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第931話 合流して


 ログイン障害の原因はよく分からないままだけど、とりあえずサヤ達と合流する為にミズキの所へと移動中である。おっと、左前方にカメとイタチの2人組がいるね。


「アル、ちょっと右に迂回で」

「あー、確かにあれは邪魔になりそうだな」

「多分、あの2人組も電気の昇華狙いなのさー!」


 思いっきりカメの人も、イタチの人も、タイミングを見計らうように雷雲を見上げてるもんな。なんだかあちこちで雷が落ちている音もしているし、電気の昇華狙いの人が集まってきてるっぽいね。


「おっしゃ、待ってた絶好の機会だし、やってくぞ!」

「取得を急ぐよー!」

「おうよ! 『電気の操作』!」

「私もだー! 『電気の操作』!」


 邪魔にならないように少し迂回して隣を通った時に、カメの人とイタチの人のそんな会話が聴こえてきた。予想通り、電気の昇華狙いだったみたいだね。


「……それにしても電気の昇華や雷の操作って、雷雨になったら取りやすいけど普段は取りにくいよなー」

「そういやちょっと前に夜に野良PTにいた時に、雑談でそれが話題になった事があったな」

「アルさん、そうなのー?」

「それで、なんか結論って出たりした?」

「ま、推測でしかないのならな。ほら、何年か前に災害から復興をモチーフにしたゲームがあったろ?」

「それって発売時期が地震と重なって、延期になったやつだよねー?」

「あー、そういやそんなのもあったけど……それがなんか関係あったりするのか?」


 確かそのゲームの発売時期って不謹慎だとかいう苦情が殺到して、発売が2年くらい伸びたんだよな。

 でも実情はリアリティ溢れる災害対策のシミュレーションという内容で、知識的に実用性が非常に高くて、発売後には『実際の地震の前に出しとけ』とか理不尽な苦情も出てた気がする。うん、あれは見てて開発の人達が可哀想だった。


「関係あるというか、それが推測の起点だな。毎年あちこちで災害が起きてるから、それを連想させるような要素は入れてねぇんじゃねぇかって推測になった」

「ほうほう? 具体的にはどういう感じの推測になったんだ?」

「もうちょいでサービス開始で1ヶ月ってとこだが、今の雷雨以上の天候の崩れとかはないだろ? それこそ土砂崩れとかが起きて、クエスト化とかありそうなもんなのにそれもない」

「あー、運営が意図的に災害規模のものは発生しないようにしてるって事か!」

「まぁそういう事だな。……ただの推測に過ぎんが」

「でも、それはありそうなのさー!? 変に苦情を言う人が出てきそうなのです!」


 うん、そこはハーレさんに同意。毎年のように台風で被害が出ている場所もあれば、何年かに1度大規模な地震とかも存在する。


 正直、ただの難癖にしか思えないけど、そういう内容をゲームのイベントとして組み込むのは避けているってのはありそうな話だね。

 んー、台風が来て、土砂崩れをみんなで復興しろとか、川の氾濫を防げとかそういうのも出来そうだけどなー。流石に運営としてはそれでクレームをつけられるのは嫌なのかもしれない。……ポンとボタンを押せば出てくる訳じゃないし、実際に開発したのを変な難癖で取り消しとかになったら大変だろうしなー。


 結局のところ、ゲーム内とリアルでの出来事を過剰に結びつけて批判する人がいるのが問題か。オフライン版の時でも動植物で殺し合うゲームは残虐で、動物虐待を誘発するって批判は見たもんなー。


 そんな批判をする前に、面倒を見きれなくなってペットを捨てる人の対処をしろって思うよ。ペットを捨てるのは犯罪だし、架空のデータの批判する前に現実の対処をしろっての。

 今朝の野良猫、妙に人馴れしてた感じもあるし、元はどこかの飼い猫って可能性も……。いや、流石にこれは考えるのをやめとこ。どういう結果でもいい気分にはならないし。


 思いっきり話から脱線してるし、とりあえず方向を元に戻していこうっと。


「そういやそれって昇華魔法は除外なのか? デブリスフロウとか、そのまま土石流だけど……」

「そこまで制限したら、流石にゲームにならなくなるからな。直接、運営がゲーム内で突発的な災害は出さないようにしてるって感じじゃねぇか?」

「ゲームと現実を区別出来ない人は困ったものなのさー!」

「まぁ、確かにそりゃそうか」


 プレイヤーが使う攻撃手段までそういう規模のを無くしてしまうと、演出面が地味になっちゃうもんな。うーん、この辺は運営さんも苦労してそうだよね。


「おっと、そうやって雑談してる間に到着したぞ」

「お、マジだ」


 俺達がいた場所からミズキの場所まではそれなりに距離はあったけど、今のアルならそこまで時間はかからなかったね。

 それにしても、ミズキの周辺には次々と人が転移してきている。こりゃ雷雨目当てでやってきた人が沢山いるっぽいなー。えーと、とりあえずサヤとヨッシさんはどこだろ?


