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第928話 樹木魔法の検証の結果


 アルがいつの間にか覚えていた樹木魔法で色々と試してみている最中だけど、これはちょっと驚いた結果になったなー。土に触れる度に加速していって、最終的にはかなりの速度で根が伸びていったよ。


「……てか、的の木が一撃で貫通かー。うっわ、その先にある木も何本か折れてるじゃん」

「かなり速度と威力が上がったのさー!?」

「……これ、空中からの狙い撃ちに使えるんじゃねぇか?」

「狙いがバレバレではあるけど、まぁ不意打ちには使えそ――」


 あ、ちょっと待てよ。バレバレなのは間違いないけど、逆にそれも利用出来そうだな。今の手段を囮にしつつ、並列制御で地面の下からの串刺しが本命というのもありなはず。


「あ、ケイさんが何か更に思いついたっぽいのです!?」

「どんな手段だ、ケイ?」

「簡単に言えば今のを囮にして、地面から串刺しが本命って感じの作戦だな。照準の指定は、並列制御でも少しならタイミングをズラせるだろ?」

「……まぁそりゃ可能だが、相変わらず考える事がえげつねぇな」

「でも、それでこそケイさんなのさー!」


 えげつないとは失礼な! 確かにえげつない気もするけど、これは明確に有用な手段なはず。追撃の根が地上に降りていくのを誤魔化す必要はあるけど、奇襲にはもってこいの手段だな。

 でも、この速度って……もしかすると、それほど本来の性能ほどの加速にはなってない可能性もありそうだ。元々は地面から上へと突き上げているスキルだし、今回ほどみたいに周囲への影響も分からない。

 そして地味に土の操作への影響が出てないのが一番気になるんだよな。さも、土の中を根が通るのは当然みたいな感じで抵抗もまるで無しだし、強化にしてはちょっと違和感がある。……ちょっと試してみるか。


「アル、もう1つ実験をいいか?」

「そりゃいいが、今度は何をするんだ?」

「何も手を加えてない場合と、さっきの土の加速での速度比較だなー。どっちが速いのか、それを試してみたい」

「……確かにそれは知っておきたいとこだな」

「体感じゃどっちが速いのかよく分からないのさー!?」


 まさしくハーレさんが言っているように、体感では条件が違うからどちらが速いかが分からない。いや、微妙に見極めてたハーレさんがそれを言うか? まぁいいや、とにかく見えない地面の中での加速の方が速い可能性が高いんだよな。

 ただし時間差で奇襲をかける作戦を考えるなら、どのくらいの速度の差があるのかを把握しておきたい。


 まぁぶっちゃけて言えばLv5のルートウォールで似たような事はしてるんだけど、こっちは運用方法が変わってくるからね。実際に使ってみたら空中で土に触れた時点で向きが変わる挙動になったんだから確認は大事。


「アル、頼めるか?」

「地味に重要そうだし、やるならとことんやってみるか」

「もう土は初めから並べておくのです! 完全に一直線だったし、一度向きが変わってから微調整だけで済ますのさー!」

「ま、さっきのを見た感じだとそれが良さそうだな。アルは……並列制御で今回も土を操作するか?」

「……それはやめとくわ。昇華なしじゃ多分間に合わんし、そもそも並列制御でルートスキューアを同時に発動する必要もあるだろ」

「そりゃそうだ」


 一度加速に入ったルートスキューアによる根を、土の操作で追いかけるのはかなり厳しい。少なくとも昇華になるLv6の操作精度は欲しいとこか。

 まぁどっちにしてもアルには並列制御でルートスキューアを同時に使ってもらう必要があるもんな。さて、それじゃ速度検証をやっていきますか。


「アル、次はさっきの木の右側のやつで。どっちが速いかは、木にどっちが先に当たるかで分かるだろ」

「確かにそうなのさー! でも多分地面の中の方が速い気もするのです!」


 さて、それじゃ俺の土の操作もハーレさんの土の操作に合わせて並べていこうっと。最初にアルの根に触れた時点で、的になる木までの角度が決まるからそれに合わせて多少の位置移動は必要だろうけど、そこさえ注意していれば問題ない。


