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Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜  作者: 加部川ツトシ
第25章 ひたすらレベル上げ
830/1633

第830話 変わった組み合わせ


 進化の為の卵型に覆っている瘴気が薄れていき、トカゲとタケノコのフィールドボスへの進化が間も無く終わろうとしている。さて、どんな進化をしてくるんだろうか。


「ちょ、これってマジか! トカゲの進化先、トカゲじゃなくてティラノじゃねぇか!」

「……これは少し予想外だな」

「……そうですね、肉食獣。しかもこれは……」

「尻尾がタケノコになってるかな……?」

「タケノコ尻尾のティラノなのさー!?」


 なんというか予想外の方向から来たな、この進化! トカゲだから順当にトカゲに進化すると思ってたけど、ここで小型とはいえティラノに進化するとは……。

 大きさとしては高さが1メートルに届かないくらいか? 頭から尻尾までで2メートルとかそんなところ。

 ふむふむ、ティラノはトカゲからの進化だったはずだから、この進化自体があり得ない訳ではないよな。まぁザックさん達の反応も分からなくもない。


 いや、待てよ? そういやトカゲからティラノに進化するボスって見覚えがあるな。えっと、いつだっけ?

 多分フィールドボスじゃないはずだけど……あ、思い出した。共闘イベントの前半戦で赤の群集に行った時に、赤の群集の群集支援種だったトカゲがボスに進化した奴だ!

 あれはイベント演出での特殊な進化だったけど、種族の進化ルートからは外れてないはず。そこから考えたら、フィールドボスに進化する際にトカゲがティラノに進化してもおかしくはない。むしろ――


「これ、さっきのソラの尻尾がタケノコって予想が当たりじゃね?」

「……えっと、紅焔? それはそうなんだけど、そういう問題かい?」

「え、何か問題でもあったか? 別にトカゲからの別種族への進化ルートは多いんだから、これくらいは想定の範囲だろ」

「まぁそれはそうなんだけどね。もう少しこう、驚いてもいいんじゃないかい?」

「そうか? ケイさん、どう思うよ?」

「あー、共闘イベントのボスでトカゲがティラノに進化したのは見た事あるから、何とも言い難いな」

「あ、そういえばそんなのもあったね」

「……そんなのがいたの?」

「おう、赤の群集の森林エリアの北側になー。確かエリア名は……」


 あれ、あそこのエリア名はなんだっけ? ミズキの森林とも隣接してるし、竹林もあるあの平原の名前だ。いかん、最近全然行ってないエリアだから名前をド忘れした。


「確かそこならフレッシュ平原だったよね?」

「ヨッシさん、それだ!」

「……フレッシュ平原って、竹があるところ? ……そういえば、あそこでティラノと戦ってる赤の群集のPTはよく見る」

「あぁ、あのティラノかい! それなら僕も見た事があるよ」


 ん? 何で翡翠さんやソラさんが見た事が……って、そういや共闘イベントのボスは瘴気強化種として再戦出来るようになってたんだった。いやー、自分が積極的に関わってるものでないとどうしても忘れるね。


「てか、俺らはここまで呑気に話してて良いのか? もう戦闘は始まってるぞ」

「……流石に余所見をし過ぎだった」

「それは……まぁ紅焔の言う通りだね」

「……あはは、急に襲われないとも限らないしね」

「それもそうだなー。んじゃとりあえず無駄話はこれくらいにしとくか」

「おう、そうしとこうぜ」


 今回は紅焔さんの意見が正しいし、さっきのツバメのエレインさんへの強襲を考えたら俺らが油断していて良い訳じゃない。

 ふぅ、今回は黒の暴走種じゃないからって、また盛大に気を抜いてどうする。常に緊張して警戒しておく必要はなくても、同じ連結PTにいるんだから見ていないのは流石に無しだ。


「サヤ、狙われてるのさー!」

「分かったけど、これってチャージじゃないのかな!? 『連強衝打』!」


 あ、ティラノがタケノコ状の尻尾を銀光を放ちながら振り回してきたのを正面からサヤが殴り返して……お互いに銀光が強まったって事は、ティラノのタケノコ尻尾攻撃は連撃系の応用スキルっぽいな。

 って、なんかタケノコ状態の尻尾がどんどん伸びて、しなりながらサヤの打撃と打ち合って銀光が強くなりつつ威力が高くなってる!? それだけじゃなく、攻撃範囲自体が広くなってるぞ、これ!


