第923話 撮れたスクショの確認
発火草の群生地でのスクショの撮影が終わって、ひとまず待機場所へと戻ってきた。浄化魔法を使って反動で身動きが取れなくなっている人は、俺の水のカーペットに乗せて運んできたよ。
ふぅ、浄化魔法の使用にはデメリットがあるのを忘れていたもんなー。とはいえ、しばらくすれば動けるようになるから大丈夫のはず。
さて、次の人達が待ってたから慌てての撤収にはなったけど、みんなも揃ってきたし一息つけるね。
あ、そういえばコケが増殖したままだけどどうしよう? んー、次の人達の邪魔になってもいけないから、群体化を解除しとくか。
<行動値を3消費して『群体化解除Lv3』を発動します> 行動値 33/79(上限値使用:4)
<纏浄のデメリットが発動します>
ぎゃー!? そういや纏浄にはスキルを使ったらダメージを受けるっていう、このデメリットもあったー!?
というか、今は特に問題はないけど魔力値も減るんだっけ。普段使いをするには使い勝手が悪いよな、これ。
今のでロブスターのHPが減ったけど、コケの群体数も減った。……見える位置のコケは解除出来たし、とりあえず最小限のとこまで群体数を戻しとこ。
<行動値を3消費して『群体化解除Lv3』を発動します> 行動値 30/79(上限値使用:4)
<纏浄のデメリットが発動します>
うぐっ、ロブスターのHPがそれなりに減るなぁ……。まぁとりあえずこれで俺の残してきたコケは大体消せたはず。発光も解除しとこ。
<『発光Lv1』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 30/79 → 30/80(上限値使用:3)
<纏浄のデメリットが発動します>
無駄にロブスターにダメージを負い過ぎた気もするけど、とりあえずこれで問題なし。水のカーペットはそのままで良いとして……纏浄も解除しておくかー。って、ちょっと待てー!?
「……ケイ、なんでわざわざダメージ受けてんだ? 普通に纏浄を解除すれば良いだけだろ?」
「ちょうど今、そこに思い至ったとこだよ! 群体化してるコケを減らすのはともかく、それ以降は無駄な事をした……」
「あー、単に忘れてただけか。さて、俺は普通に纏瘴を解除しとくか。解除っと」
「私も纏浄を解除かな!」
あー、うん、みんな普通に纏瘴や纏浄を解除していってるね。……うん、残してきたコケを消す為に必要だったという事にしておこう!
ぶっちゃけ、ただの光らないコケなら残しておいても支障はなかった気もしてきた。全部発火草の根元に増殖させてたから、パッと見では分からなかったしね! ……しょうもない事を考えてないで、さっさと纏浄を解除しよ。
<纏属進化を解除しました>
<『同調強魔ゴケ・纏浄』から『同調強魔ゴケ』へと戻りました>
<『同調打撃ロブスター・纏浄』から『同調打撃ロブスター』へと戻りました>
<『浄化制御』『浄化の光』が使用不可になりました>
<『浄化制御Lv1』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 30/80 → 30/81(上限値使用:2)
よし、これで問題なし! ロブスターの減ってるHPは……まぁ自然回復に任せて問題はないか。
急速脱皮で回復させる手もあるけど、あれは変異して手に入れたスキルだし、あんまり人には見せたくないからなー。……変異元の脱皮は消えたままだけど、あれの再取得はどうしたものか。
ん? そんな事を考えてたら弥生さんがみんなの前に出て向き直ってきた。これは何か話があるって感じだね。
「みんな、お疲れ様ー! それじゃどんな風に撮れたか確認していきましょうー! 我こそはという方はどうぞ!」
「はい!」
あぁ、そういう内容か。まぁ確かにその確認はしておきたいし、やるのは今のうちにの方がいいよな。まだ18時までは10分くらいあるから、今ならまだサヤとヨッシさんも大丈夫なはず。
そして弥生さんのその呼びかけにハーレさんが元気よく挙手をして返事をしている。うん、手を挙げる必要は特にないとは思うけど……って、あれ? ここは絶対にルストさんが反応してくるとこだと思うんだけど……?
