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黒い覚悟  作者: ビターグラス
8 サラの国へと
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王の諦め

「おや、そなたがサラと共に旅をしているという者らしいな。なんとも汚らわしい者を従えているようだが」


 実際に国王が何かが見えているわけではない。死霊が見える人物からそう言われただけだ。それを簡単に信じられるほど、この国ではネクロマンサーが悪い意味で信じられているのだ。そして、国王がそう言うということは民たちもそれを信じてしまう。世留から距離を取った人たちがさらに離れて、彼を囲む人の円は広がった。そして、その輪の中から、騎士が何名も出てきた。騎士たちは世留の行動に注視しながら、世留に近づき、騎士たちが作る円を縮めていく。


「そなたのようなものが、この国の事情に意見するなど、許されることではないのだ。サラの処罰は既に決まっている。そなたが反対しようとも、この判断は覆ることはない」


 国王は冷たく鋭い視線を世留に向けていた。しかし、怒っているわけではなく、あくまで、その声には冷酷さがあるだけだった。そして、国王は右手を彼のいる方に向けて、騎士に命令する。


「勇敢なる騎士たちよ、邪悪なるネクロマンサーを殺せ。殺した者には、栄誉と富を与えよう」


 声を荒げることなく、静かに騎士たちに言い渡す。それだけで、騎士たちからやる気を感じた。騎士たちも声を荒げて、気合を入れることはなかった。しかし、彼らから感じる殺気は出てきた時とは比べものにならない程だ。それを受けてもどうともしてない世留もおかしいとは思う。訓練され、筋肉の付いた騎士たちに囲まれて、殺気を浴びせられれば、恐怖を感じるだろうが、彼にはそれを感じることはなかった。そして、彼の手にはいつの間に黒い刀が握られていた。騎士もいつそれを出したのかは分からなかったが、その刀に当たることだけは避けなければいけないというは理解できた。


「抵抗するというのなら、この者を私自身が死刑を執行する。意味は分かるな」


 国王は、態度を変えず、ただただ冷たく、そう言った。世留が抵抗したせいで、彼女が殺されるなら、多少は国王が責められるかもしれないが、一番は世留のせいになるだろう。それを考えてのことだ。しかし、国王は世留の強さを見誤っていた。


「勝手にすればいい。だが、あんたはサラには触れられない」


「ほう。騎士よ、剣を渡しなさい」


 国王は近くにいた騎士から、剣身が長方形の剣を受け取る。死刑を執行するための神聖な剣だ。国王は受け取った剣を振り上げた。


「触れることが出来ないと言ったのは、あのネクロマンサーだ。死して恨むならあのネクロマンサーを恨むのだな」


 国王は執行者の剣をサラの首目掛けて振り下ろした。しかし、その剣はサラの首に当たる前に何かによって阻まれた。国王の近くにいた騎士たちは腰に帯剣していた剣を引き抜いて、サラに剣先を向けた。サラは、世留を信じ切っていたのか、ただ歯の浮出来なかっただけなのか、全く動じた様子はなかった。


「くっ。なんだというのだ。サラ、そなたが何かしたわけではあるまいな」


 サラはそれに声たる気はなかった。だから、彼女は俯いて国王のことを無視した。それが国王の神経を逆なでした。落ち着いているように見えるが、国王の体からは怒りを感じた。


「仕方ない。そなたたち二人を反逆罪とする。二人を死刑とし、殺した者に、富と栄誉を与えよう。騎士だけでなく、勇敢な民たちの活躍を待っている」


 そこにいた民たちは、異常なまでに叫び声をあげて、そこにいた全ての民たちが世留を狙う。世留は全員を殺してもいいだろうかと頭をよぎったが、それはさすがにまずいとその気を抑えた。それより先にやることがある。こんな者たちの相手をしている場合ではないのだ。彼はその場からジャンプして、空中に切り裂いた空間でできた足場を作り、宙を渡っていく。その下に群がる騎士や民たちは怖いくらいにひしめき合っていた。その光景に、さすがの世留もおぞましいものを感じた。


 宙を渡って、国王がいるバルコニーに降り立つ。そして、サラの前に立った。


「そなたは本当に、しつこいな。あの場で殺されていれば苦しい思いなどしなくて済んだというのに」


「あんたがどれだけ邪魔しようと、俺には関係ない。サラは連れていくことにした」


「そうか。では、行くと言い。私はこれ以上は何も言わん。騎士と民の包囲網から出られるものなら出るがいい」


 国王はそう言うと、バルコニーから建物の中に入っていった。二人の騎士は、サラと世留を狙っているようで、国王には付いて行かなかった。王の護衛が仕事なのではないのかと、世留は悠長なことを考えていた。


「貴様ら、我らの王を侮辱した罪、死を持って償ってもらうぞ」


 騎士の一人が、低い声で彼らにそう言った。騎士、二人くらいなら殺してもいいかもしれないと思ったが、サラの国で殺しはあまりしたくはない。彼はこの国にいる間は殺しを行わないことを決めた。そして、サラを横抱き、つまりはお姫様抱っこで持ち上げて、バルコニーから出た。先ほどと同じように、宙を移動して、民たちの頭の上を移動していく。

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