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黒い覚悟  作者: ビターグラス
8 サラの国へと
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王の言葉

 王座に座る国王はピンと張り詰めたような空気を纏っていた。目の前に来たサラに鋭い視線をやった。彼は目の前にいる人物を確認すると、扉の前にいたシスターに視線を送る。シスターはその視線を受けて、部屋から出ていった。その後、重厚な音と共に扉が閉まった。


「ご苦労。立って良いぞ」


 サラは言われるままに、立ち上がる。そして、彼の言葉を待つ。自由人のサラでも、王の前で無用な口を開くことはなかった。


「勇者との旅はどうであっただろうか。話してよいぞ」


「はい。勇者様は道中沢山の人を救っておりました。しかし、その中でも、彼の思う正義を成そうとして、多くの人を傷つけております。そのため、私は今、勇者様とは旅をしておりません。他の者と共にあります」


「そうか。それは私の命令に背くほどのことなのだろうか。そなたが少し我慢するとか、勇者を止めるとかすればよかったのではないか」


 鋭い眼光が彼女の瞳にも映った。国王の言うことが正しいかはどうかに関わらず、彼の言っていることが正しいのだろうと思い込んでしまうほどだ。


「そ、それはそうかもしれません。しかし、」


「いや、もうよい。反逆罪とはしないが、そなたはもう旅をする必要はない。再び、この国で傷ついた民を癒せ。以上だ。出ていってよい」


 彼女の言葉を遮り、もう話すことはないと言って、彼女を部屋から出そうとした。いや、国王がそう言った瞬間、近くにいた兵士が彼女を出口に誘導していく。しかし、彼女はそれに抵抗して、国王に向かって言葉を投げた。


「そ、そんな、私はまだ、旅をしたいのです。陛下、お願いします!」


 しかし、その声が彼の心に届くことなど無い。それどころか、彼の耳に入らない方が良かっただろう。


「今、許可なく、発言をしたな。ふむ。惜しい人材を失くすことになりそうだ」


「っ!」


 意図的に彼女に届くように、国王はそう言い放った。まるで他人事のようだが、確実にサラを標的にした言葉だ。そこにいた騎士たちは表情を変えず、サラを扉の外に無理やり連れいった。騎士たちも国王に反することは愚か者のすることだと、理解しているのだ。


 国王はそう言ったが、彼女がどうしようと、彼女に罪を与えようとしていたのは確かだった。勇者から離れて、近づいた人、つまりは世留の近くにいたのが悪かった。彼は遊羽の亡霊を従えている。この国では死霊の類を連れている者は、ネクロマンサーと呼ばれていて、不吉の象徴の一つとして認識されている。そんな不吉の象徴と一緒にいることは、どれだけの悪影響を受けているのかわからない。そんな人物をこの国においておけば、その悪影響が他の者にもうつるかもしれない。ましてや、彼女は聖女と民たちから慕われているような人物で影響力が強いのは間違いない。彼女を処刑すれば、民たちからの反感を受けるかもしれないが、それはいつものように、裏から手を入れれば元の状態に戻すことは難しくない。国王は、サラをどう処理するか、処理した後の民たちの対策を考えていた。




 王の間の前には、彼女を連れてきたシスターがいた。サラが肩を落として、落ち込んでいるようだったが、シスターは何があったのかわからないため、何も声を掛けられない。サラをこの場においておくこともできないため、彼女はサラに肩を無理やり貸して、無理やり歩かせた。彼女を連れて元のベッドの並ぶ部屋に戻ってきた。彼女をベッドに座らせると彼女は顔を上げて、シスターを見た。外からは彼女の顔を見ることは出来ないが、シスターからは外の景色を見ることは出来る。そのはずなのに、サラと目が合っているような感覚があった。彼女は焦ったように、彼女に訊いた。


「世留さんは、どこに居ますか。まだ、宿にいるでしょうか」


「その方でしたら、今は取調室に一人で待たせてあります。王命でしたので……」


 バツが悪そうにシスターは小さな声で彼女に伝えた。至近距離で、二人しかいない部屋の中、小さな声でも彼女に聞こえないわけがない。彼女はそれを聞いた瞬間に、ベッドから立ち上がった。それからその部屋の扉に向かおうとしているのをシスターが慌てて止めた。彼女がどこへ行こうとしているのか、すぐに分かったからだ。


「駄目ですよ。今、彼の元に行けば、貴方は確実に反逆罪で処刑されます。聖女様がそんなことになれば、民たちは黙っていませんよ。貴女は自由人ですが、多くの人を癒してきた聖女なのですから」


 さすがのサラもそう言われては、無理にこの部屋を出て、世留の無事を確認するわけにはいかない。いや、世留の無事を確認したいというよりは、彼に助けを求めたいのだ。彼女は気が付いていないが、世留の存在は今や、彼女の心の中では大きなものになっていた。

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