「ハーレさん、準備は良いか?」

「問題なしなのさー!」

「それじゃ、アル、頼んだ!」

「おうよ! 『並列制御』『ルートスキューア』『ルートスキューア』!」


 そうして速度比較の検証が始まった。片方はそのまま地面へと潜っていき、もう片方はまず俺の土の操作の1つに触れて加速が始まる。すぐにその進んでいく角度に調整を入れて、次々と土に触れて更に加速していく。

 だが、全ての操作した土の塊を通り終えた頃に、地面から的にしていた木の下から根が突き出してきた。そして、そこに追撃のように横から根が突き刺さっていく。……まぁ空振りというか、後ろの部分の木を何本かへし折ったけど。


「あー、やっぱり地面の中の方が速いのか」

「みたいだな。これは土に触れてる時間が長ければ長いほど、早くなっていく感じだな」

「でも、土で方向はバレバレなのさー!?」

「まぁ、そこは仕方ない部分だけど……」


 あ、でもさっきはこのルートスキューアでの時間差の不意打ちも考えたけど、それだけじゃなくてもいけるのか。

 あの根を伸ばす感じだけなら根の操作で偽装は出来るし、天然産の土を用意したのを他の行動……例えばチャージをしている状態の目隠しに使う事も出来る。ルートスキューアの加速に使う為の土の操作のドサクサに紛れて、前に考えた落とし穴を掘ってしまうという手もあるな。

 ふむふむ、工夫の仕方によっては色々と仕掛けられるね。場合によっては、同時に複数の役割を持たす事も出来そうだ。


「あ、ケイさんがまた何かを企んでいるのです!?」

「企むって……空中からルートスキューアでの攻撃をしつつ、土の操作でドサクサに紛れてチャージの目隠しや、落とし穴を作るのにも使えそうだって思ったくらいだぞ」

「十分過ぎる程、もう企んでんじゃねぇか!?」

「しかも地味に厄介な内容なのさー!?」


 企んでないと主張はしてみたものの、これは普通に企んでたよ。まぁでも、この辺は次にある対人戦では役立つ作戦のはず。

 次にある競争クエストが前と同じ仕様かは分からないけど、大人数での集団戦という部分は変わらないだろうし、真っ向勝負だけではなく作戦も重要になってくるからね。


「よし、とりあえず今までの検証内容と、思いついた作戦はまとめの報告欄に上げてくる!」

「あー、確かにその方が良いだろうな」

「それじゃ、報告はケイさんに任せて、ヤナギさんを探しに行くのさー!」

「あ、そういやそうだっけ」


 ハーレさんが情報ポイントを大量に手に入れているから、アルの樹木魔法を見てからヤナギさんを探してアイテムの交換を狙うんだったね。

 ふー、樹木魔法の確認だけのつもりが結構な検証になったからうっかりと忘れてしまってたよ。いやー、何かに集中するとつい忘れる事ってあるよなー。


「ケイさん、忘れてたのー!?」

「……正直に言えば、ちょっとだけ」

「むぅ……まぁ、重要な検証にもなったのでいいのです!」

「とりあえず上から飛んでヤナギさんを探しにいくか。ケイ、その間に報告しとけ」

「ほいよっと」

「ヤナギさん、見つかるといいなー!」


 とりあえず移動の為にアルの上に乗って、もう必要のない土の操作は解除だな。ちょっと近くの木が何本か無惨な事になってるけど、まぁミズキの森林……いや、別にここに限った話でもないか。

