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黒い覚悟  作者: ビターグラス
7 賑わう町で
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活躍は影の中に

 自由になった少女に後ろでバラバラになっている男の死体を見せないように真深佳の方へと歩かせた。少女は背中を押されて、背中を押した世留の顔を見上げた。無表情で、見た目だけで言えば、そこに優しさは見えないだろう。しかし、少女は自身を助けてくれたというだけではなく、彼の顔や背中に触れる手に温かさと優しさを感じていた。


 少女を真深佳に預けて、遊羽の亡霊に二人を守らせる。リーダーを失った四人は、その事実を受け入れることが出来ないようで、その場に茫然と立っている。世留は彼らに近づいた。


「おい、まだいるんだろ。あんたたちの拠点に案内しろ」


「ああ、わかった。その代わり、俺は殺さないでくれないか」


 リーダーの死に何も思っていないかのように、魔法使いの男は、世留の言葉にすぐに返事をした。弓使いも男の言葉を聞いて、現実に目を向ける。


「あたしもそれで頼む」


 スキンヘッドの男は動かず、マントはバラバラの死体の一部を持ってそれを抱きしめていた。これ以上、自分の邪魔をしないのがわかれば、そいつらの相手を必要はないだろう。彼は二人を放っておいて、魔法使いと弓使いに彼らの拠点に案内させた。




 拠点は発見しにくい場所にあるというわけではなかった。見た目は宿屋で、その奥の部屋に地下へと続く人一人が入れるような扉があった。そこから降りていくと、宿屋よりも少しだけ煌びやかな装飾がされた部屋が出てきた。その部屋からさらに奥の部屋に続く扉がある。世留を案内する二人は躊躇することなく、その扉を開けて中へと進んでいく。世留と真深佳、助けた少女は二人についていく。真深佳はこれが罠かもしれないと考えていた。彼女は少女と手を繋いで、気を張って周りから攻撃が来ないか注意している。世留はこの施設の中には人の気配がしないところから、罠の可能性は低いと考えていた。たとえ、罠だとしても今のほぼ体力が回復した状態ならどんな攻撃からも全員を守ることは簡単だろう。


 しばらく施設内を歩き、いくつかの扉といくつかの怪談を通って、地下に降りてきた。そこにはいくつもの鉄の扉が並んできた。その鉄の扉からはすすり泣くような声が聞こえてくる。その声は女性や子供のような声だった。世留は迷わず、その扉を斬っていく。中にいる人に攻撃が及ばないように鉄の扉のみを、粉々になるまで斬りさいた。超能力を連続で使用したせいで、少し疲労が溜まったが、先ほどの戦闘ほどではない。鉄の扉から出てきたのは子供がほとんどだった。何名かは大人の女性がいたが、子供たちに比べてやつれていた。子供に比べて労働などで強制的に働かせていたのかもしれない。改めて、この組織のやっていることを許さないと思ったが、既にボスらしき人物は粉々に切り裂いて殺しているのだ。もう、誰にもその怒りをぶつけることは出来ない。もっと残酷に殺せばよかったと後悔するがももう無駄なことなのだ。


 とにかく、囚われていた人々を次々と助けていく。最初の廊下以外にも囚われている人は多くいて、その人達も全員残らず助けた。世留を案内していた二人は施設の隅から隅まで案内した。そして、囚われている人がいる最後のエリアの奥には一人の女性が腕を鉄の輪で止められて、壁に吊るされているのを発見した。彼女は既に弱っていて、呼吸も浅く、すぐにでも力尽きそうな様子だった。世留は鉄の輪を斬り離して、腕の拘束を解いた。そのまま前に崩れそうになるのを受け止めようとしたが、世留を案内していた二人が受け止めた。


「あ、ありが、とう」


 囚われいた女性はかすれた声でお礼を言うと、気絶してしまった。


「剣士さん。ありがとう……っ」


 弓使いの女が世留の手をぎゅっと握って、涙を流してお礼を言っていた。魔法使いの彼は、額に汗しながら弱っている女性の治療をしていた。


 世留は二人が無理やり、戦わされていたのだと知る。あの場で殺さなくてよかったと思えるほどに弓使いは泣いていた。


 しばらくすると、弱っていた女性の呼吸は正常になっていた。魔法使いはその場に座りこむほど、安堵しているようだった。それから、顔だけを世留に向けて、疲れた笑みを浮かべ、涙を目に溜めながら、ありがとうとだけ言った。


 こうして、この町の巣食っていた一番大きな悪は滅びた。救われた人々は弓使いと魔法使いの二人に誘導されて、地上に戻っていく。最初は、またリーダーに何かしろと言われるかもしれないとびくびくしていた囚われていた人々も地上に出て、安全だとわかると、天を仰いで指を組んで涙を流していたり、ただただ地面に手を付いて泣いている者もいた。彼らは自分たちを救ってくれた人にお礼を言おうとしたが、既に世留の姿はなかった。弓使いも魔法使いも、彼が去っていく姿は見ていない。




「世留さん。良いんですか。何も言わないで」


「ああ、あれでいいんだ。俺は英雄になれるほど立派じゃない」


「それでも、あの達が救われたというのは本当のことですよ」


 真深佳に真っ直ぐな目で見つめられて、それ以上は何も言葉にならず、返事は出来なかった。彼は、真深佳の目から視線を逸らして黙った。

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