「あ、サヤとヨッシを発見なのさー! おーい、サヤ、ヨッシ! こっちだよー!」

「ヨッシ、ハーレ達が来たかな」

「思ったよりは早かったね」


 ハーレさんが呼びかけたから、すぐにサヤ達からも俺らを見つけられたようである。そこからアルのクジラの背中の上まで移動してきて、合流完了だな。


「おし、これで全員集合だ! ちょっとサヤとヨッシさんに聞きたい事もあるんだけど、その前にヨッシさんの電気の昇華からだな。……実は合流までの間に取得してたとかはない?」

「んー、それも考えるには考えたんだけど、この人の多さ的に遠慮しておいたからまだだね」

「みんな、ミズキのすぐ近くで取るのは邪魔になると思って移動はしてるかな」

「あー、なるほどね」


 だからこの近くに人は多くても電気の昇華の取得をしようとしてる人はいないのか。それでもあちこちから雷鳴は聞こえているし、落雷の様子も見えるから、ある程度は散らばってやってる訳か。


「それなら私達も空いてる場所に移動して、ヨッシの電気の昇華を取るのです!」

「うん、そうしてもらえるとありがたいよ。あ、そういえばハーレは確定に出来そうな進化先が出たってメッセージに書いてたよね?」

「詳しくは聞けてないから、詳細を聞かせて欲しいかな!」

「ふっふっふ、了解なのさー! まずは――」


 あ、サヤとヨッシさんはアルの木で不完全ながら雨宿りをしながら、夕方にヤナギさんから『スキル強化の種』とかのアイテムが交換出来た件を話し始めたね。まぁ、気にはなるだろうし、空きを探すだけなら全員でやる必要もないから別にいいか。


「アル、とりあえず俺ら2人で空きを探していくぞー」

「おうよ。今はその方が良さそうだしな」


 という事で、ヨッシさんの電気の昇華を取る為に空いてる場所を探していこう。まぁぶっちゃけこれは空中でも構わないから、厳密には近くに巻き込むような人がいない場所への移動だなー。


「あ、そうだ、アル、『特性付与の水』ってもう使えたか?」

「……いや、ログイン障害の件でそもそも使用を頼めてねぇ。ま、すぐに必須って訳じゃないから別に構わんが」

「そういうとこでも影響が出てるのか……」


 今のログイン障害の最中であれば、まぁそういう事があっても仕方ない。運営さんも大変だろうし、今すぐに使えないと困る訳でもないなら無理に押し通すほどの事じゃないか。


「ところでケイ、正直なところを聞くぞ。今回のログイン障害はどう思う?」

「んー、何か違和感はあるけど、その正体がいまいち分からん」

「……やっぱりそんな印象か。いったんに何かあったのかと質問しても『現在、混雑の緩和の為の対応中です』って言われたからな」

「……ん? いったんってそんな風に答えたのか?」

「そうだが……ケイはチョーチだったか。ケイも聞いてみたのか?」

「聞いた内容は同じような感じだけど、『詳細はお答え出来ません』って言ってたぞ」

「……具体的な内容を答えてもらえないのは同じだが、返答内容が違うのか」


 ふむ、いったんとチョーチで同じような質問をしても返答が違うのは、そもそもの役割が違うからか? チョーチは本来は運営というか開発の補佐用のAIだから、ユーザーに対する受け答えは雑なのかもしれないなー。


「……なんだか、少し嫌な予感がするな」

「アル、嫌な予感ってなんだ?」

「……フルダイブのオンラインゲームでは遭遇した事はないんだが、旧来型のフルダイブじゃないオンラインゲームで似たような事に覚えがあってな。もしそうだとしたら、正気じゃねぇぞ、そいつ」

「……そいつ?」

「あー、いや今のは気にすんな。似てるとは言っても、そもそも昔のゲームでの話だし、実行するのには前提条件がまるで違うからな」

「ふーん?」


 具体的な内容は分からないけど、今のVR機器が主流になる前の時には今みたいなログイン障害が発生してた事はあるのか。

 ん? よく覚えてないけど、それってちょっと何かで見たような覚えがあるような、ないような……? あれ、具体的にどういう内容だっけな?