「ちっ、タケノコ部分が伸びながらの連続打撃か! サヤさん、対応し切れるか?」

「これくらいなら……大丈夫かな!」


 サヤの方も連撃を打ち合って最大強化までいった連強衝打の最後の一撃を、迫ってくるティラノの異常に伸びたタケノコ尻尾の下からすくい上げる様な形で上部へと放った。

 おっ、尻尾が伸びてたのもあって今のサヤの攻撃でティラノは盛大にバランスが崩れて顔から地面に突っ込んだな。


 なんというか、さっきのティラノの攻撃って広範囲化する代わりにバランス自体は相当悪くなるんだね。うん、なんか進化の失敗を見た気分。まぁプレイヤーだったらプレイヤースキル次第って気もするけど。


「サヤさん、ナイスだ! エレイン、根で拘束! ザック、麻痺毒と腐食毒!」

「分かりました! 『並列制御』『根の操作』『根の操作』!」

「おうよ! 麻痺毒と腐食毒の複合毒で『ポイズンインパクト』!」


 肉食獣さんはサヤが作った隙を狙って、エレインさんの松の木の根と、ザックさんの毒を使って動きを封じに動いたか。まぁ俺でも拘束と状態異常は試したいとこだね。


「やったか!?」

「……ザック、それは失敗フラグ……」

「ふっはっはっは! 言われなくても知っている!」

「いや、腐食毒はタケノコ部分には効いてるみたいだぞ?」

「え、マジで!? って、長さが元に戻っただけじゃん!?」

「……ちっ、バレたか」

「ザックさん、肉食獣さん、そうでもなさそうなのさー! 尻尾の根元の方を見てください!」

「……一応、効果はあったようだな」

「でも、なんか短く戻った時に治ってる感じじゃねぇか、あれ」

「多分そうだと思うのさー! でも着実にHPは減っているのです!」

「お、確かにそうだな。これなら溶解毒ならもっと効きそうか」


 ふむふむ、確かにハーレさんが言うようにティラノの体の一部がタケノコに変わっていく境目の辺りに、腐食毒で腐食したような痕跡はある。

 これってもしかしてタケノコが伸びた状態で受けた部位の破損は、元の長さに戻る時に治るとかか? 固有スキルにそういう性質を持ったものがあっても不思議じゃないな。


「ここからどうする、肉食獣さん?」

「……そうだな。チャージで一気に畳みかけていこうかと思うが、カリンさん達はさっきのツバメの時と同じようにいけるか?」

「再使用時間は過ぎているし、まだ魔力集中は切れてないから問題なく――」

「おーい、カリン! 危機察知に反応ありだ、狙われてるぞ!」

「っ!?」

「尻尾が伸びての刺突か! 『強爪撃』!」


 うぉ!? あのティラノ、完全に身動きが取れなくなってる状況からタケノコ尻尾を伸ばしてカリンさんを串刺しにしようとしてきたよ。

 紅焔さんが持ってる危機察知で狙われてるのに気付いて、即座に肉食獣さんが迎撃して無事だったけどね。


 それにしても地味にあの尻尾は面倒だな。タケノコ自体が特殊な種族って話だけど、合成種の割に使いこなして……いや待て、このティラノは本当に合成種か?

 合成種ならティラノがベースでタケノコが追加部分になるはずだけど、タケノコ要素が強すぎる気がするし、もしかして最適化の変異進化も発生してる?


