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第16話

麒麟がくる見てたらちょっと遅くなった。ごめんなさい。

ここから新しい悪役が登場&新展開です。

「やあ、ジェイク。頼まれた通り来たよ。それで、僕たちに同伴してほしいって言うパーティーはどこの子たちだい?」



 風もないのに長い金髪が流れるようになびいていた。貴族が着ているような煌びやかな衣服をまとい、どことなく光があふれているように見える。特にこれと言って理由はないが、僕はなぜかこの男の風体にイライラしてしまった(かと言ってあからさまにそれを態度に出せば相手に失礼なので黙ってはいるのだが)。



「ローマン」

「いやあ、遅れてしまってすまない。僕にも準備があってね」

「いや、いいさ。君はその分極めて優秀な働きをする」

「はは、当然だね。待たせるだけ待たせて無能なんじゃ、生きているだけ無駄だからね」



 ローマンと呼ばれた男はそう言って僕を押し退け受付の前に立った。少し声をかければいいものを、無礼な奴だ。僕は風体だけでなく、この男の態度にもイライラとしてしまった。



「と、それよりも、例のパーティーは?」

「ああ、そこにいるぞ」

「へぇ……」



 と、ローマンがシキたち3人へと視線を移した。すると彼は目を丸くし、あっと声を出す間も無いほどの一瞬でシキへとすり寄った。



「君、かわいいね」



 極めて流麗な動作でローマンはシキの手を取り、そして両の手で彼女の手を包み込んだ。シキは「うぇっ?」と素っ頓狂な声をあげる。



「僕はローマン・ノイシュタイン。ああ、君もよく知ってると思うけど、あの高名なノイシュタイン家の息子だ。S級の冒険者として数々の武勲を立てて表彰されたこともある。まあ、そんなことはどうもでいいんだけどね」

「は、はあ……」

「そうだ、少し提案をしたいんだけど。このクエストが終わったら、君、今いるパーティーを抜けて僕の所へ来ないかい? ああ、悪いようにはしないよ。見たところDランクのようだし、手取り足取り、僕が色々と教えて君を強くしてあげよう。どうだい、悪い提案じゃないと思うんだけど……」

「は、はあ?」


 シキの様子など見えていないと言った様子でローマンはべらべらと話し始める。僕は殊更にこの男の顔を殴りたくなった。なぜだろうか、今までで一番、むかつく気がする。



「あはは、緊張してるんだね。そんなに肩肘張らなくても大丈夫。さ、一度リラックスして――」

「――き、」



 と。ローマンが話しかけている最中に、シキは表情を強張らせ、光のような速度で彼の頬を叩いた。



「キッモッッッッ!!!!!!!!」



 パン、という大きな音がギルド中に響いた。シキが握られた手を振りほどいてローマンから離れる、僕は彼女のごまかしの無い反応に思わず吹き出してしまい、口元を押さえてぷるぷると震えていた。これはかなりキツイ。

 シキが怖がるように僕の後ろへ隠れる(なぜ僕の後ろなのか)。ぼそり、ぼそりと「キモイ、なにアイツキモイ」「どう見ても下心丸出しじゃん。女が全員金と権力に弱いとか思ってんじゃねぇよ」と辛辣な声が聞こえる。いいぞもっと言ってやれ。



「――なるほどね」



 何がなるほどなんだ。僕は表情を怒らせながらこちらを睨みつけているローマンに心の中でツッコんだ。



「君、アレか。そこのパーティ―の人間か」

「ああ」

「はは、生意気だね。黒髪のくせにたくさん女の子を囲んでいるなんて」

「あいにく偶然だ。あんたが想像しているような間柄じゃあない」

「あんた、だと? 高名なノイシュタイン家の人間である僕に、黒髪風情が、偉そうに――!」



 ――どうやら話をする意味のない相手のようだ。僕はうっとうしく感じると同時に、この男の言葉の全てがどうでもよくなり、大きくあくびをしてしまった。

 どうやらローマンはそれを侮辱と受け取ったらしい(事実だが)。彼は僕に近寄りガンを飛ばすと、吐き捨てるように言った。



「ふん、そうしていられるのも今のうちだけだよ。どうせ君は、やがて僕の強さに恐れおののくことになるんだ」



 ――まあ、そう(・・)だとは思っていたが。僕はこの男が極めて低脳であることを察すると、大きくため息をついて「そうか」とだけ答えた。



「さて、レンファくん」



 と、受付の向こう側にいるジェイクがまたレンファに語り掛けてきた。



「君たちには彼らと共にダンジョンの探索に出かけてもらう。出発は今から30分後だ」

「30分!? ろくな準備もできねえぞ、せめて1日は必要だ!」

「おやおや、冒険者たるもの常に準備をしておかねばならないではないか。君たちの責任を、私の問題であるかのように言うのはやめてくれませんかな?」



 ジェイクがにやりと笑った。レンファは「クソ……!」と呟き奥歯を噛み締める。僕は彼らの様子を見て小さく「ふむ」と呟き、これからどうすべきなのかを思案し始める。



「では、健闘を祈るよ」



 ジェイクはそう言って受付の奥へと消えていく。受付嬢も「邪魔だからどっか行ってください」と僕たちへ口を尖らせた。

 どうやら話を覆ることはかなわないらしい。僕たちは仕方がなく、受付の前から退き、ギルドの片隅に集まった。



「どうすんだよ。どう考えてもくせえじゃねえか、これ」



 レンファが口火を切る。と、嫌々と言った表情のドレッドが「仕方ねえだろ」とそれに受け答えた。



「まあ、こういうことが起こると思ったから俺はハクにお前らを守ってもらうよう頼んだんだよ。まあ足引っ張らねえ限りは大丈夫だろ、それはそれと諦めるしかねえ」

「んなもん腹据わってるわ。私がムカついてんのはアイツらの態度だよ、なんでたかだか髪の色程度であんなに対応を変えるんだよ」

「手前の優越感のために差別で殴るなんざ世間じゃよくある話だよ。まあアイツら差別だなんて微塵も思ってないがな」

「正真正銘のクソったれだな」



 レンファが吐き捨て地面を蹴飛ばした。ドレッドは怒り心頭なレンファに肩をすぼめ、「ま、しかたねえか」と呟いた。



「ああ、あとお前」



 と。ドレッドは突如、シキの方を指さした。



「あ、私?」

「そう。アリスだっけか? あとでちょいと来い。大丈夫だ、10分もあれば終わる。少し、話がある」



 シキは自分の顔を指さして首を傾げた。

 ――果たして、一体なんだというのだろうか。僕はドレッドのその不自然な行動に、訝しむような目を向けてしまった。

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