 特訓に使われる場所ではよく見かける光景だし、普通のエリアでも戦闘があった跡としてこういう状態の木とかはあるもんなー。


 さて、ヤナギさんの捜索と移動はアルとハーレさんに任せて、俺は検証した内容と思いついた範囲の応用方法をまとめに報告を上げてこようっと。

 この辺の情報をまとめに上げておけば、他の人が更に発展させてくれる可能性もあるから、そこら辺を期待だね。




 そうして手早くまとめに報告を上げ終わり、俺もヤナギさんの捜索に加わっている。うーん、それなりに移動してきたんだけど、ヤナギさんは見当たらないなー。現在地としては、ミズキの森林の南の外れの位置か。


「あぅ……ヤナギさんが全然見つからないのです……」

「ハーレさん、ヤナギさんってこんなに見つけにくいもんなのか?」

「常に移動してるから、出会えるかどうかは運次第なのさー! 場合によっては既に探し終えた場所に移動してる可能性もあるのです……」

「あー、そういう可能性……」

「そうなると完全に運だな……」


 俺はこうやって明確にヤナギさんを探してみた事はないけど、ここまで見つからないものだとは思ってなかったな。

 こうして実際に探してみるとミヤ・マサの森林で固定位置にいるキツネのマサキが人気で、早いもの勝ちの取り合いになる理由がなんとなく分かった。遭遇出来るかも不明な運任せよりは、可能性はありそうだしね。


「ハーレさん、もう15分で19時だし諦めない?」

「うー! ギリギリまで探すのです!」

「ま、今日は色々とあったし、これくらいは良いんじゃねぇか? 夜からもLv上げはするんだしな」

「……まぁそれもそうかー」


 スキルのLv上げの為の特訓とかを考えてたけど、まぁ今日は色々とトラブルだらけだったしなー。それを考えるなら、こうやってゆったりとヤナギさんを探しながら飛んでいるのも悪くないか。


「おっ!?」

「ケイさん、ヤナギさんですか!?」

「あ、悪い。ヤナギさんじゃない」

「あぅ……ガッカリなの……って、空に向かって根が伸びてるのさー!?」


 えーと、少し離れた前方に伸びている根の先には赤い大きめな鳥の人がいるね。……というか、地面からかなり高いところまで根が伸びてきてるんだけど、これってどういう状況だ?

 伸びた根が消えていったって事はルートスキューアか? アルが使っていた時も、攻撃後はこういう風に消えていたもんな。……ん? 根が伸びてきてた辺りで土が山盛りになってるっぽいのが木々の間から見えるんだけど、あれは何事?


「おや、ケイさんとアルマースさんとハーレさんじゃないかい?」

「あ、ソラさんか!?」


 急な光景だったからつい名前を見忘れてたけども、今の根の標的になっていたのはソラさんだったっぽい。俺らに気付いて近くまで飛んできたみたいである。

 って事は、地上にいるのは紅焔さん達か! もしかすると、今の根はライルさんの松の木の根?


「ソラさん、今の根はなんだ?」

「あぁ、アルマースさん、それかい? ちょっと前に上がってたケイさん達の報告を見て、ライルが思いついた方法を試していたところでね。まだ実験の途中だけど、内容を聞くかい?」

