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黒い覚悟  作者: ビターグラス
5 村の祭りには
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朝支度

「そうですか。その人はかなり生贄の可能性が高いですね。明日も同じ場所に行ってみますか。もちろん、ワタシではなく、剣士さんが会わないといけないと思いますが」


「ああ。わかってる。それと、祭りまであと何日かわかるか」


「ああ、ごめんなさい。伝えていませんでしたね。後一週間ほどだと聞きました。聞いたのは昨日なので、一週間は切っていると思った方が良いかもしれません」


 禱花という人物と別れた後、少しのその場で空を見上げていた彼は、馬車に戻ってきていた。それから、しばらく馬車で大人しくしているとタービュライが馬車に入ってきた。それから、タービュライは町の表の構造を掴んだで戻ってきたということを聞いて、それから世留が出会った少女の話になった。タービュライも世留が会った少女が生贄としての役割を持っていると予想していた。明日の夜も、世留が今日少女と出会った場所に行くことが決定して二人の作戦会議は終わった。


 ちなみに、二人が真剣な顔をして話し合いをしている間、サラはその横で静かな寝息を立てながらぐっすり眠っていた。




 翌日、日が昇り、寝ていたサラが目を覚ました。タービュライも眠っていたはずだが、サラより速く目を覚まして、馬の世話や荷台の整備をしていた。それも既に終わりに近づいているようだ。


「おはようございます」


 少し跳ねた髪が、見た目はしっかり者に見える彼女ではなく、少し抜けている印象があり、美人ではなく、美少女と言った印象になる。彼女は寝ぼけた様子で目をこすりながら、馬車の降りる所に突っ立っていた世留に声をかけた。彼は首だけを彼女に向けて、ああ、とだけ返した。


 それから、彼女は手で髪を撫でつけ、髪をある程度整えていた。しかし、何度か撫でても、一か所だけ跳ねた髪が戻らないようで、そこだけ何度も手櫛で整えようとしていた。その様子を見かねた世留はタービュライに話かけた。タービュライは荷物から何かを取り出して世留に渡した。世留は再びサラの視界に入り、手招きした。彼女は不思議そうに首を傾げて、跳ねた髪を抑えながら彼に近づいていく。彼の目の前まで来ると、彼女をくるりと半回転させた。そして、彼は無言で髪を抑えていた手を剥がして、その髪に櫛を入れた。いきなりの出来事に彼女が全身を固くして、動けない。髪に触れられて何をされるのかわからないまま、髪に櫛を入れられて、三度ほど梳かれたときにようやく、寝ぐせを直してくれているのだと理解できた。だが、そうされる理由は全く理解できなかった。髪を梳かれるのは、どこか心地良くて、無理やりそこから逃げようとは思えない。しかし、このままで梳かれていていいのかとも思ってしまう。結局はその間で揺れて、体はその場から動かない。


 世留は今、昨日出会った少女について考えていた。そのため、体はほとんど自動的に動いていると言っていい。サラの髪を梳いているのは、遊羽の寝ぐせをよく梳いていたからだ。サラに寝ぐせが付いていて、昔の癖のようなもので、彼女の寝ぐせも何も考えずに梳いているのだ。タービュライはまさか、彼自身が髪を梳くとは思っていなかったので、少し驚いていた。櫛をくれと言われたときは、サラに渡すだけかと思っていたので、驚くのも無理はない。女性の髪を梳く問う経験がタービュライにはないのもあるかもしれない。


 髪を梳き終わると彼は櫛を髪から話して、手に持ったまま、また荷台の入り口のところに立っている。


「あ、ありがとうございます」


 彼女は梳いてもらったところを手で触れようとして、その手が止まる。梳いてくれたのに触れてその髪がまた乱れるかもしれないと思ったからだ。両手を膝の上に置いて、じっとしている。なぜ、髪を梳いてくれたのかがわからない。それを考えてしまって他に何も考えられず、動くこともできない。




 少しの間、世留が突っ立っていたのだが、考えごとを止めて、意識が現実に戻ってくる。彼は手に何かを持っている感触に気が付いて、それを確認した。自分が櫛を持っていることを不思議に思ったが、無意識の内にサラの髪を梳いた記憶がうっすらとあった。タービュライに櫛をくれと言ったのも思い出して、その櫛を返しても売り物にはならないだろうと考えた。彼は迷うことなく、タービュライのところに行って、櫛の代金を払うことにして、袋からお金を盗り出した。


「あ、いいですよ。それは大した額のものではないので、貰ってくれるとありがたいです。それにそのつもりでお渡ししたものですから」


 世留はしばらく持っていた金を袋に戻そうとはしなかったが、彼がどうにもその金を受け取らなさそうな雰囲気を察知して、結局は金を袋にしまった。


「では、そろそろ朝食にしましょうか」


 タービュライはいつの間にか用意したのか、サンドイッチを木製の皿に乗せて持っていた。四角く白いパンの間に、葉っぱの野菜とハム、トマトを挟んだものだ。その匂いにつられたのか、じっとしていたサラも馬車から顔を出した。


「それじゃ、食べましょうか。お腹もすいているでしょうし」


 三人とも荷馬車の中に入って、朝食を取った。

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