VS五人
理由はわからないが、土壁が消失して、世留は土壁から解放された。すぐに、彼は移動する。今度は自身の周りの空間を斬り離して、二度バックステップした。その先にはマントがいたが、マントのナイフは彼には届かない。攻撃が当たらなければ、すぐに離脱する立ち回りは潔い。世留はマントを気にすることなく、ジャンプした。足元の空間を斬り離して、それを足場にして空に登っていく。屋根の上には五人の魔法使いと、五人の弓使いがいた。先ほどの土壁はこの魔法使いの内の誰かの仕業だろう。世留は空中に立ちながら、再び見えない刃をその場で伸ばして、その場にい回転した。攻撃の届かないところで一回転するという奇妙な姿に見えた相手は、その場から動かない。弓使いの一人が、魔法使い一人を連れて屋根から降りていった。その頭の上を見えない刃が通り過ぎる。そこに少し残った髪の毛が斬り、弓使いと共に落ちていく。弓使いは振り返ることなく、壁を使って器用に勢いを殺して地面に降りた。それ以外の屋根の上に残っていた者たちは胴体の辺りを切断されてその場に崩れた。流れる血が屋根を伝って壁を赤く染めていく。彼をそれに見向きもせずに、再び宙を伝って地面に降りた。
相手は既に五人になった。リーダーの男、スキンヘッドの男、全身マント、弓使いの女に魔法使いの男だ。全員が世留を見ていた。既に真深佳は彼らの眼中にはないようだ。
弓使いが既に、世留に向けて弓を引いていた。マントの姿も既にそこになく、どこかで攻撃の機会を伺っているのだろう。そして、リーダーが世留を指さした。その瞬間、リーダー以外の全員が世留との戦闘を開始した。スキンヘッドの拳が世留を狙っていた。彼は拳を空間の隔たりを使って弾き、反撃しようとしたが、彼の影から何かが出現した。それはマントで、マントの中からナイフが突き出されている。世留は後ろに少しだけ体を逸らしてナイフを躱す。彼の後ろからいつの間にか射られていた矢が迫っていた。躱すのは難しいため、空間の隔たりを作り、ガードする。矢はそれに当たり、地面に落ちる。世留は既にそれを処理を終えたものだと思い、隔たりを解除する。既に何度も超能力を使用しているため、世留は疲労が溜まっていた。超能力を使えば、魔気と体力を消費するのだ。世留でも使い続ければ、いずれは疲弊して、動けなくなるのだ。そのため、彼はできる限り超能力を使わないように行動していた。彼の後ろに落ちた矢が再び動きだす。彼の中では既に対処した後の攻撃で意識をそれに割くことが出来なかった。それだけ様々な攻撃が彼に向けられているのだ。そして、彼の後ろに落ちた矢が彼の背中に矢じりを向けて、突っ込んでいく。世留はそれを意識の中に置いてはいたが、それに対処できるほどの余裕がない。彼は再び、背後に隔たりを作り出す。狭い範囲で超能力を使ったのにも関わらず、疲労を感じてしまう。それほどまでに、超能力を使ってしまっていたのだ。彼は何とか、その場から抜け出そうと何度か、バックステップで距離を取ろうとする。しかし、マントがそれを許さない。世留の後ろに回り、それ以上には下がることが出来ない。相手の攻撃はやまない。刀でどうにか対処しているが、このままでは世留が負けるのは間違いない。
「おい、そこの女。見ろ」
いきなり、リーダーの男が真深佳を呼んだ。男の隣には少女がいた。十歳くらいの少女が腕を縛られて、口にはタオルをかまされていた。真深佳はその光景を見た瞬間、怒りで体が勝手に動いた。リーダーの男に向かって走っていく。しかし、彼女がそこに行く前に、リーダーの男の前に世留がいた。いつの間にかそこにいて、刀を振った後の体勢になっている。男は目の前にいつの間にか現れた世留を認識した。隙だらけの彼を馬鹿にしようと口を開こうとしたのだが、口から声が出ない。それどころか徐々に息苦しくなっていた。体の至るところが熱いような気がして、それと同時に鋭い痛みも感じていた。世留に何かされたのだと認識したその瞬間には、全身の感覚が熱いという者だけになっていた。視界も真っ赤に染まり、どこに何があるかもわからない。体の感覚もなくなって、最後には真っ赤な視界の中で、男の世界が終わる。何も理解できずに、リーダーの男は最期を迎えてしまったのだ。その男の全身の血を彼の刀が吸収する。自身の体から疲労が抜けていくのを感じていた。超能力も何度でも使えるようになっている。たったの五人相手で、超能力を体力満タンで使えるとなれば、負ける要素はなかった。
「子供にこんなことをする奴は殺されて当然だ」
いつの間にか、少女を腕を縛っていた紐も、口に咬まされていたタオルも地面に落ちていた。少女は自由だ。




