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黒い覚悟  作者: ビターグラス
7 賑わう町で
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真深佳との別れ

「あなたを利用してしまって、ごめんなさい。どうしても、この子を助けたかったんです。私一人ではどうしようもなくて。強い人に力を貸してほしかったんです」


 日は落ちて、外は暗い。街行く人々は少なくなった。町の広場で二人は別れようとしていた。世留は変わらず仏頂面だが、彼女に対して怒っているわけではない。彼女は自身の後ろめたさをどうにかするためにそう言っているだけだ。彼女はそれを自覚しながらも、どうしても言い訳が口から出ていってしまう。


「その、私もこの子も助けてくれてありがとうございました。本当に、ありがとうございました……。これ、お礼です。不躾ですみません」


 彼女は金の入った袋を彼に差し出した。彼はそれを見て、袋を彼女に押し戻した。


「必要ない。じゃあ」


 世留はそれだけ言い残して、その場を去った。今の彼は誰かに感謝されることから逃げていた。復讐するという目的のためには、こんな甘さを捨てなくては行けない。でも、放っておくことが出来ない。結局、自分がどうしたいのかと言うことは全く決められない。助けずに進みたいが、そうすることが出来ない。人を助けることに時間を割けば、遊羽のための復讐をないがしろにしている気もしてしまう。彼女のためにと始めたのにも関わらず、それを放置して他の人を助けている。結局、彼の方針は定まっていないのだ。手がかりを探すと言っても、そこまで懸命にそれを探しているわけではないのだ。だから、彼は誰かに感謝されて、その行動を肯定されたくない。彼はそれを遊羽のことをないがしろにしていると突きつけられているような感覚があった。


 まとまらない思考を抑えられないまま、彼は宿屋に戻った。入り口にはサラと祷花がいた。世留に気が付くと、手を振っていた。その和気藹々とした様子は、一瞬で凍り付いた。


「これが、お前の、仲間。殺してやる」


 サラの腹にナイフが突き刺さっている。その凶器の持ち主は全身マントで覆われていた。今日戦ったあの全身マントだった。それはサラの後ろに移動していた。ナイフを抜いて、サラを突き飛ばした。いきなりのことにサラは状況を認識できていない。熱を持つ腹を触って、ぬめっとした感触がした。その嫌な感触は知っている。見なくても、それが血だということを理解した。そのとたんに、傷口に痛烈な痛みが走る。思わず、口から声が漏れるほどに。


 マントはサラを突き飛ばした後、横にいた祷花にサラの血が付いたナイフで斬ろうとしていたが、祷花にはナイフが効かなかった。彼女は既に神の力を借りて、自身を守っていた。世留は祷花を心配する必要がないとわかり、いつの間にかその手に握られていた黒い彼方をマントに向けた。しかし、敵はマントだけではなかった。


「くっ。がはっ」


 祷花が何かに吹き飛ばされて、厩舎に叩きつけられていた。いくら神の力を借りていても、衝撃全てから守ることができるわけではなかったのだ。祷花は地面に落ちると、がくりと俯いて、そのまま地面に倒れた。それから動く様子はないが、死んでいるわけではなさそうだった。そして、彼女を吹っ飛ばしたのはスキンヘッドで剛腕を持つ男だった。


「よく、やった。こいつら、殺して、リーダー、仇とる」


 マントは姿を消した。スキンヘッドの男は真っ直ぐに世留に向かっていく。しかし、先ほど戦った時とは世留のコンディションが全く違う。さらに相手はたったの二人で、真深佳を守る必要もないため、遊羽の亡霊も動くことが出来る。負ける要素は、いや、苦戦する要素がない。


 スキンヘッドの男の腕が世留に迫る。しかし、その攻撃が彼に当たることはなく、その腕が男の体から離れて、跳んでいく。男は痛がる素振りもなく、もう片方の腕を彼にぶつけようとしたが、その腕も同じ運命を辿ってしまった。両腕を失っても男の行動は止まらない。拳が無ければ、蹴りがあると言わんばかりに足を突き出してくる。四肢を切り落として、生かしておくというのは中々酷なことだと思い、世留は男の胴を横一文字に切り裂いた。胴は異常に発達した筋肉で綺麗に斬ることが出来ない。腹の半分ほどまで深い切り傷が出来て、そこから血と内臓が出てきた。それでも男は倒れることはなかった。しかし、両腕と腹から大量の血を出して、生きていられるはずもなく、立ったまま倒れることなく男は絶命した。それを見届けている間に、マントの敵が世留の背中に周り、サラの血が付いたナイフを世留に突き出した。


 マントは、世留が油断するのを待っていたのだ。スキンヘッドを倒したその瞬間には少しは油断するだろう。その隙を狙おうと考えて、今、このタイミングで飛び出したのだ。しかし、そのナイフが彼に突き刺さることはなかった。ナイフは簡単に防がれ、そのナイフを持っていた手はその場にポトリと落ちた。もう一本を使おうとしても、その感触がない。ナイフの感触ではなく、手の存在を感じないのだ。両手から出る血が、相手のマントを赤く染めた。だが、マントは地面に溶けるように消えた。世留は再び、どこかから攻撃が来るのかと思ったのだが、攻撃は来なかった。それから、辺りを警戒しつつ、待っていたが結局マントが現れることはなかった。彼が振り返ると、スキンヘッドの死体もそこにはなくなっていた。きっとマントが回収したのだろうと、結論付けて、戦闘は終わった。

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