第924話 これからの予定
合同撮影会を終えて、撮ったスクショの軽い確認もした。これで完全に合同撮影会は終了である。
さて、これで今のメンバーは解散だけど、この後は……とりあえずサヤとヨッシさんは晩飯の為にログアウトか。うーん、相変わらず天気は悪いけど、雨も降ってなければ雷も発生してないなー。
「さてと、急遽メニュー変更しちゃったから私は晩御飯の食材の買い出しに行ってくるけど、シュウさんとルストはどうする? あ、その前にレナに連絡入れとかなきゃね」
「それなら僕も一緒に行こうか。荷物持ちくらいは任せておくれ」
「……周囲の目が痛いので遠慮しておきます。私は集合場所へ戻って、そちらで演出している方々のスクショを取りに――」
「はい、ルスト、待ったー! 気持ちは分かったけど、ちょっと連絡を取るから少し待ってね? あ、レナ? そっちでの演出をする人は……あ、演出をするのが順番待ちになってるんだ? それなら少し晩御飯で離れても大丈夫? うん、うん、それじゃ食べ終わったら戻るね。 あ、そうそう、ルストが少しの間そっちで常駐したいみたいなんだけど、暴走したら無理矢理で良いから止めてもらえる? うん、仕留めちゃってもいいから。うん、うん、それじゃよろしくー!」
「弥生さん、仕留めても良いと聞こえた気がするのは気のせいですよね!?」
「気のせいじゃないよー? 止める人がいない時に暴走されたら流石にあれだから、レナに仕留めてでも止めるようにお願いしたからね。仕留められたくなかったら、大人しくスクショを撮ること! 分かった?」
「……出来る限り、気をつけたいと思います」
どうやら弥生さんとシュウさんはこれから晩飯を作る為の食材の買い出しに行くみたいだね。……うん、新婚夫婦のイチャイチャっぷりな感じの買い物風景が目に浮かぶから、ルストさんが同行したくない気持ちは何となく分かる。
あー、でも弥生さんとシュウさんが夫婦なのはとっくに知っているけど、結婚してからどのくらいの期間が経ってるのかは知らないな。……まぁ今まで会った時の様子から考えて、どう見ても夫婦仲は良好だよね。
「さて、私達はそんな感じだけど、みんなはどうー?」
「私とヨッシは一度ログアウトかな?」
「うん、そうなるね。あ、今日は私が作らないといけないから、戻ってくるのは少し遅くなるかも? でも、下拵えはもう済ませてるから、多分ケイさん達よりは先に戻ってくるとは思うけどね」
「おー!? ヨッシは何を作るのですか!?」
「弟の要望で唐揚げだね。まぁ今日は2人分だし、そこまで時間はかからないよ」
「……じゅるり」
あ、これはハーレさんが思いっきり食べたくなってるパターンだな。というか、ヨッシさんの家は今日は夕食の時に両親がいないっぽいなー。
どういう仕事をしてるのか分からないけど、昔あったというブラック企業ってのが死語になってるから、どうしても夜に動かなければならない類の仕事かな?
どうしても夜勤をしなければならない業種は存在してるしね。医療系とか、警備系とか、保守点検とか、そんな感じの業種。高度なAIで代替するっていうのもあるにはあるけど、完全にそれのみでは不完全な部分があるから、人がいるべきって感じらしいもんな。
あ、そう考えてみるとこのゲームもそうか。基本的にいったんも業務用のAIになるし、開発用にチョーチってAIもいたよね。とはいえ、運営がいったんの調整に動く事もあるし、大きめなトラブルがあった際の最終判断は運営の人がやってるもんな。
「あ、そうそう。ハーレ、お父さんがちょっと奮発して良いものを用意してくれる事になったから、少し楽しみにしててね?」
「あ、この前学校で言ってたやつかな?」
「うん、それだよ、サヤ」
「それ、私は聞いてないのさー!? ヨッシ、それってどんなのー!?」
「まだ認証が下りてないし、使えるようになってからのお楽しみだね」
「わー、なんだろー!?」
ふむ、VR機器の拡張システムなら公的機関からの追加の承認が必要にはなる。確か追加認証の内容にもよるけど、フルダイブの制限時間が1日1時間くらいは伸びたよね?
