第992話 順調な討伐
6体の敵を石の銛で串刺しにして、海面へと移動。さて、これをまた貫通してる部分を使って他の敵を刺しながら、アルの生成した海水へと放り込む!
って、あれ? なんかハーレさんがいつの間にかサヤのクマの肩の上に乗ってる? なんかあったのか? あー、地味に今回はハーレさんの役目が少なめだから、退屈してるのかも。
「ハーレ、どうしたのかな?」
「地味に出番が少なくて暇なので、私にも出番をくださいなー! 『並列制御』『魔法弾』『魔法弾』!」
「あ、確かにそれはそうかな? それじゃハーレ、今度はこれで任せたかな! 『略:エレクトロボム』!」
「それもそうだね。一気にやっちゃって、ハーレ! 『エレクトロインパクト』!」
「これでもくらうのさー! 『並列制御』『狙撃』『連投擲』!」
おー、ハーレさんのリスが左右の手でエレクトロインパクトとエレクトロボムを魔法弾にして、次々とアルの海水の中へと投げ込んでいる。まずエレクトロボムで一気に全体の電撃を広めて、そこから分割したエレクトロインパクトを投げ込んでる感じか。
ちょっと今回はハーレさんの出番が少な過ぎたから、これくらいはしてもいいのかもね。意味があるのかと言えば、正直あまり意味はない気もするけども……。
「ふっふっふ、撃破完了です! ケイさん、次をよろしくなのさー!」
「ほいよっと! 魔力値が減ってきたら、アイテムで回復はしてくれよ! 特にサヤ!」
「うん、分かってるかな!」
「サヤはクマの少ない魔力値を消費してるから、Lv4の爆発魔法でも消耗は激しいもんね」
「あー、海水の操作は一度再発動するぞ。ずっと位置を固定するのは、流石に神経を使う」
「ほいよ! それじゃ次の攻撃の時に再生成で頼んだ!」
「おうよ!」
「さて、とりあえずコケを食べるやつを早めに一掃するぞ!」
「多分次で倒し切れると思いますけど、一度増殖しておきますね! 『増殖』!」
「よし、それじゃサクッと仕留めますか!」
残滓の魚がコケを食べてくるのは想定外ではあったけども、それ以外は至って順調! いや、食べてくるのも戦法に組み込めているから、そこも決して悪くはない。他のパターンを試してみようかとも思ったけど、これで安定しそうだし無理に変えずにこのままの方が良さそうだ。
さーて、さっさと全部を仕留めて、1時間のボーナスの恩恵を受けつつ頑張っていきますか! 運が良ければ俺とハーレさんは今回でLv30に到達出来る可能性もありそうだしね!
◇ ◇ ◇
そんな調子で夕方で戦った時のやり方をベースにしつつ、今いるメンバーで戦闘の割り当ても済んで順調に討伐は進んでいった。もう少しで1時間が経ち、ボーナスの恩恵が無くなる頃だね。
今の時点で残っている残滓はもうあと少しだけ。……でもこうなると俺じゃ見つけにくいから、途中から定番化した手段に変更!
「サヤ、ハーレさん、残りの敵の索敵は任せた!」
「討伐終盤の出番がやってきたのです! えいや!」
「うん、任せてかな!」
「フーリエさん、俺らは上がっとくぞ。アル、海水はもういらないな」
「はい、分かりました!」
「だな。海水は解除っと」
という事で、俺らは一旦タイドプールから脱出。残ってる残滓の数にもよるけど、基本的にはサヤとハーレさんに任せたらいい。最後は電気魔法で仕留める訳じゃないから、もう魔法産の海水は必要ない……って、今思ったけどアルって海水の生成と操作しかしてない気がする!?
「……今更なんだけど、アルの役目って暇じゃなかった?」
「……ほんと今更だな。まぁこれから数日間ずっとなら流石に勘弁だが、今日の2時間くらいはこれでも良いぜ。全員がLv30になるまでは、サポートに徹するつもりだしな」
「それはありがたいけど、もっと大暴れしてくれてもいいんだぞ?」
「……エリア的に単純にそれがやりにくいってのもあるんだよ。俺が細かい狙いをつけるのに向いてると思うか?」
あー、そう言われると確かに向いてはなさそうな気がする。クジラを小型化しても木とは繋がってるし、木は木でタイドプールの中で戦うのもやりにくそう。
俺がやってた石の銛みたいに根の操作で突き刺していくのはありだと思うけど、それだと全員の役割を大きく変える必要があるからなー。いやでも、出来なくはない気はする?