「ねぇ、ケイ、アル? ログイン障害って何の話かな?」

「あー、俺らがログインした時に、ログイン障害が発生しててさ。俺はほとんど影響は受けなかったけど、アルとハーレさんは整理コードの配布まで引っかかったっぽい」

「わっ、それって結構な混雑かな!?」

「今ってそんな状態になってるの?」


 ふむ、サヤとヨッシさんのこの反応だと、ゲーム内でユーザーが企画を行ってるとか、運営からのゲリラ的なイベントがあったって事もなさそうだ。……流石に群集拠点種の近くにいて気付かないはずがないだろうし。


「サヤ、ヨッシ、何かどこかの人が突発的に大々的なイベントの告知とかしてなかったー? もしくは運営からのゲリラ的なイベントー!」

「……どっちも覚えはないかな? だよね、ヨッシ?」

「聞き逃してる可能性もあるにはあるけど、ログイン障害が起きるほどなら、私とサヤが全然聞いてないのも不自然だね?」


 結局、ログイン障害については何も分からずか。まぁ、既にログインしてるから影響はないはずだし、ログイン障害が解消すれば運営から報告はあるはず。


「ログイン障害は気にはなるけどログイン済みなら特に問題ないはずだし、とりあえず気にしない方向でいこう! ぶっちゃけ考えてるだけ時間の無駄っぽい!」

「賛成なのさー! という事で、周囲に誰もいなさそうだから、ヨッシの電気の昇華称号を取るのです!」


 おっと、いつの間にやら周囲に誰もいない位置に居たみたいだね。まぁ最悪、誰かに電気の操作で雷を操作して当てたとしてもダメージは無いから問題ないけど。


「さてと、ハーレもアルさんも強化になってるんだがら、今度は私の番だね」

「ヨッシ、ファイトかな!」

「これでヨッシの昇華は3つ目なのさー!」


 なんだかんだでみんなも結構強化されてきたもんな。これでヨッシさんの電気魔法と電気の操作と雷の操作が一気に強化されるから……って、ちょい待った。


「ヨッシさんって実は支配進化の条件は満たしやすそうな状況……?」

「あ、うん、そうだよ。雷の操作は昇華称号で電気の生成量が増えたら一気にLv3まで上げるつもりだから、そこで支配進化は出ると思うよ」

「あー、やっぱりか」


 今の今まで意識してなかったけど、地味にヨッシさんも支配進化の条件達成は間近ではあるんだな。でも、ヨッシさんはウニとの合成進化の予定だし、その辺はどうするんだろ?


「あ、そうそう。そこでみんなに相談があったんだけど……良いタイミングみたいだから先にこっちをやっちゃうね。『電気の操作』!」


 そして俺らのほぼ真上の雷雲の中で放電が見えた瞬間に、それがヨッシさんに支配されて近場の木へ向けて落雷へと変わっていった。


「うん、電気の昇華称号はこれで獲得完了だね!」

「ヨッシ、やったかな!」

「おめでとなのさー!」

「ヨッシさん、おめでとさん」

「ヨッシさん、取れて良かったな」

「みんな、ありがとね。あー、これで少し気を張る必要が無くなったよー」


 あ、いつ電気の昇華を手に入れられるか分からなかったから、ヨッシさんなりに気を張ってたっぽい。ふー、そういう状況から解放されてホッとする気持ちは分かるよなー。


「ところで、ヨッシの相談ってなーに?」

「あ、それなんだけど――」

「ヨッシさん、割り込みで悪い。その話は移動しながらだと駄目か?」

「ううん、それで問題ないよ。それなら移動しながらで……はい、みんな、これね」


 あ、ヨッシさんからのPT申請か。まぁこれから望海砂漠に向けて移動するんだからここでPTは組んでおく必要はあるよね。という事で、承諾!


<ヨッシ様のPTに加入しました>


 既にみんなは加入済みになっていたから、これでPTの結成は完了だな。さて、それじゃ望海砂漠へ向かう為に草原エリアに行くとして……俺とハーレさんは今日の昼にケインとの模擬戦の為に、草原エリアへの帰還の実はもう使用済みなんだよなー。

 まぁ既に新しい帰還の実は貰ってるから使えない訳じゃないけど、その辺はどうしよう……って、ミズキのとこまで戻って転移で行けば良いだけじゃん!?


「それじゃ一旦ミズキのところまで戻って森林深部から草原に転移かな?」

「私とケイさんは既に草原エリアへの帰還の実は使用済みなので、その方が助かるのさー!」

「あー、そういえばそうなるのか。よし、ならサヤの案で転移をしていくか」

「了解! そこから望海砂漠に行くまでの間に相談させてね」

「ほいよっと! その辺は任せとけ!」


 多分、支配進化が実行出来る可能性が出てきた事による相談なんだろうね。ただ、ヨッシさんは今のウニと支配進化は考えてなさそうな気がする。……なんとなくだけど。


「さてと、とりあえず草原エリアまで移動だー!」

「「「「おー!」」」」


 ちょっと情報収集もしたいとこではあるけど、まずはヨッシさんからの相談に乗るのが先だね。情報収集についてはその後でいいや。

 それじゃ夜の部のLv上げについても頑張っていくぞー! 目指せ、今日中にLv27!


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― 新着の感想 ―
[一言] 事件かぁ~
[一言] >ログイン規制 もしかしてチーター対応とかかな? 本編には出て来なさそうだし、出て来ても「垢BANしました」って運営通知からの掲示板ネタ行きかな?
[一言] あぁ、F5連打的なやつかな? フルダイブだとDoSをどうやるのか知らんけど
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