そういうのもあって追加の認証が必要になるものって、業務用のお高い専用機を使う場合じゃなければ結構限定されるはず。
ヨッシさんが使いそうなもので、一般向けのVR機器……まぁ正確には認証があるのはホームサーバーの方だけど、そこはまぁいいや。その中で追加認証が出来るものって……あー、なるほど、多分だけどVR空間での味覚や調理の再現システムか。
色々な料理を作ってみたいけど食べきれないとか、料理の勉強をしたいからとか、そういう理由で個人利用の範囲でなら認証の申請できるやつだ。話の流れ的に多分これっぽい。誰でも自由に使えるとリアルでの飲食を忘れる人が出るから、追加認証が必要なんだよな。
「ほほう? なんとなく察しはついたけど、ヨッシさん、将来はそっち系の進路を考えてたりするの?」
「弥生さん……まだそこまではっきりとした目標でもないけどね。でも、まぁ私が作ったもので嬉しそうにしてくれるのは私も嬉しいから、そういうのもありかなって少し考えているところです」
「そっか、そっか! そういう気持ちは大事だからね!」
「そういうの分かるっす! ヨッシさん、頑張るっすよ!」
へぇ、ヨッシさんはまだ明確に決めている訳ではないけど、それなりに将来の目標とかを既に考えたりしてるのか。
なるほど、だからこそヨッシさんのお父さんもその辺を奮発して追加認証を行えるようにしたのか。……割と大真面目に、公的機関からの追加認証にはそれなりにお金はかかるから、ちょっとやりたいくらいの軽い気持ちでは出来ないしね。
病気の治療で食事制限がある時とかなら、補助金があるんだっけ? うーん、その辺は詳しくないから細かなとこまでは分からん!
「さてと、おいら達はそれぞれ用事があったりなかったりバラバラっすけど、皆さんも色々バラバラみたいっすから、ここで解散が良さそうっすね!」
「うん、そうみたいだねー。それじゃ、これにて解散という事で!」
その弥生さんの号令にそれぞれみんながお疲れ様と挨拶をし合っていき、今回の合同撮影会は終了となった。
<弥生様のPTとの連結を解除しました>
<煮付け様のPTとの連結を解除しました>
そこから連結PTを解除して、弥生さんとシュウさんはログアウトをしていき、ルストさんは合流場所へと駆けていき、煮付けさん達はどこかへ転移していった。
「それじゃ森林深部に戻ってから、私とヨッシはログアウトかな?」
「サヤ、待った! サヤは共生進化に戻さなきゃいけないし、ここでログアウトの方が良いと思うよ?」
「あ、確かにそれはそうかな! ……つい忘れてた」
「そういう事もあるのさー! それじゃ今のうちに夜からの合流場所を決めておくのです!」
「それもそだなー。『望海砂漠』の地下の大空洞に行ってみるって話になったし、集合場所は草原エリアがいいか?」
「ふむ、まぁケイの意見が無難なところか」
あー、でも俺とハーレさんは草原エリアへの帰還の実って既に今日は使ってるんだよなー。まぁ新しいのは貰ってるから問題はないけどね。
他にも森林エリアや荒野エリアの帰還の実もあるから大丈夫か。うん、帰還の実も群集拠点種間の転移も便利なものだよ。
「集合場所は草原エリアで問題ない人ー?」
「俺はそれで良いぜ」
「問題ないのです!」
「私も大丈夫かな!」
「あはは、みんなが大丈夫ならそれで決定だね」
「だなー! それじゃ夜からは草原エリアに集合で!」
「「「「おー!」」」」
そうして夜からの集合場所が決まれば、サヤとヨッシさんは急ぐようにログアウトをしていった。……ちょっとだけど、6時を過ぎちゃってたもんなー。
「さて、とりあえず俺はクジラと木を共生進化に戻してくるわ」
「ほいよっと」
「アルさん、いってらっしゃいー!」
「おうよ!」
アルも木だけになっていた状態から、いつもの共生進化に戻す為に一旦ログアウトをしていった。ま、ここは必要な手順だし、アルが戻ってくるまで少し待ちますか。
それはそうとして、良いタイミングでハーレさんと2人になったからちょっと聞いてみよ。多分、ハーレさんが気付いてないって事はないと思うんだよな。とりあえず他の人には聞こえないように小声にしておこうっと。
「ハーレさん、ヨッシさんが何をしようとしてるのか、気付いてるよな?」
「うん、気付いてるよー! でも、まだヨッシ自身が料理人を目指すかを決めきってないから、決意が固まるまでは触れないでおくのです! それにヨッシがそういうのを考えるようになったの、つい最近なんだよー! ……多分、私が心配かけ過ぎてたのもあると思うのです」
「あー、なるほどね」
ふむふむ、確かにヨッシさんもハーレさんもこのゲームを始めるまで……いや、始めてからもしばらくはお互いに距離が離れてしまった事で色々と考えてたみたいだしな。
今はそれが吹っ切れて、ヨッシさんはヨッシさんなりのこれから先の事も考えるようになってきたって事か。……まぁ料理の方向を考えているのは、これまでのハーレさんの影響も大きい気もするけどね。
「だから、私はヨッシが自分の意思で、そうしようと完全に決めた時に全力で応援するのです! あ、これはヨッシには内緒だよ!?」
「ほいよっと。まぁ、今の時点でそれは言えないか」
でもまぁ、ヨッシさんの事だからハーレさんがそういう風に考えてるって事も気付いていそうではあるよな。
ま、ヨッシさんはまだ高校1年生だし、もうすぐ7月とはいえ、まだ高校1年生の7月だ。進路を完全に決めるには、時間の猶予はある。……むしろ、俺の方が先にその時が来るんだから、そこは俺もしっかり考えていかないとな。
おっと、そういう話をしてる間にアルが戻ってきた。うん、いつもの木を背負ったクジラの姿だな。ちゃんと共生進化に戻せてきたようである。
「おし、戻ったぞ」
「アルさん、おかえりなのさー!」
「アル、おかえり。このまますぐに海水の昇華を取りに行くか?」
「あー、そうしてもらえるとありがたいが、特に用事とかはないのか?」
「俺は特にないぞー」
「同じくなのさー! 今はアルさんの海水の昇華を最優先で良いのです!」
「そうか。なら、お言葉に甘えさせてもらうとしますかね」
「それじゃ海エリアまで転移をしていきますか」
「はーい!」
「おうよ」
という事で、手早く次にする内容が決まって移動開始である。海エリアへの帰還の実はあるから、これで転移してしまうのが一番早い! あ、水のカーペットはもういらないから解除しとこ。
<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 45/81 → 45/83
これで良しっと。それにしても封熱の霊峰はずっと雨が降りそうだったけど、結局降らなかったなー。ヨッシさんの電気の昇華は早めに取れれば良いんだけど、こればっかりはどうなる事やら……。
<『封熱の霊峰』から『始まりの海原・灰の群集エリア5』に移動しました>
という事で、やってきました、海エリア! 俺もアルもハーレさんも、海への適応は問題ないからそのまま海中で問題なし!
