新たな旅の一員
馬車が走る音が響くばかりで誰も声を出さない。日も落ちてきて、そろそろ馬車を止める時間帯になる。タービュライが馬の速度を緩めていき、道の真ん中で停止した。
「では、ここらで夜を越しましょうか。準備をしますので、お手伝いをお願いします。剣士さんは魔獣や盗賊が来ないか見ていてください」
世留は言われた通り、馬車から降りて、いつでも戦闘が出来るように刀を手元に出現させ、馬車の近くに立ち、サラはタービュライと一緒に食材や調理器具を取り出して、夕食の準備をし始めた。祷花はそれぞれ動いているのを見て、どうしていいかわからず、三人それぞれに視線を送っていた。
「祷花さんもこちらで料理の手伝いをお願いします」
「あの、その、うまくできるか、わかりませんが、宜しくお願いします」
「ええ、わからないことは教えますので、それで覚えてください。そこまで難しいことはありませんから、そんなに気負わずにやりましょう」
サラがちらと祷花を見たが、彼女に話しかけることはしなかった。祷花はじっと立っているだけの世留をちらと見ていたが、彼女も話しかけることはせず、タービュライとサラと共に、夕食の準備に参加した。
結局、料理が出来るのはタービュライただ一人で、サラは切ることは出来ても、味付けはそこまでうまくはない。うまくないというか、どんなものにも塩を書けようとするのだ。祷花は材料を斬っても、大きさがバラバラであり、味付けに至っては贖罪の前で固まったくらいだ。タービュライは二人にそれぞれ、料理の仕方を教えていた。それでも彼は、二人に料理を教えていた。サラも祷花もしっかりと彼の言うことを聞いて、頷いていた。それでも、すぐに料理が上手くなるわけではなく、そこそこ苦労しているようだった。
「料理が出来ましたね。二人とも、お手伝いありがとうございました。中々の出来になりましたよ」
「ご、ごめんなさい。もっとうまくできればよかったのですが……」
「可哀そうな料理に……。料理だけはできないんです」
「仕方ありませんよ。見た目はあまりよくありませんが、味に関してはしっかり、美味しいと言えるものになったではありませんか。では、いただきましょう」
彼らの前に並べられた料理は、野菜は形や大きさがバラバラで、入っている肉は切ってあるように見えて、端で繋がっていた。見た目はあまりいいものではなかった。世留は食べなくても生きていくことは出来るが、みんなで食べると言われれば、断ることは出来なかった。そして、世留はその料理を見ても、表情は変えず、料理に手を付けた。大きな芋を口に入れる。仲間で火が通っていて、味付けはちょうどいい塩味がついていた。
「どうですか。世留さん。おいしいですか」
サラがそう訊いていた。その隣では祷花もそわそわして、料理の感想を待っているようだった。
「おいしい」
料理を食べた彼には表情はなく、到底おいしいと思っている様子ではなかったが、サラも祷花もそう言われたことが嬉しくて、笑顔になった。そして、四人は夕食を取った。その後、荷馬車の荷物を少しだけ降ろして、四人が寝られるスペースを作った。だが、世留は眠る必要はないので、彼は夜通し、見張りをすることにした。タービュライはそれを了承していたが、サラと祷花が微妙な顔をした。サラに至っては、自分も見張りをすると言い出す始末。確かに、彼女はあまり眠らなくても活動できるようだが、世留は眠れるときに眠るべきだと考えて、彼女が見張りをするのを断った。彼女はかなり渋ったが、結局は彼女が根負けして荷馬車の中に入っていった。
夜は周りには何もなく、たまに吹く風の音がするだけだ。夜行性の魔獣が森の中の草を揺らし、荒い息使いが聞こえることもあるが、彼の近くに来る前に、遊羽の亡霊が殺してしまっていた。彼でなければ、焚火をたいたりするだろうが、彼にはそれも必要ない。そのため、馬車の周りには月明かりだけが指していた。世留は荷物を詰めていた立方体の木箱に座っている。祷花がいた街にいたときのように、綺麗な夜空を見上げていた。
(この調子でいいのか。復讐を果たすと言いつつ、タービュライの護衛を引き受けて、サラが可愛そうと言い出したらそれを助けて、祷花もそれで助けてしまった)
復讐のための旅と言うには、暢気なのかもしれない。あの夜のことを思い出すと、あの化け物に恨みがあるのは間違いないと思う。しかし、あの化け物がどこに行ったかの手がかりがないのも事実。サラとタービュライとの旅は楽しくないわけではない。しかし、復讐には必要のないことではある。
(まぁ、今すぐどうにかできるわけではないだろうし。まだ、このままで生活するしかないか。タービュライは頼りになる商人だ。一緒に旅をしても、損はなさそうだ)
夜は長い。考える時間は沢山ある。彼は夜空を見上げながら、夜が明けるまで、見張りをしていた。