「ま、今日はその辺は気にすんな。ところでケイ、経験値はどんなもんだ?」
「あー、Lvが上がるにはちょっと足りないくらいだな。多分今の戦闘で終わりだし、ここでは無理っぽい」
「やっぱりそんなところか。サヤとヨッシさんはLv29に、フーリエさんはLv27にはなったんだがな」
「今日だけでかなりLvは上がったし充分だって!」
「はい! 今日のLv上げは相当効率が良かったです!」
「私もLv29になって、Lv30までは半分以上は行ったしね」
ヨッシさんがそれくらいの経験値になっているなら、他のエリアでLv上げをしてLv30を目指すのもありだよな。まだ経験値の結晶も1個しか使ってないし、今なら緊急クエストの対象エリア以外でもそれなりにすぐにLv上げは出来そうな気もする。
それとちょっとヨッシさんが油について気にしてたから、これが終わったら少し情報収集に行きたいところ。揚げ物用とかの気はするけど、普通に武器としても使えそうだもんな。……俺としては要注意な手段になりそうだし、その辺は存在するのかを知っておきたい。
「ウミウシを見つけたのです!」
「こっちもカニを捕まえたかな!」
「よし、2人ともナイス! 2体ならそのまま仕留めてくれ!」
餌用の一般生物を仕留めていく時と餌でばら撒いている時に、それなりに行動値は回復してるからみんなその辺は問題ない。ここで変に俺らが攻撃するよりは、サヤとハーレさんに仕留めてもらった方が早いだろうね。
「了解なのさー! 『並列制御』『略:ウィンドボム』『略:風の操作』『連速投擲』!」
「分かったかな! 『連強衝打』!」
ハーレさんは指向性を操作したウィンドボムでウミウシを上空に打ち上げ、そこに銀光を放ち始めた連続投擲を当てていく。
それに対してサヤの方はタイドプールから出てきて岩場にカニを叩きつけ、更に叩き潰すように強くなっていく銀光を放つクマの手で打ち据えていた。うん、どっちもあっという間にHPが無くなりポリゴンとなって砕け散っていったから、討伐完了だな。
「ハーレ、他には残滓はいたかな?」
「ううん、見た限りでは見つけられなかったのさー! 残りは一般生物だけなのです!」
「念の為にもう一回確認しておいてくれー!」
「うん、分かったかな!」
「了解なのさー!」
この2人がそう言うのであればほぼ間違いはないんだろうけど、一応最終確認はしておくべきだよね。まぁ任せっぱなしにはなるけどさ。
「とりあえずこれで今回は終わりですね!」
「だなー。あー、他の戦法も考えてはいたけど、よく考えたらこの状況ではしなくて正解だったかも?」
「ん? ケイはそんなのを考えてたのか?」
「ケイさん、どんなのを考えてたの?」
「えっと、一般生物の魚とかを仕留める時の要領で、残滓もまとめて同時に倒すってのを考えてたんだけどな」
「普通にそれはありじゃねぇか? それなら残滓と一般生物も同時に……あぁ、そこが問題になるのか」
「そういう事。途中までならそれでもいいけど、他のPTと交代する今だと問題あるんだよなー」
この手段だと最後の一戦は、交代したPTの人達が敵の補充用の餌になる一般生物の討伐から始まるのを邪魔しちゃうんだよね。一般生物を残さずに倒す形になるから、ばら撒く餌が俺らのインベントリに残った上に、交代するPTがやる事をなくしてしまうっていう問題。
「……確かにそれは問題ですね」
「変に戦い方を切り替えながらやるよりは、統一してた方が効率は良いもんね」
「だから実行しなくて正解だと思ってるとこだなー」
「ま、確かにその方が良かっただろうな」
本当にこれは実行する前に気付いて良かった。まぁ今の反応的には、みんなに提案した時点でダメ出しをされて却下になってた可能性もありそうだし……。
まぁ餌をばら撒くまでは俺らが引き続いてやってもいいけど、それだと他のPTのやってる事と差が出てくるから避けた。その方がトラブルがなくて良いはずだし、結果的にはこれで良いはず!
「ぷはっ! もう残滓は居ないと思います!」
「私もそうだと思うかな! ……ここでケイの獲物察知が使えたら楽なんだけどね」
「まぁ……成熟体の人達から、可能な限り使うなって言われてたらなぁ……」
俺が使った訳ではないけども、戦ってる最中に他のPTの人が使って海の中の成熟体のブリが飛び出てきたりもしたしね。いやー、あれはびっくりしたもんだ。
どうも格下になる未成体からのスキル使用には過剰に反応するみたいで、海の成熟体の人達から使用は避けてくれと言われている。……今くらいの補充前のタイミングなら使っても大丈夫な気もするけど、海の中の様子が見れないから邪魔になるような真似は避けておいた方が無難だよな。
「さてと、とりあえず今回は戦闘終了! 交代のPTが来るのを待ちますか!」
戦闘行為を止めるのが交代の合図って事だし、交代の誘導役をしてくれている灰のサファリ同盟の人達がこれから調整してくれるんだろうね。って事で、一般生物は残してまったりタイム!