「紅焔、肉食獣さん、助かったよ」

「一緒のPTにいて危機察知に反応あったからな。これくらい構わねぇよ」

「……なんで危機察知が使えるのかと思ったが、そういえば紅焔は元々トカゲだったな」

「おう、意外と重宝してんだぜ、これ。ところで、さっきは雑談してて聞き逃したかもしれないんだが、そいつは最適化の変異進化をしてんのか?」


 あ、そこは紅焔さんとしても気になったんだな。ぶっちゃけ雑談でまともに様子を見ても聞いてもいなかった俺らが悪いんだけど、これは気になるところ。


「いや、していないぞ」

「え、マジでか? それにしちゃ妙にタケノコの要素が強くねぇ?」

「……タケノコは地味に分かってない部分が多いからなんとも言い難いんだが、おそらく合成進化で引き継いだ属性の影響だろうな。識別情報を改めて伝えておくぞ。名前は『樹草刺爪ティラノ』の豪傑樹草種、属性は樹と草、特性は豪傑、強靭、爪撃、打撃、刺突、伸縮だ」


 ふむふむ、樹属性と草属性を同時に持っているという特殊例な気もするけど、これってどういう意味があるんだ? 他は特に変わったというほどの特徴ではない気がするけど……。

 うん、敵のスキルは発声がないから分からん。知らない固有スキルとかだったらどうしようもないし、今は伸びる尻尾という解釈でいいや。


「っと、これ以上余計な話をしてる場合じゃないな。カリンさん達、さっきの連携を頼むぜ。その間は俺らで連撃をいくぞ! 『ファイアクリエイト』『操作属性付与』『爪刃双閃舞』!」

「おう! って、やらせねぇよ! 『大型化』『万力鋏』!」


 おぉ! 肉食獣さんに目掛けてタケノコ尻尾を伸ばして刺してきたのを、キノコの生えたロブスターの人がハサミで挟み込んで地面に押さえつけた! やるじゃん、ロブスターの人!


「今のうちにチャージを開始するよ! 『瞬突角撃』!」

「2戦連続でやる事になるとはね。『重硬砕牙』!」

「だけど、いい出番じゃん! 『重脚撃』!」

「確かにそりゃそうだ! 『砲弾重突撃』!」


 そして再びカリンさん達が同時に明滅をする銀光を放ちながらチャージを開始していく。ははっ、本人達も言ってるけど、2連続で同じ戦法で締めになるとはなー。

 まぁプレイヤー相手ならともかく、敵相手で通じる手段ならどんどんやればいいか。それに肉食獣さん達も黙ってみている訳ではなさそうだしね。


「さて、俺らもやるか。樹属性と草属性の両方を持ってんなら、これが効きそうだし、攻勢付与でいくぞ。『ファイアエンチャント』『ファイアエンチャント』!」

「……あぁ。『回鱗鋭刃舞』!」

「おし、やるぜー! 『猪突猛進』『連突衝破』!」


 ふむ、モンスターズ・サバイバルのキツネの人が火魔法、それも付与魔法だからLv7を使えるんだな。それでアリゲーターガーの人と、イノシシの人に火の攻勢付与をかけたようだ。

 そこからイノシシの人が猪突猛進の効果で足を止める事なく一撃ずつ銀光が強くなる突進を叩き込み、アリゲーターガーの人は銀光を放つ鱗を飛ばし切り刻んでいき、そこに攻勢付与による火の球の追撃が次々と炸裂していく。


