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黒い覚悟  作者: ビターグラス
8 サラの国へと
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追放

 いくら都の中を移動しても、民たちは全く離れる気配はない。この国から出てもついてくるのではないかと思えるほどしつこい。しかし、彼らをまくのはそこまで難しい話ではなかった。都の出入り口を出る前に、都と都の外を斬り離せばいいのだ。遠く離れた場所で超能力を解除すれば、民たちは世留たちを見つけることは出来なくなるだろう。


 世留は都の出入り口が見え始めた辺りで、その出入り口の前と外の空間を斬り離した。そして、斬り離した範囲より高い場所を移動して、都から出ることが出来た。都から出てもしばらくは空を移動した。そして、都から少し離れたところで森の中に降りた。彼女を地面に降ろして、世留は辺りを見回す。その間もサラは、俯いたままちらちらと世留の顔を見ていた。


 それもそのはずで、まさかお姫様だっこされるとは思っていなかったのだ。嬉しくて、恥ずかしい。きっと、自分以外の誰もが気にしていないことだとわかっているのに、とても恥ずかしかった。彼に抱かれた瞬間に、心臓が跳ね上がったのだ。最初はいきなり抱かれたから驚いただけだと思った。だが、動悸は治まらず、今もまだ心臓が高鳴っていた。都でのことはとても悲しくて、ショックで、落ち込んでいたはずなのに、彼の近くにいるだけで、そんなものは嘘だったかのように吹きとんだ。今は、まともに彼の顔を見ることが出来ない。きっと今、彼と視線が合ってしまえば、ここから逃げるか、動けなくなるかのどちらかだ。だから、目を合わせないように、顔を見ないように、顔を俯けるしかないのだ。


「サラ。移動するぞ。……サラ?」


「……は、はい。い、移動します」


 世留は彼女の様子が何かおかしいのはわかっていたが、踏み込むことはしなかった。都で起きたことは彼女にとっては、すぐに立ち直れるようなことではないのかもしれない。世留は、自分にはその悲しみは測れないだろうと考えて、どんな言葉も今は意味がないのかもしれないと思って、彼は無理に慰めや心配をすることはなかった。


 二人は森の中をゆっくりと移動する。都の出入り口は塞いだが、あの場所だけだ。もちろん、あの場所だけだ都に出入りする場所ではないだろう。今は既に、他の門から出て、自分たちを探してるのかもしれない。そう考えると、森を切り開いて作った道に出ると見つかる可能性が出てくる。だから、できるだけ森の中にいたいとは思ってはいるが、森から出ないと近くの町や他の都がどこにあるのかもわからないのだ。サラの方がここら辺の地域のことはわかるだろうが、森の中ではその方向もわからないだろう。世留は、リスクがあっても、道に出ることに決めた。だが、この場所からすぐに出るわけではない。少し移動しなければ、わざわざ森の中に隠れた意味がなくなるだろう。


 世留を先頭に、草をかき分けて先に進む。サラは彼の大きな背中に触れない程度に近づいて、彼の後ろを付いていった。そして、どれだけ進んだかはわからないが、そこそこ進んだところでその場所から見えるあぜ道の方に出た。


「サラ。ここらへんで情報を集めて、起鼓詩おこしに戻ることができそうな町はないか」


「そうですねー。クリーターと言う町なら、ギルドもありますから、情報は集めやすいと思います。それに、私が起鼓詩の方に向かおうとしたときもこの町を通りましたよ」


 そこでようやく、世留はサラが勇者たちと起鼓詩の方、つまりは自分が住んでいた地域に来ていたことを思いだした。サラがその道のりを覚えているかは、普段の行動からすると怪しいものだが、今頼れるのは彼女だけだった。


「サラ。起鼓詩の辺りに行く道のりを覚えているか。覚えているなら、その道を辿れば、起鼓詩に戻れるのだが」


「少しは覚えていますが、勇者様はよく寄り道をしていましたから、最短の道はわかりません。でも、きっと次の町では地図が売っているはずです。それを買いましょう?」


 サラの提案はかなり正しいもので、普段の彼女とはかけ離れてしっかりしていた。もしかすると、あの都で起きたことは彼女を少しは成長させる出来事だったのかもしれない。


 その後、サラ曰く、都からクリーターまでは、馬車を走らせて三日ほどだと言っていた。もちろん、世留は動くことが出来ないというのは、この地域でも同じだ。世留の出身地域ほど、魔獣は多くない印象だが、いないわけではない。世留はこの数よりも多くなると考えれば、おとなしく道の真ん中で休むのが良いだろう。しかし、世留には睡眠は必要がない。サラをおんぶして移動すれば、彼女を休ませることもできるだろう。できるだけ早く戻りたいのだ。それは復讐の為でもあったが、タービュライと祷花が心配なのだ。タービュライは自身のことは自分でできる人ではあるが、あの場所もずっと安全とは限らない。祷花に至っては、未だ全てのことを自身でできるわけでない。何かトラブルが起きても、一人で対処できるとは思えない。


 結局、彼は休まず、道を歩いていく。そうすると、一日とかからず、どこかの町を見つけることが出来た。サラがその町をクリーターだと教えた。思ったよりも都から離れていたのかもしれない。とにかく、世留はより素早く足を動かして、クリーターに向かった。

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