どこかの部屋
戦闘は終わったが、祷花は気絶したままであり、サラに至っては未だに傷口がふさがっておらず、息も荒い。彼女は治癒師だが、自分にはその魔法を使うことは出来ないのだ。タービュライの姿も見えず、世留にはどうすることもできない。彼は斬り離したり、切り裂いたりすることは出来るが、開いたものを閉じることは出来ないのだ。彼がどうすることもできずに、ただ突っ立っていると、サラの近くに青い光が出現した。それは楕円の形に大きくなっていく。その円は青い光で満たされていて、奥を透かして見ることもできない。その楕円の中から、女性が一人出てきた。全身白い衣服で長袖で足まで隠すロングスカートだ。頭に付けているのはシスターが付けるような、修道服とセットになっているような帽子でそれと違う点と言えば、顔自体も帽子についている白い布で覆われているということだろう。その女性は、サラを見ると、彼女の近くにしゃがみこみ、掌を彼女の肩の辺りに当てた。それから、サラの体がほのかに輝いた。
「勇者様がいないようですが、今の彼女の仲間は貴方ですか」
仲間と言うほどの絆はないと世留は思ったが、相手の様子がこのままサラをどこかに連れていこうとしているように見えた。一緒に行く必要はないのだろうが、彼女とこのまま離れて、彼女の容体がわからないままと言うのは、納得が出来ない。ましてや、別れの挨拶もしてないのだ。少なくともタービュライには挨拶をするべきだろう。それ以外にもいくつか言い訳を頭の中で用意して、ようやく彼は相手の言葉に返事した。
「ああ。不意を打たれてナイフで刺されたんだ。すまない」
「いえ、冒険をしていればこういうこともあるだろうと、教会長はおっしゃっておられましたから。サラ様がピンチになれば、助けられるように準備していただけですので。それはともかく、貴女も一緒に来られますか」
世留は頷くだけで返事した。白いシスターはサラを抱いて、青い楕円の中に入っていくと入っていく場所から消えていく。彼女は世留に視線でこっちに来るように言っていたため、世留も彼女に続いて青い楕円の中に入った。
「まって、ください……」
青い楕円が小さくなっていくのを、気絶から目を覚ました祷花が見ていた。二人がどこかに連れ去られた。世留がいれば大丈夫だろうが、心配してしまうのは仕方がないことだろう。彼女はその楕円に触れようと手を伸ばしたが、全身を掛ける強烈な痛みが、彼女が立ち上がるのを拒み、腕も限界までは伸ばせない。悔しいが、今の彼女にはどうしようもなく、消えていく楕円を見つめるしかなかった。
楕円の先にはレンガで作られた部屋があった。暖炉があり、ベットが何台か並んでいる。サラはそのベットに寝かせられていた。体の傷は未だに癒えてはおらず、すぐに彼女の周りに白い服のシスターのような人たちが集まって、彼女を治癒しているようだった。
「サラ様が目覚めるまで、貴方にはここにいていただきます。申し訳ありませんが、国王陛下が判断なさるまで、この部屋から出ることを禁止させていただきます」
丁寧な言葉遣いだが、そこに彼女の気遣いは感じない。用意されて暗記した台詞を話しているだけと言ったように感じる。だが、ここで反抗しても意味がないどころか、サラの治療が留められるかもしれないと思い、世留は素直に彼女の言うことに従うことにした。
しばらくすると、サラの周りから人が少なくなっていき、最後の一人もサラの近くから避けた。彼女の治癒に当たっていた内の一人が世留に終わったと告げた。つまりは、後は安静にしておけば、いずれ治るということだった。サラの顔を見ても、苦痛に苦しんでいるようには見えない。安らかな表情で正しく整った呼吸をしていた。世留もそれを確認して安心した。
彼女を心配しなくていいとなると、この場所がどこなのか気になるところだ。少なくとも、自分がいた町ではないことくらいはわかるが、外に出られない以上それ以上の情報はあまりない。この場所が、患者の治療をする場所であることくらいだろうか。そうは言っても、薬品などはおいていないようで、何かの事件で使うのか、ただの観葉植物なのかわからない鉢植えが、部屋の中に幾つかあった。
さらにしばらく待つと、白いシスターが一人入ってきた。顔が見得ないため、先ほどここに一緒に来た人なのかはわからない。彼女は世留を手招きするような動作で呼んだ。部屋の外に出れば、そこはレンガ調ではなく、白く清潔な壁で床にはふかふかのレッドカーペットが敷かれている。シスターが世留をどこかに案内した。