「あら? ハーレさんだけ? ルスト、どうしたのー?」
「……え? 何か言いましたか、弥生さん?」
「……うん、撮ったスクショを見返してて聞いてなかっただけね。はい、ルストは一番最後ー!」
「えぇ!? 何のことか分かりませんけど、それは酷くないですか!?」
「聞いていないのが悪いというか、何の事かも分かってないのに文句は言わない! それじゃハーレさんの撮ったやつから確認していくけど、煮付けさんはどうしたの?」
「角度の問題なんっすけど、発火草の群生地である意味がなかったなーって思ってるところっすね……」
「んー、まぁ団体部門はそこが難しいとこだし、今回は即興のメンバーだから仕方ないよ。って事で、そこは気にしない! 別に発火草を写したスクショって指定じゃないしさ」
「あ、それもそうっすね!」
そっか、別にスクショのコンテストとして発火草の群生地を活かしたスクショを撮れという訳ではないから、そこにこだわり過ぎる必要もないんだな。
「それじゃハーレさん、煮付けさん、ルストの順で手早く確認していこっか。という事で、ハーレさん、スクショの共有をお願いね!」
「了解です!」
<スクリーンショットが共有化されました。表示しますか?> はい・いいえ
おっ、ハーレさんからのスクショの共有表示が出てきたね。ここでいいえを選択する理由は皆無なので、普通にはいを選択っと。これでハーレさんが撮ったスクショが……。
「って、多いな!?」
「今回は連写したし、まだ厳選もしてないけど、こんなものなのさー!」
「このくらい普通じゃありませんか?」
「あ、そうなんだ」
軽く100枚以上はありそうだけど、ハーレさんやルストさんからしたらこれが普通なのか。サファリ系プレイヤーの標準がこれだとすると、スクショ機能の実装当初でいったんが処理しきれなかったのも何となく納得……。
ゲーム内で選別せずに撮ったのを全て送ってたら、そりゃああもなるわ。恐るべし、サファリ系プレイヤー……。
さて、とりあえずサヤとヨッシさんの晩飯の時間の都合もあるから、手早くチェックしていこうっと。ハーレさんのは後からでもどうにかなるけど、ルストさんと煮付けさんのは後からって訳にもいかないしね。
「そんな事よりも、今は撮ったスクショの確認なのさー!」
「おっ、サヤの竜が降りてくるシーンは割と近くて迫力があって、結構良いんじゃねぇか?」
「最後の浄化の影響が広がっていく様子も良い感じかな!」
「この角度からだと、アルの木とサヤの竜がメインのが良い感じだな」
この構図だと発火草の群生地の利点はあまり活きてない感じはするけど、サヤの竜を焦点に当てればかなり良い気がする。特にサヤの竜がアルの木に近付いていく辺りがね。
「逆にアルさんの木とこの地形は斜めから取ると遠近感がよく分からないね。なんだか見方によっては、鱗みたいな地形に斜めに発火草やアルさんが植わってるみたい」
「ヨッシ、それは私も思ったのです! だけどそこはルストさんのスクショに期待なのさー!」
「その辺りは抜かりはないので、楽しみにしておいて下さいね! ふむ、斜めから見下ろした構図になりますから、木が浄化されていく辺りの様子が良いようですね。その代わりに余波で発火草や地形への影響の演出部分が微妙という感じでしょうか。ですが、これは私の撮った構図とはまた違った良さがあり、私の撮ったスクショでは撮りきれなかった迫力も兼ね備えています。あぁ、こうして手分けをして撮影というのは良いですね。1人では撮れない1つの同じ光景をこのように違った角度から取れるというのは格別です! ふむ、以前から少し考えていましたが、この際ガストさんやケイさん同様に支配進化から同調を目指して同時に複数の視点を手に入るというのもありですね。そうなれば――」
「ルスト、長い! サヤさんとヨッシさんはいつも通りならそんなに時間がないんだから、そういう話は解散してからにしなさい!」
「弥生さん!? だからって、殴りつける必要はないでしょう!?」