「お、それは聞きたいとこだな!」

「あぅ!? あぅ、あぅ、あぅ……」


 あ、ハーレさんが俺とソラさんを交互に見比べながら葛藤してるよ。ヤナギさんを探したいという気持ちと、ソラさんの話を聞きたいと言った俺への配慮で悩んでるっぽい。

 あー、ソラさん達なら後で報告は上げるだろうし、今はハーレさんのやりたい事を優先しますかね。


「ハーレさん、どうかしたのかい?」

「あぅ……なんでもないのです……」

「ソラさん、検証内容については後で報告を上げるよな?」

「え? あぁ、それはそのつもりだけど、どうかしたのかい?」

「今、ちょっと探しものの最中なんだよ。ダメ元で聞いてみるけど、ヤナギさんを見たりしなかった?」

「あぁ、そういう事かい。それなら、ここから少し西に行った辺りで見かけたよ。今ならまだ近くにいるんじゃないかな?」

「ソラさん、ホントですか!?」

「ホントだよ。だけど、ヤナギさんは移動していくから急いだ方がいいかもね。……今回のは特に」


 ははっ、ダメ元でも聞いてみるもんだな。まさか、ここでヤナギさんの居場所について有力な手掛かりが掴めるとはね。

 でも、最後の一言が微妙に引っ掛かるな? ふむ、これは冗談抜きで急いだ方が良いかもしれない。


「ソラさん、今は急ぐからまた今度って事で! アル、ハーレさん、ヤナギさんのとこに行くぞー!」

「おうよ。ここから少し西だったな」

「絶対に見つけるのさー! ソラさん、情報ありがとねー!」

「いやいや、これくらいはどうって事ないよ。それじゃまたね」

「またねー!」


 そうして偶然遭遇したソラさんと別れ、西の方向へと進んでいく。少し前までヤナギさんがこの近くにいたなら、見つけきれる可能性は高い。


「ケイさん、私の方を優先してくれてありがとうなのさー!」

「まー、ソラさん達なら大急ぎで聞かなくても大丈夫だろうしな。それに折角の目撃情報なんだから、活用しない手はないだろ」

「絶対に無駄にしないのです! ヤナギさんを見つけるぞー!」


 気合たっぷりなハーレさんは、巣の中から身を乗り出しつつ周囲の様子をくまなくチェックをしていく。俺もヤナギさんを見落とさないように、しっかりと探しとこ。


「ケイ、さっきのソラさん達がやっていたアレンジってどういう内容だと思う? ルートスキューアにはあの高さまでの射程はないはずだぞ?」

「あー、あれか。地面の方に土が盛り上がってるのが見えたけど、それが関係してそうな気がする……」

「……ちょっと待て。根が通る経路に土を盛れば、その分だけ射程が伸びるのか!?」

「さぁ? そもそもルートスキューアの射程ってどう決まってるんだ?」

「敵との直線距離……ではないな。ちゃんと確認してみないとわからんが、地面から出た時の敵までの距離の可能性はあるな」

「ま、その辺は後で報告が上がるだろうから、それで確認だな」

「……それもそうだな」


 いずれにしても、俺らが試していなかった別の何かをソラさん達が見つけた事は間違いなさそうだ。いやー、思った以上に早く応用方法が出てきたもんだねー。


「あー!? ヤナギさん、発見です!」

「ハーレさん、行ってきていいぞ」

「やったー! それじゃ行ってきまーす!」


 ヤナギさんを見つけて待ち切れないとばかりにウズウズしていたハーレさんにそう言ってあげれば、即座にアルの上から飛び降りて、クラゲの傘を広げてパラシュート代わりにして降りていった。

 なかなか見つけられなかったヤナギさんをようやく見つけられて嬉しかったみたいだね。


 さてと、19時まで後10分ってところか。ヤナギさんから、何かしらのアイテムを交換し終えたら晩飯の為にログアウトだな。

 ラインナップはランダムって話だから、ハーレさんが欲しいものが確実に手に入るとは限らないってとこが問題か。欲しいアイテムがあれば良いんだけど、それは運次第だからなんとも言えないなー。


「ケイはヤナギさんのとこには行かないのか?」

「あー、ハーレさんが戻ってきてから考える」

「おー!? ケイさん、アルさん、絶対に来るべきなのさー! これは大チャンスなのです!」

「……え、何か良いものがあったのか!?」

「ケイ、すぐに行くぞ!」

「だな!」


 ハーレさんがこういう反応をするって事は、相当良いものがラインナップにあったっぽい! 戻ってきてから内容を聞いてからにしようと思ったけど、これはすぐに見に行った方が良さそうだ!

 あ、もしかしてソラさんの意味深な一言はこのハーレさんの反応に関係してる? 今のヤナギさんと交換出来るアイテムに何があるんだ?

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― 新着の感想 ―
[一言] ヤナギさん、何があるのかな~?
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