「……大技が連発だね」

「まぁ肉食獣さん達の方はLv1での発動っぽいけど……あ、意外と火が効いてるっぽいな。このティラノ、紅焔さんが相手する方が楽だったんじゃ?」

「そりゃ単なる結果論でしかないけどな、ケイさん。それにあの火の付与魔法、見てる感じでは俺のより強いぜ?」

「あ、魔法型っぽいね。そういや紅焔さんはバランス型……って、付与魔法は覚えたんだ?」

「おうよ! 昨日、タッグ戦に参加しようと思ったけど、人数オーバーで出場出来なかったからな!」

「あ、そっか。トーナメント戦って必ず参加出来るとは限らないんだね」

「よく考えたらそういう事もあるか」


 ふむ、紅焔さんは参戦しているものだと思っていたけど、そもそも参戦人数が決まっているからそういう事態も発生して当然ではあるか。

 別に紅焔さんは途中でレナさんに負けたとかではなかったんだな。


「……それって付与魔法の取得と何か関係あるの?」

「あはは、出場しそびれた紅焔は八つ当たり気味に火魔法を使いまくってLv上げをしてたからね。その時に取得になったんだよ」

「あー、なるほど、八つ当たりか」

「おい、ソラ!? 普通にLv上げをしてたんだから八つ当たりはねぇだろ!」

「……でも溶岩の洞窟の中で敵は火属性ばっかで効きが悪いのに――」

「だー!? それ以上は言わんでいい!?」


 あ、なるほど。なんとなく紅焔さん達が昨日いた場所の察しがついた。多分『封熱の霊峰』から行けるという、成熟体のフェニックスがいる溶岩の洞窟だな。


「俺のことは良いから、ちゃんと見とくぞ!」

「はいはい、そうしようかい」


 また話が脱線してきているので、軌道修正だね。まぁ見た感じではここまでの攻撃でかなり優勢にはなっている。


「もう拘束が限界です! 一度解除して拘束し直しますので――」

「いや、大丈夫だよ。準備は終わったからね」

「チャージが間に合いましたか! ですが、微妙に間に合わない……!」

「げっ、そんなのありかよ!?」


 エレインさんの根の操作が時間切れになって拘束が外れた瞬間に、ロブスターの人がハサミで挟んでいるのもお構いなしにタケノコ尻尾を伸ばしてサヤの方に駆け出していってる。

 拘束を振り切るんじゃなくて、伸ばして移動するってそんな逃げ方ってありかよ!? あ、元がトカゲだから、尻尾の自切とかやりそうな気がする……。


「ザックさん、アイデアがあるので溶解毒のポイズンボムを下さいな! 『魔法弾』!」

「……はい?」

「ザック、そういう投擲用のスキルだ! ハーレさんの差し出してる手に言われた通りに撃ち込め!」

「お、おう! 溶解毒の『ポイズンボム』! って、なんじゃそりゃ!?」


 あー、魔法弾の事を知らなかったら、自分の放った魔法が味方の手に圧縮されていく光景にはびっくりするよね。


「サヤ、ティラノを上に吹っ飛ばしてー! その後にあのタケノコ尻尾を毒の魔法弾で破壊するのです!」

「分かったかな! あ、でもそれならそっちのタケノコの尻尾を掴んだ状態で振り上げられないかな?」

「悪い、長くなりすぎて無理だ……」

「いえ、それでしたら私が! 『アースクリエイト』『岩の操作』!」


 お、エレインさんがロブスターの人の足元から岩を生成して、ティラノの伸びたタケノコ尻尾を掴んだまま持ち上げていっている。

 うん、タケノコ尻尾を伸ばすのにも限度があるようで、ロブスターの人に尻尾を挟まれて宙に浮いている状態になったね。


「エレイン、ナイスだ!」

「あ、これは私が上に吹っ飛ばす必要は無くなったかな?」

「そうなるねー! カリンさん達、連携攻撃はいけるー!?」

「いつでも問題ないよ!」

「それじゃタケノコ尻尾を破壊するのさー! 『狙撃』!」

「いくよ、みんな!」

「「「おう!」」」


 そうして宙にぶら下げられたティラノのタケノコ尻尾は、ザックさんの魔法を弾に変えたハーレさんの狙撃によって見事に溶けて破壊された。

 ふむ、普通にザックさんが爆発魔法を使っても良いような気もしたけど、なんとなく爆発の効果範囲が普通に発動するより狭くなって、その分だけ威力が一点に集中してるっぽい? これって俺の何となくの感覚でだけど、少し判定範囲に差異がある気がする。


 そこからはカリンさん達の連携攻撃により、落下していくだけのティラノにはなす術もなくHPは全て無くなり、ポリゴンとなって砕け散っていった。


<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>

<ケイ2ndが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>

<『瘴気石』を1個獲得しました>


 よし、これでフィールドボス戦の2戦目は終了だな。予め成長体も瘴気石も揃っていたから、まだ6時までには余裕がある。

 でも次の1戦をやるには成長体が紅焔さんの捕まえたクワガタが1体しかいない。さて、もう1戦やる前に成長体の確保をしに行く必要がありそうだね。


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自力での電子書籍版もありますので、よろしければこちらもどうぞ。
大きな流れ自体は同じですが、それ以外はほぼ別物!
ケイ以外の視点での外伝も収録!

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[一言] タケノコしっぽのティラノ……(笑)
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