ふむ、こっちはよく晴れてるみたいで太陽の光が射し込んできている。うん、良い雰囲気。 あ、忘れないうちに新しい帰還の実も貰っとこ。
とりあえず周囲を見回してみたけども、群集拠点種の前にしては人が少ない気もする。これはスクショの撮影に行ってる人が多くて、初期エリアの人手が少ないとかそんな感じか?
全然混雑してないから、アルとハーレさんの姿をすぐに見つけられて合流出来てるしね。
「こりゃ、スクショのコンテストの受け付けは海水の昇華を取ったらすぐにやっといた方が良いかもな」
「その方が良さそうなのさー!?」
「だなー」
今日の日付が変わるまでがスクショコンテストの受け付け時間だからまだ時間には余裕があるとはいえ、終了間際に混雑するのは容易に想像出来る。それなら今の混雑していないタイミングで交換してしまうのが早いよな。
まぁ俺自身は前に受け付けをしてからそれほど新しいスクショがある訳じゃないから問題はないけど、ハーレさんのは多いはずだから空いている時にやる方が良さそうだよね。
「んじゃ、サクッとアルの海水の昇華を取ったらスクショのコンテストの受け付けって事で!」
「おう、それでいいぜ」
「了解なのさー!」
「それで海水の昇華称号の取得はどこでやる?」
「ここの海面で良いんじゃねぇか? 別に操作した海水を、海中で操作しなきゃいけないって制限はないだろうしな」
「あ、そういえばそうか」
「それならすぐに終わりそうなのです!?」
うん、本当にすぐに終わりそう。海面でも海水の操作は出来るし、これだけ良い天気なら誰かがいても視認はしやすいから巻き込む可能性も低いはず。
「それじゃアルさんの海水の昇華称号の取得をやっていくのさー!」
「ほいよっと」
「おうよ」
この海エリアへ来たのはそれが目的だし、アルが海水の昇華で海流を扱えるだけの海水を生成出来るようになれば、色々と手段は広がるしね!
俺とハーレさんは手早くアルのクジラの背中の上に乗り、そのまま海面へと浮上していく。さーて、いくらなんでもここの海上に人が大勢いて実行出来ないという事はないはず。
よし、海面まで辿り着いた。まずは海上の周囲の様子を確認だな。あ、この感じなら大丈夫そうだ。
「おー、ちょいちょい飛んでる人はいるけど問題なさそうだな」
「そうみたいなのさー!」
「だな。それじゃ早速始めるぜ。『海水の操作』!」
そうしてアルが海面の海水を操作の支配下に置いて、大量の海水を空中へと持ち上げていく。おぉ、水の昇華で扱える水量よりも遥かに多いな、海水の昇華!
「さて、水流の操作は水流を作る必要があったから、海流の操作も同じように海流を作れば良いんだろうな。ま、海流の操作は手に入らんだろうが……おらよっと!」
まぁ、既に海流の操作は持ってるもんなー。でもまぁ、重要なのはそっちじゃなくて、生成量を増やす方のスキルである。今、アルが空中で海流を作り出していってるから、これで取得は終わるはず。
「よし、『海流に昇華させたモノ』の称号と『生成量増加Ⅰ・海水』のスキルが手に入ったぞ」
「目標達成、早かったなー」
「でも早くて悪い事もないのです!」
「だな」
うん、まぁ電気の昇華みたいに天候に左右されるよりかは、こうやってすぐに取れる方が楽だもんな。……電気の昇華、なんでこう取りにくいんだろう?