敵が残滓ばかりの雑魚とはいえ、1時間ずっと戦い続けてたからね。全く疲労がない訳ではないし、少しで良いから休憩はしたいところ。
「分かる範囲で知り合いとの交代にするって言ってたけど、誰が来るかな?」
「誰がまだ未成体で、誰が既に成熟体なのかが分からないので、分かりません!」
「あはは、まぁそれはそうだよね」
「そもそも必ずしも知り合いとは限らんしな」
「あー、そりゃそうだ」
「確かにそうですよね!」
今まで知り合った人が全員ここに来る訳じゃないだろうし、知り合いと交代になる可能性の方が低いと考えた方がいいか。ザックさん達と交代になったのは、ただ単に運が良かっただけだろうしなー。
さてと、チラホラと俺らと同じように戦闘を止めたPTも増え出してきたし、誰かが交代の誘導してくるまでもう少し待たないといけないか。
「この後はどうする? ヨッシさんが油を気にしてたから、一度森林深部に戻って桜花さんやモンスターズ・サバイバルのとこまで行く?」
「私としてはそうしてくれると助かるけど……みんなはどう?」
「まぁ良いんじゃねぇか? 俺は賛成だぜ」
「私も賛成なのさー! 油があれば小魚の素揚げとかが食べられそうなのです!」
「ハーレは相変わらずの食い気かな!」
「僕もそれで構いませんけど、油ってあるんです?」
「あー、フーリエさん、それが分からないから確認しに行くんだよ。……俺らコケにとっては天敵になりそうだしさ」
「あ、確かにそれはそうですね!」
油をばら撒かれて、それに火を着けられたりしたら、コケにとっては危険だろうしなー。油だと水をかけて消火しようとしたら、余計酷い事になりそうなのが……。
「火が着いても水をかけて消火するのじゃ駄目なのー!?」
「ハーレ、油に火が着いた時には絶対にやっちゃいけない消火方法だから! 火災の原因だからね!?」
「え、そうなの!?」
「うん、それは本当かな。ハーレ、絶対にやっちゃ駄目だからね?」
「はーい!」
ハーレさんがサラッと一番危険なやり方を言ったけど、それは本気で危ないヤツだから! いや、本当に冗談抜きでハーレさんを我が家の台所には立たせられないな……。
「えっと、そういう時って濡れタオルを被せれば良いんでしたっけ?」
「あー、まぁそうなるな。普通に消火器の方が良いだろうが、窒息消火って言って酸素を遮断する事で消火させる事は出来るな」
「……それなら風の操作で真空にしてみるとか? 消火出来そうじゃね?」
「根本的に真空に出来るかどうかが問題だな。ケイの場合は、それより岩の生成で密閉空間を作った方が確実だろ」
「あ、確かにそりゃそうだ」
自分では全然育ってない風の操作を使うよりも、使い慣れている岩の操作で燃焼させ尽くした方が確実だよなー。コケが燃え尽きる前にどうにか出来ればの話だけど!
「ケイさん、僕はそういう場合はどう対処したら良いんでしょう?」
「フーリエさんは大急ぎで増殖してから、群体化解除で燃えてる部分を切り離すんでいいんじゃないか?」
「あ、確かにそうですね! 時間との勝負になりそうですけど、それなら対処出来そうです!」
「てか、対処方法を考えてるが、まだ油の存在は確定してねぇからな? そこを忘れるなよ」
「……そういやそうだった」
リアルでの油といえば、植物から採れる植物性の油や、牛脂みたいな動物性のものや、石油みたいなのもあるもんな。ヨッシさんが求めているのは揚げ物用の植物性の油だろうけど、どれかが存在している可能性は充分ある。全部ある可能性もあるよね。
だからこそ、その辺が発見されていないかどうかを桜花さんやモンスターズ・サバイバルの所にいって聞く予定を立ててるんだなー。まぁまとめを見れば済む話ではあるんだけど、テスト明けで復帰してきたとこだし、その辺の挨拶もしておきたい。
「おっと、そうしてる間に交代のPTが来たみたいだな。アル、移動の準備を頼む!」
「おうよ!」
「みんな、アルに乗れー!」
「「「おー!」」」
「はい!」
という事でみんなでアルに乗ってから、交代にやってきたPTと誘導役をしてくれた人に挨拶をしていった。これで今回のボーナスの恩恵タイムは終了!
さて、さっきの会話でみんなの同意は得られた感じだし、一度森林深部に戻ってから油についての情報収集をしていきますか!