「そうなったルストは話は聞こえてないからねー!?」
「はい、2人ともストップだよ。これ以上はそれこそ脱線になるからね」
「シュウさんがそう言うなら……」
「……分かりました」
うん、脱線しそうになったのをスムーズにシュウさんが止めてくれた。さっきルストさんが完全に1人語りに入ってしまった時はどうしようかと思ったけど、弥生さんとシュウさんがいてくれてよかった。
今さっきのルストさんを止める自信は俺にはないぞ……。むしろ、止めようとしたとこを捕まって、延々と語られ続けそうな予感すらする。いや、冗談抜きでありそうだよね、その展開。
「ごほん! まぁ私達も晩御飯の用意があるから、そんなに長く時間をかけてられないし、サクサク進めていこっか。先に言っとくべきだった気もするけど、今は軽く確認をするくらいで団体部門への応募はスクショを撮った人の裁量で決めるって事でいいよね?」
あ、そういやその辺は話し合ってなかったっけ。……まぁ選別前のスクショがこんなに大量にあるとは思ってなかったしなー。
えーと、俺のPTのみんなを見てみれば頷いているからそれで良さそう。……アルだけは木だから頷いてるのかどうか分からないけど、何も言ってこない時点で同意と考えて良いはず。多分そうなはず。良いよね!? 良いって事でいくぞ?
「俺のとこは問題なし!」
「おいら達もそれで問題ないっす!」
「それじゃそれで決定ねー!」
「弥生さん、私はまだ何も――」
「ルストは話が進まなくなるからね? 私達のは私とシュウさんとルストで選ぶから、それで良いよね?」
「私だけは私に一任じゃないんですか!? それは――」
「ルスト、今日が最終日でなければそれでも良いけど、今日が最終日だって事は理解しているかい? 僕らだけなら間に合わなくても良いけど、他の人達も関わっているからそういう訳にはいかないよ?」
「……シュウさん、つまり私が選別に時間をかけ過ぎて、時間切れが問題という事ですか?」
「うん、そういうことだし、心当たりもあるだろう? ルスト、今回はそれで理解してくれるかい?」
「……そうですね。それは承知しました」
なんというか、今回のスクショの撮影でルストさんの暴走率が高いな!? ルストさんのみに任せると時間切れという危険性があったのか。シュウさん、弥生さん、グッジョブ!
「それじゃ次は煮付けさん、お願いねー!」
「了解っすよ!」
<スクリーンショットが共有化されました。表示しますか?> はい・いいえ
そうして煮付けさんからもスクショの共有化がきたので、はいを選択。さて、地面から見上げた構図ではどんな風になってるかな?
ふむふむ、煮付けさんも枚数は多いけども、ハーレさんと比べればかなり少ないな。いや、これはハーレさんとルストさんが多いだけと考えた方が良いのか。
「おー! 上空から降りてくるサヤの竜がカッコいいのさー!」
「俺の木は下から見上げる感じだとちょっと微妙だな」
「でも、浄化されていく様子は良いんじゃないか?」
「確かにそれはそうかな!」
「うん、私もそう思うよ」
「そう言われると嬉しいっすね!」
煮付けさんの撮った地面から見上げる構図は、まぁ角度的な問題で微妙なやつも多い。だけど浄化の光が立ち昇っていく様子は、さっきのハーレさんのと見比べても遜色はない。
なんというか、こっちの方が浄化されていく臨場感みたいなのがある気がする。まぁ素人考えの感想だけど。
「これはこれで――」
「ルスト、次をお願いねー!」
「私には一言も喋らせてくれないのですか!?」
「うん、絶対に長くなるだろうからねー。はい、早くして」
「……弥生さん、何か機嫌が悪かったりします?」
「このルストは、全く心当たりがないとでも言う気かなー? あ、シュウさん、今日の晩御飯、久々に酢豚にしよっか。しばらく食べてないもんねー」
「……それでは私は、今日は外食に――」
「ルースートー? 居候の立場で、私が作るものが食べれないのかなー?」
