私のわがままです
「そうですね。私のわがままです。可愛そうなことになる前に助けたい。今まで、私はそう思っておせっかいを焼いていました。感謝されることは多かったですけど、嫌がられたことも本当は少なくない。それでも、助けなかったら可哀そうなことになっていたかもしれない。そう言った後悔よりは助けて怒ってくれた方が良いのです。私はこれからもおせっかいで人を助けますから、あなたに言われずともこれは自己中心的なエゴですよ」
彼女は地面に転がったまま、そう言った。その様子は滑稽に見えるが、相手の男の神経を逆なですることは出来たらしい。相手は祷花の腕から手を離して、サラに近づいていく。その男の顔は穏やかだが、怒っているのがありありとわかる雰囲気を纏っている。そして、男が倒れているサラの前に立つ。
「むかつくんですよね。そう言う、自分勝手に自分勝手なことを並べて、親切な振りをした偽善者ってやつが。どうせ、感謝されたいとか、思ってるんだろ」
彼女はすっと立ち上がる。ダメージがないわけではないが、身体強化の超能力で衝撃を和らげたのだ。
「感謝は必要ありません。そんなことをする時間があるなら、未来のことを考えてほしいです。私は治癒師です。死ぬことを許しません。生きていれば、いつか何か変わるかもしれませんから。だから、私は私のわがままで人を助けます」
「ちっ」
相手は舌打ちをして、サラの胴を蹴ろうとした。しかし、その位置にはメイスがあり、蹴りを抑え込んだ。
「そうですね、では、この戦闘でも私を倒さないつもりですか?」
男は嫌味な笑みで、足をサラのメイスにぶつけたまま、そう言った。サラは目を逸らさず、言い放つ。
「はい。私はあなたも殺すつもりはありません」
その物言いに相手はメイスから足を離した。その瞬間、逆の足が飛んでい来る。その攻撃も彼女はメイスで弾いた。次は手が飛んでくる。サラが相手の胴を蹴って、相手をふっとばした。相手の伸ばした拳は彼女に届くことはなかった。飛んでいった相手が着地したタイミングで、サラが追撃を掛ける。メイスを突き出して、相手の胴を突く。相手はサラだけを意識できずにその攻撃を簡単に受けた。さらに後ろに吹っ飛んでいく。相手がまだ着地していないところに、腹にメイスを叩き込んだ。地面に叩きつけ、うめき声を漏らして相手は腹を抑えて悶絶した。彼女は身体強化を駆使して、悶絶している相手のみぞおちと腹の間辺りに拳を振り下ろした。相手は肺から空気を漏らして、体をくの字に曲げて、五体投地で気絶した。
さすがにサラも息を切らせていた。もうメイスを振り回して戦うことは難しいだろう。メイスを持つことが出来ても、それを振るって戦うことが出来ない。
「……あの、ありがとうございます。助けてくれて」
疲れ切っているサラの前に、祷花が歩み寄っていた。彼女は心配そうな表情でサラにお礼を言った。サラはニコリと笑い、彼女の無事を確認する。袖をまくると、掴まれていた腕にあとが残っていた。少しだけ痛そうだったので治癒を施して、それを治した。
「あ、ありがとうございます。あの、お名前を聞いてもいいですか」
「はい。私は、サラ・イストンと言います」
「あ、わ、わたしは祷花と言います。ごめんなさい。わたしから名乗るべきでした」
「構いませんよ。それより、人のいるところに移動しましょう。ここにいてはまた、追手が来るかもしれませんから」
サラの提案に反発することなく、祷花は素直に頷いた。サラが彼女の手を握って、ここに来る前にいた広場に向かった。
「おっと。逃がすわけないだろう。消耗したあんた――」
二人の目の前に、十人ほどの男女がいた。全員武器を持っている。先頭に立っていた男が何かを言おうとしていたが、それは最後まで言うことは出来なかった。それどころか、口から大量の血が溢れて出てきていた。相手は何が起こったのかわかっていない。しかし、サラには予感があった。騒ぎを聞きつけて彼が来てくれるかもしれないと。
「サラ。ボロボロだな。大丈夫か」
「はい。見た目ほど、ダメージはないですよ」
「そうか、無理はせずに休んでいてくれ」
彼女たちの前に表れたのは、グレーの袴を来た男性。世留だった。既に黒い刀身の刀が手に握られていた。世留にしか見えていなかったが、血を吐いた相手の後ろには遊羽の亡霊がいて、相手の喉を辺りに刀を突きさしていた。その刀は相手の内側のみに斬撃が入っていて、見た目からは何をされているのか理解できるわけもない。見た目にはその脅威が相手には理解できず、追手たちは全員で世留に向かって突撃してきていた。世留はその場から一向に動こうとしない。街中で人を殺すと後が大変だ。そう思ったが、このまま逃げるつもりだったので、気にする必要もないかと思いなおす。
近づいてくる敵を、世留は全員斬りつけた。すぐに処置すれば死ぬほどではないものの、この祭りの中で彼らに気が付くものがいるのかは疑問だ。しかし、彼にもこの町の人にも事情があるのは理解してるため、命までは奪うことはしなかっ




