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黒い覚悟  作者: ビターグラス
5 村の祭りには
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勝手に首を突っ込んで

 母の横を素早く抜けて、祷花は母が追いつけない程の速さで廊下を駆け抜ける。彼女が閉じ込められて居た家のドアには鍵もかかっておらず、簡単に家から出ることが出来た。


「待ちなさい!」


 ドアが閉じる前に聞こえた声は、母が初めて出した大声だ。こんな時になって、その切羽詰まった声を聞けたことが、何かの仕返しになった気がして心が軽くなる。それは初めて、親に悪戯を仕掛けて見事にひっかけることが出来たかのような、気持ちよさだったのかもしれない。




 町の通路を走る。祷花が走ると、町を行く人々が振り返る。ほとんどの人は、彼女が生贄になることを知らない。だから、綺麗な人が走っている程度の認識だ。だが、その中には彼女の役割を知っている人もいた。その人たちが、周りにばれないように彼女の後を追う。数人で追跡を交代して、彼女を見逃さないようにしていた。祷花は自分がどこに向かって走っているのかもわからないまま、大きな通り、人通りの大場所を駆け抜けていく。




「……?」


 町を歩く人々の様子が、先ほどと違うことに気が付いて、サラは顔を上げた。辺りをキョロキョロすれば、人々が何かを視線で追っているのがわかった。その視線の先に、綺麗な黒髪の女性が走っているのが見えた。何名かが彼女の後を追っているのもサラの視界に入っていた。明らかに逃げているのがわかった。


「助けましょう。今の私はお二人を待つだけですからね」


 彼女はすっと立ち上がり、彼女の後を追う人の後に付いて行く。


 人が徐々に少なくなっていく。広場の周りに人が集まっているせいで、住居が多いエリアに人はいない。なぜ、人がいない方に来たのか、わからないが、来てしまったものは仕方がない。サラは隠れることなく、付いてきたきたせいで、人気のないところに来たとたんに、相手の数名が反転して、彼女と対峙した。反転したのは五名の内の二名。振り返らなかった人々は走って逃げる女性に付いて行った。


 サラの前に立っている二人の男は短剣を引き抜いた。片方は短剣を両手に一本ずつ持っていた。サラも腰に付けていた二本のメイスを引き抜いた。男二人が先に行動する。素早い移動で、サラを挟み撃ちにする作戦だ。サラはそう言った戦術を読む才能が全くない。彼女が持つ超能力を使って力押しで戦闘してきたのだ。それで負けたことがないのだから、戦闘する才能自体はあるのかもしれない。しかし、戦闘の才能だけでは、戦場では生き抜くことは出来ないだろう。現に彼女は今、視界に一人しか入れることが出来ない。それでも、サラは驚いたり、動揺したりはしていない。その程度の状況は何度も遭ってきていた。


 相手の二人は同時に、彼女に仕掛けた。彼女の正面から仕掛けた男が右手の短剣を傾けて、太陽の光を反射させた。その反射した光が彼女の顔に当たり、彼女は目を細める。目を開けていたせいで、光が視界にちらつく。


「風よ。エアカッター」


 後ろにいた男が、呟いたのは魔法の詠唱だ。彼の前に風が集まり、いくつかの刃になって飛んでいく。目くらましを受けている上、その魔法の刃は見えにくい。さらに目の前に、敵が攻撃してきているのに後ろにも注意を向けるの難しかっただろう。いくら魔法の詠唱が聞こえたところで、その対処は難しい。彼女は正面の相手の対処をすると決めて、風の魔法は当たる。風の魔法が当たっても、彼女の服も体にも傷はついていない。威力の低い魔法は物に物理的な効果は現れなくなる。だが、体内の魔気を消費させてしまう。魔気が無ければ生物は生きていけなくなる。見た目には変化がないだけに、威力の低い魔法でも、何度も何度も当たれば死に至るのはこの世界の誰もが理解していることだった。


 サラは、目が見にくい状態のまま、魔気が消費されたのを感じながら、相手の短剣にメイスを叩きつけた。相手の両手に持っていた短剣の内、左手の短剣が破壊した。それを見て、正面にいた男が距離を取ろうと、体重を後ろにかけて飛ぼうした。しかし、それが成功することはなく、サラがその場から相手に向かって体当たりをする。サラは相手を殺す気はない。その勢いのまま、相手の頭を蹴った。その瞬間、相手の首から嫌な音がして地面に倒れた。相手の手から短剣二本が地面に落ちて、カランという音が響く。その隙を突いて、もう一人の相手が突っ込んでくる。彼女は蹴りから体勢を整えられていない。相手が近づいてくるのを見て、彼女は無理やり体を捻って相手の攻撃が来るであろう位置にメイスを置く。しかし、彼女が警戒していた技はどれもこなかった。


「土よ。クレイスピア」


 彼女の足元から全身を貫くようにして、地面から先の尖った小さな山が突出した。彼女はそれを回避できるわけもなく、身を守る隙も無く、攻撃を受けた。

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