王の間
通された部屋は、真っ白の部屋で、窓のなく小さな部屋だった。その部屋には椅子が二脚と机が一台あるだけだ。椅子は机を挟んで一脚ずつある。何か嫌な予感がするような場所だ。しかし、世留は抵抗することもなく素直にその場所に入った。
「このような場所しか用意できず、申し訳ありません。しばらく、ここでお待ちください。先ほどと同じように、この部屋から出るようなことが無いようにお願いします。出てしまった場合は、こちらも強硬手段に出ることをご了承ください」
そう言ってシスターはその部屋の扉を閉めて出ていった。
シスターはこの国の王に命令されて、世留をその場所に連れて行っただけだ。彼を案内した場所は、この国の法を犯した疑いのある者やそれに関係する人の事情聴取をする場所だ。窓もなく、長時間あの部屋にいるとストレスとなり、自白しやすくなるような部屋だ。たとえ、犯人でなくとも、ストレスで暴力的な態度に出れば、その人を人を傷つけたとして、罪人として捌くことも多々あるという場所でもある。そのことをシスターは知っているが、その理不尽に意見するだけで反逆の意志ありとされてしまうのだ。死刑ではないにしろ、一週間何もない部屋で過ごすのは、苦痛であった。
世留を閉じ込めたシスターは彼がいた部屋に戻ってきた。つまりは、サラが眠っている部屋だ。国王は彼女が目覚めたら、王の間に案内するように言いつけてあった。シスターがサラのいる部屋に入ると、サラはまだ眠ったままだった。彼女はそのことに安堵している自分に気が付いた。彼女の超能力は目印をつけた人物の近くに距離を関係なく移動できるというものであるが、サラを王の間に連れていくと何か、悪いことが起こるような予感がしてならなかった。勇者と一緒にこの国を出たのに、近くに勇者がいなかったことも気にかかる。もし、彼女の意志で勇者のパーティーから抜けたのだとしたら、王の命令に背いたことになる。簡単に言えば、反逆罪に当たる可能性があるのだ。しかし、彼女はサラを王の間に連れていなかければ、彼女が反逆罪になってしまう。誰もが仕方ないというような事情がない限り、王の命令は絶対なのだ。
しばらくして、サラが目を覚ました。彼女がゆっくりと体を起こして、自身の体を確認した。傷が完全に塞がっているところを見て、誰かに治癒されたことを理解した。体の中にある他人の魔気を自身の魔気を操作して体外へと排出した。それから、自分がいる部屋を見回す。何度も見たことがある部屋だ。患者としてではなく、治癒師としてだが。この部屋で沢山の人を治癒したことがあるのだ。彼女はすぐ横に座っている白いシスターに気が付いた。顔が見えないため、彼女が誰なのかはわからないが、自分が目覚めるのを待っていたのだと、勝手に考えた。彼女はまだ少しだけ重い体を起こした。シスターが彼女の目が覚めたことに気が付いたようだ。
「あ、お目覚めになりましたか。サラ様」
シスターの声を聞いたが、彼女の声には聞き覚えはない。
「起きてすぐで申し訳ないのですが、国王陛下がお呼びです。移動できるようでしたら、王の間へと連れていかせていただきたいのですが」
「わかりました。行きましょう」
彼女はベットから降りて、地面に足をつけて立ったが少しふらついた。それをシスターが慌てて支える。
「私から言っておいて、失礼かもしれませんが、まだお休みになられていた方が良いのではありませんか」
「大丈夫です。行きましょう。国王陛下がお呼びなのでしょう。私も報告したいことがありますから」
「そ、そうですか。それでは、行きましょう」
シスターはふらつくサラを支えて、二人はその部屋を出た。
彼女たちがいた部屋から王の間までは少し離れている。彼女たちがいたのが一階であり、王の間は三階だ。階段を上がればすぐなのだが、今のサラには階段は少しきつかった。それでも彼女はゆっくりと階段を上がっていく。彼女の傷は塞がったものの、治癒で使用した魔気は完全には戻ってきてはいないし、体力も戻ってはいない。それでも彼女が鶏鳴に王の間を目指した。
ようやく王の間の前について、部屋の前にいる兵士に中に通すようにいうと、兵士は無言で部屋の扉を開いて、彼女たちを中へと入れた。
王の間の中は目に痛いほど白を基調とした部屋だった。窓は大きく、天井を支える柱には、盾と剣が飾られている。床には縁が金色の赤いカーペットが王座の前まで敷かれている。王座の周りには騎士の鎧が二組飾られていて、王の前には兵士が五人ほどいる。カーペットの外側には騎士が左右それぞれで五人ほど並んでいて、入ってきた二人を見つめている。サラはその部屋に入る前に、衣服を整えた。支えになっていたシスターから体を離して、自立する。彼女は堂々と扉を入り、国王の前で跪いた。