「……はい、ありがたく食べさせていただきます」
「弥生、せめてルストの分は椎茸は抜いてあげてくれないかい?」
「まぁシュウさんがそう言うなら……」
「……助かります、シュウさん」
なんというか、弥生さんとシュウさんとルストさんの家庭の事情……というよりは力関係をを垣間見た気がする。まぁ、ここは深く触れない方が良い気がするからスルーしていこう。
「少し脱線はしましたが、次は私の撮ったスクショですね」
<スクリーンショットが共有化されました。表示しますか?> はい・いいえ
そして最後はルストさんが撮ったスクショである。……うん、ハーレさんのスクショよりも一段と枚数が多い気がするけど、そこは気にしないで軽く眺めていこう。
「……全体的に凄いな」
「うー!? ルストさん、地味に凄いのさー!?」
連写だからどうしても動きがある部分でブレてるスクショもあるけど、それでも全体的に目に見えてスクショの撮り方の水準が高い気がする。何がどう凄いかって説明しにくいんだけど、何か惹きつけるような感じとでも言うんだろうか……。
「あ、これ凄いね」
「ヨッシさん、どれ?」
「えっと、最後に全体に浄化の影響が広がっていくやつだね。アルさんもサヤも写ってないけど……」
その内容なら俺が纏浄をしてコケを光らせた辺りか。えーと……あはは、こりゃ確かに凄い。サヤの竜も、アルの木も写ってはいないけども……。
でも、『青の野菜畑』で浄化属性の風の操作を使った時の光と、ヨッシさんが粉雪のようにして覆っていた雪が飛ばされていき、その風に揺らされる大量の赤い発火草が俺のコケから放たれる浄化属性の光で照らされて、鮮やかで神秘的な様子が広がっていた。
棚田になっている関係で上から順に変わっていく様子も分かり、躍動感というか、上手く説明出来ないんだけど、静止画なのに静止画とは思えないような、そんな印象がある。
「ほう、こりゃ良いな」
「うん、これは良い感じかな!」
「おいらもこれは良いと思うっす!」
アルとサヤが写ってないけども、それでもこのスクショはかなり良い。何より、あの発火草の群生地の特徴がすごく活きている。
他のみんなも口々に凄いと言っているし、今回の演出の中ではこれが一番良いかもしれないね。……ただ、気になるのはアルとサヤが写ってない点だよな。これ、みんなが団体部門として認定されるよね?
「あ、ほんとだ。これは良い感じだねー!」
「あぁ、それですか! それは――」
「はい、長くなるからルストは喋るの禁止ね」
「少しくらい語らせてくれませんか!? そのスクショは特に自信が――」
「弥生さん、少し気になるんだけど、これってアルやサヤって団体部門は大丈夫か?」
「あ、それは大丈夫だよー! スクショ撮影時だけのメンバーじゃなくて、撮影の流れで関与しているって判定されると思うからね。活動ログも参照してるはずだし、大丈夫だとは思うけどもしダメなら手動でメンバー追加にはしとくから」
「あ、それなら良かった」
どうやらこの良い感じのスクショもちゃんとこのメンバーでの団体部門として出せるんだな。うん、これは自分達が関わってるという贔屓目抜きでもかなり良いとこ狙える気がする。
「……ほんの少しで良いですから、語らせてもらえませんか?」
「ルスト、後で僕が聞いてあげるから」
「兄さん!」
「シュウさん、少し甘やかし過ぎじゃない?」
「まぁ実の弟なんだから、多少はね」
「もう、仕方ないなぁ……」
あ、思いっきりさっきのルストさんの話の流れをぶった切ったから凹んでしまったようである。いや、一瞬どうしようかって悩んだんだけど、多分弥生さんが止めると思ったからそのままやっちゃった。
とりあえずこれで軽くだけど撮れたスクショの確認は終わり! さて、もう18時になりそうだから、このメンバーでの合同撮影会は終了だな。
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