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黒い覚悟  作者: ビターグラス
6 祭りの途中だったけど
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真深佳と模擬戦

 真深佳が加わってからも特に役割に変化はなく、夕食を済ませて、各々好きに過ごし、その後、真深佳と世留以外の三人が荷馬車で眠った。


「貴方はすごく強いみたいですね」


 夜の間はずっと見張りをするつもりの世留の目の前に、真深佳がいた。彼女は真顔で何を考えているのかはわからない。世留は彼女に目を向けるだけで、返事はしていなかった。


「明日、私と手合わせしてください。少しでも強くなりたいんです」


 彼は目を瞑り、首を縦に動かした。彼女の言葉を信用するわけではない。それどころか、それが嘘である可能性が高いとすら思っている。だが、彼を相手に手合わせしたいというのは、狂気の沙汰と言っても大げさではないだろう。最初の町で彼に勝負を仕掛けた馬鹿な男がいたが、既にあの時とは比べ物にならない程、彼の雰囲気は怖いものになっている。彼と一緒に過ごさなければ、近づこうとも思えないだろう。さらに、戦闘に慣れたものであれば、より彼と戦うとなれば、逃走を選択するだろう。誰も、化け物とは戦いたくはないのだ。その化け物と戦いたいというのだから、それだけの理由があるのは間違いないだろう。




 翌日、タービュライが出発の準備を終えるまでと言う条件で世留と真深佳は模擬戦をすることになった。もちろん、武器は木剣だ。しかし、それぞれの超能力、魔法の使用は禁じられていない。治癒師が近くにいるのだから、即死するような威力のものではなければ、すぐに回復できるのだ。両者が対面に立つ。


「では、宜しくお願いします」


 彼女は左手に短剣を持ち、右手に片手剣を持っている。どちらの剣も順手で握っている。対して、世留の手元にはいつの間にか木剣の剣身が黒く染め上げられていた。剣先は下に向いてるが、彼は既に戦闘準備を終えている。


「いつでも」


「では、行きますっ」


 彼女は一歩目を踏み込み、世留に肉薄する。片手剣を振り下ろして、それと連動するように、下から短剣を差し込むように前に突き出した。世留はすぐに上から来る剣を素早く弾き、短剣を握りの底の辺りを使って突きをいなした。真深佳は弾かれた片手剣に引っ張られて、腕が上がる。もし、両手に剣を持っていなければ、隙だらけの状態だが、世留は攻撃しなかった。真深佳に近づくように体を動かすだけで、すぐに体を引いた。それは相手の攻撃を誘う動きだった。真深佳は攻撃が来ると思って短剣を自身の体に引き付けて、攻撃に備えていた。相手の体が前に来るのが目に入ると、短剣を腹部の辺りで、世留に剣先を向けて、相手を迎え入れるように剣を置いた。しかし、世留はその短剣に当たるはずもなく、木剣を素早く、横に振るった。真横に一閃。黒い剣身の残像が、その場に残る。彼女は体を引いて、世留の剣が届かない距離に身を引いた。しかし、残った短剣が刀に触れた。衝撃が剣を握っていた手に伝わり、それに耐えられなくなって、手を離してしまった。それを目で追う時間など無く、世留の次の攻撃が来る。彼女は片手剣を両手で持って、彼の木剣を受け止めた。


「つ、強い……っ」


 思わず、そう言ってしまうほどに、世留の剣術は素早く正確なものであった。この技術は、復讐を決意する前から持っている技術であった。彼のいた街からフェリアのいる町までは魔物が出る可能性が高かった。そのため、自然と剣術が上達したのだ。その代わり、誰かに教わったわけではないが、その強さは確かなものだった。


 彼女は何とか、世留の木剣を受け流す。その流れのまま、攻撃しようにも、彼女が攻撃するときには既に、剣が世留の目の前に来ていて、隙が無い。どうにも攻めることが出来ない。そうして迷っている間に、世留から攻撃が来る。最初は躱したり、いなしたり、できていた世留の剣も徐々にそれが難しくなってくる。世留が真深佳との戦闘に慣れてきて、隙を突いた攻撃が多くなってきている。彼女の癖も読んで、防ぎにくい攻撃をしていた。真深佳は左右から来る攻撃を防いで、突きをなんとか、剣の面で受けた。だが、その剣の面を滑り、真深佳の剣をすり抜けて、彼女の腹に剣先が当たる。世留がぐっと前に力を入れれば、痛みがあるだろう。


「こ、降参、です」


 彼女は剣を降ろして、そう呟いた。まさか、自分が何もできない程、彼との実力が離れているとは思わなかった。この模擬戦では、真深佳も世留も、魔法と超能力を使ってはいない。しかし、真深佳はそれを使ったとしても、勝てないだろうと考えている。それだけ、力量が違ったのだ。


「ありがとうございました」


 そこまで激しい打ち合いはしてないはずなのだが、真深佳の体はかなりの疲れを訴えていた。世留にはそこまで疲れは見えない。動きは少なくても、世留の素早い剣術を追い、その対処をするとなると、かなり脳や筋肉が働いたのは間違いない。戦闘中は、意識せずとも戦闘が終わるとその疲れが、一気に来るのは当たり前なのかもしれない。

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