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黒い覚悟  作者: ビターグラス
6 祭りの途中だったけど
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困った旅人

 目の前に転がる死体を見下ろす。言葉から推測するしかないが、復讐を果たそうとしていたようだ。それは自分自身と同じだ。恨みを買ったのは間違いなく、世留。しかし、彼は殺意を向けられていたはずだが、それに怖いとは思わなかった。殺されるかとも思わなかった。それは殺される未来が想像できなかったのもあるかもしれないが、それでも本当の殺意を向けられたら、少なくとも恐怖があるはずなのだ。しかし、今の彼にはそう言ったことも思わなかった。


「世留様……? 大丈夫、ですか?」


 彼女は目の前の死体を見ても、怖がるどころか、世留の目の前まで来て、彼の瞳を覗きながら、彼を心配していた。彼女は彼の体を掌でぽんぽんと叩き、体に異常がないかを調べていた。彼の顔色を見ながら、彼の無事を確認した彼女は安堵した様子で息を吐いた。


「これくらい、何ともない。いつものことだ」


 世留は彼女にそう言って、彼女の横を通り、荷馬車の中に戻った。タービュライは死体を漁り、何かめぼしいものを探しているようだったが、結局は何も見つからなかったようだ。サラは荷馬車から世留を見つめているだけだった。世留が荷馬車に踊り、定位置に座りこんだ。サラが彼に触れるか触れないかの場所に体育座りで、膝に顔を乗せていた。祷花は世留の淡々とした様子に、大したことではなかったのだと納得した。彼にとってはこの程度の処理は簡単なことなのだと思った。




 それから、しばらく馬車を走らせていると、道の脇に緑の肩甲骨の辺りから胸の辺りを包む、マントをつけた女性がいた。彼女はタービュライに向けて手を振っていた。彼はそれを見て、馬車を彼女の前で止めた。


「すみません。この先にある町まで乗せてくれませんか」


 茶色の髪が、顔の輪郭に沿っている。毛先が水色掛かっていた。大きな瞳は茶色で、顔全体からの印象は童顔だと感じるだろう。背丈はサラと同じくらい。腰の右には短剣が、左には片手剣を携えている。肩から掛けている緑のそれ以外は革製の服装で体のラインが出るくらいにぴっちりした服装をしている。見た目には、旅人や冒険者と言われるとしっくりくる見た目と雰囲気だろう。


「そうですか。理由を聞いても?」


 世留は相手に敵意がないことを感じ取っていたので、座ったまま動かない。荷馬車から見える、その女性を見ていたのは祷花とサラだ。そして、道端の女性の相手をタービュライがしていた。彼は理由もなく、彼女をこの荷馬車に載せるわけにはいかなかった。怪しいものを運んでいるわけではないが、ボランティアで活動できるほど、彼はお人よしではないのだ。


「この、剣の片方が割れてしまって。勝ったばかりだったのに」


「なるほど。今は剣の手持ちはありませんので、荷馬車に乗ってください」


「そ、そうだ。もちろん、ただで乗せてもらうわけにはいきません。しかし、今はお金がないので、護衛と言う形で乗せてもらえませんか。私の剣の腕をお貸しするという形で……」


 彼女がそう言って、荷馬車に視線を移すと、そこには世留たちがいた。サラや祷花はともかく、世留の見た目は明らかに護衛や用心棒と言ったところだろう。


「あー、剣士はもういらないんですね。町に入って、ギルドに行けば報酬で支払いはできると思うのですが、それでもいいですか」


「構いません。しっかり、料金を払ってくれるなら、ワタシとしてはどれでもいいですよ」


 タービュライが了承したところで、契約成立だ。彼女はタービュライに教えられたように、荷馬車に乗り込んだ。乗り心地はそこまでよくない。それに荷馬車には様々な商品があるため、狭い。既に三人乗っているというのもあるだろう。しかし、彼女は嫌な顔一つせずにちょこんと荷馬車の出入り口の近くに正座していた。


「少しの間ではありますが、宜しくお願いしますね」


 彼女は微笑を浮かべて、三人に挨拶した。サラは特に変なことも言わずに挨拶を返したが、祷花は人見知りをしていた。世留はちらと彼女を見ただけで、言葉では挨拶を返さなかった。その失礼な態度にも、特に何か感じた様子はない。タービュライは彼女が乗り込んだことを確認すると、馬車を走らせた。


 がたがたと馬車がなる中、荷馬車の中は静かだった。祷花が乗り込んできた彼女が怖いのか、人見知りをして、ずっと世留の袖を掴んでいる。


「そうだ。自己紹介をし忘れていました。私は真深佳まみかと言います。改めて宜しくお願いします」


「私はサラ・イストンです」「と、祷花、です」「俺は世留」


 短い自己紹介を終えて、再び、荷馬車の中には馬車の走る音だけ聞こえている。


「町まであと少しですが、今日はここで夜を過ごしましょう」


 彼が馬車を停止した。昨日と同じように、祷花もサラもタービュライの手伝いをして、世留は見張りだ。真深佳は、その様子を見て、邪魔にならないように世留の近くに突っ立っていた。彼女はちらりと彼を見ていた。

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