからなのかもしれない。


「すまん。お前を見くびってたな。俺が守らなくても、彼女が死ぬことはないってことか。邪魔したな」


 理解力だけでなく、それに対する反省も早い。自分の非を認めるのもだ。世留は元々彼を責める気はなかったが、先ほどまで感じていた。イライラも少しはなくなった。


「とはいえ、俺も戦闘に参加するぜ」


「いや、もう終わる」


 男が盾を構えて、戦闘に参加しようと意気込んでいる横で、世留は魔獣との距離を詰めた。魔獣の舌は未だ、その口には戻ってきてない。魔獣は世留に向けて、詰めを振ろうとしていたが、行動に入るのが遅すぎた。彼を狙う手は簡単に切り裂かれ、魔獣の長い爪の付いた手が地面に落ちた。手を斬り落とした流れで、相手の口から垂れている舌を切り落とした。斬った部位からは血が溢れだそうとしていたが、血が魔獣の体から出てすぐに、刀に吸収されていく。もはや、魔獣に抵抗する力は残されていない。最後に魔獣は丸くなったが、流れ出る血は止めることは出来ずに、丸まったまま、絶命した。

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