第795話 ミスからの予定変更
ちょっと手順をミスして海に電気魔法を流してしまった事で、空中に集まってくる敵よりも海中の方に敵が集まってきている状態になってしまっている。これって早めに手を打たないと空中の敵も増えてきてやばい気がするんだけど……。
「ハーレさん、予定変更! カモメを海の中に叩き落として、アル達と合流してから一度立て直す!」
「空の敵が増えてくる前にそうした方が良さそうなのです!」
「アル、それで良いか!?」
「この状況だとそれしかねぇな! サヤ、悪いがしばらくはクマでのいつもの戦闘に切り替えてくれ! ヨッシさんも今は電気魔法以外で頼む!」
「まずは立て直しが先決って事かな。『魔力集中』!」
「……あはは、いきなり予定外になっちゃったね。でも、それで了解!」
よし、いつまでも空中にいると次々とカモメが襲ってくるのは海の新緑で経験はしたから、今はとにかく海中へと戻ろう。そして海中に集まってる敵を殲滅してから、改めて空中で戦えばいい。
「ハーレさん、まだ残ってる雑魚のカモメの始末を頼む!」
「はーい! 『連投擲』『連投擲』!」
そうしてハーレさんが群れのカモメを始末していき、そこに瘴気強化種のカモメが羽を飛ばしてきている。……今度は何か鋭利な刃物のような羽が飛んできているから、さっきとは違う感じだな。
とりあえずグリースで滑らせて……って、もう効果時間が切れてますがな! くっ、Lv1じゃそんなもんか。仕方ない、普通に叩き落とすとして……通常スキルの連撃で威力が高いスキルで行くか? いや、ここは一気に攻める方がいいな。
<行動値を10消費して『連強衝打Lv1』を発動します> 行動値 52/70(上限値使用:9)
俺はまだ連鎖増強Ⅰは持ってないからサヤやハーレさんほどの威力は出ないけど、それでも決して低い威力ではないからね。
ハサミが放つまだ弱い銀光を、飛んできている羽を叩き落とす事で光を強めていく。よし、飛行鎧で飛んで、瘴気強化種のカモメを捉えられる位置まで来た。ここから一気に連撃で強化した打撃を使って海中に叩き落としてやる!
「邪魔はさせないのさー! 『略:ウィンドウォール』!」
「おっ、サンキュー!」
「えっへん! そのままカモメを海に叩き落とすのさー!」
「もちろんそのつもり!」
俺の死角になる真下の海中から飛び出て突撃をしてきたトビウオをハーレさんが気付いて攻撃を逸らしてくれたね。ハーレさんのおかげで少し方向がズレたけど、まだ空に跳び上がっているトビウオは放置でいいか。
ともかく今はこのカモメを海中へと叩き落とす事が先決だ。既に俺の攻撃範囲内だし、連撃が最後まで行ってないから最大強化にはなってないけど、そこは問題ない。殴り飛ばすと同時に飛行鎧で加速して、連撃を最大まで叩き込むまで!
カモメに1撃目が入り、勢いで地面に向けて落下し始める。距離を詰めての2撃目はカモメが落ちながらも羽で斬りつけてきて、少し威力が削られるものの強引に振り下ろす。再び距離を詰めての3撃目はカモメの頭部に盛大に当たり、朦朧の状態異常になった。
そしてカモメはそのまま海中へと叩きつけられていく。……後1撃で最大強化なんだけど、海の中まで突っ込んでもう1撃入れるべきか?
「ケイ、そっちにウツボが行ったぞ!」
「ケイさんが狙われているのさー!?」
「うぉ!? マジか!?」
海中に向けて急降下している俺に向けてウツボが襲いかかって来てるっぽい。ウツボといえば、ロブスターの進化の際に倒される為に対峙したんだよな。
まぁ確実に違う個体だろうけど……目の前にやってきたなら、飛行鎧で少し加速してその顔面に最大強化の連撃を叩き込んでやる!
「おし、見たか、ウツボめ!」
「おぉ! ナイスなのです!」
海中からの俺に向かって跳び上がってきたウツボの顔面にカウンターを入れるように眩い光を放つハサミを叩きつけてやったぜ! あっ、でもこのままじゃそのままの勢いで海中に突入だな。
ふー、盛大に水飛沫を上げて海へと着水したけど、これはダメージ判定にはならなかったっぽいね。空中から海中へと飛び込むのは一応移動の範疇って事か。もっと勢いがあり過ぎればダメージ判定になりそうな気もするけど……。
さて、今の海中の状態は……うげっ!? アルが相手にしてたサメと、さっき俺が殴り飛ばしたカモメとウツボ以外にも軽く見ただけでもエイが2体、マグロが1体はいる。最低でも6体が相手って、1人1体以上相手取らないといけないじゃん!?
よし、こういう時こそ落ち着け。俺の判断ミスでこうなったんだから、これ以上のミスは重ねられない。……これがフィールドボス6体相手なら絶望的だけど、あくまでも通常の敵だ。……通常の敵だよな? うん、黒い王冠マークがあるやつはいないから大丈夫っぽい。
「ケイさん、これどうするのー!? 『魔力集中』『略:アースクリエイト』『散弾投擲』!」
「……ちょっと考え中」
「それなら少しの間は私が敵を引きつけるのさー! アルさん、水の衝撃魔法を下さい! 『魔法弾』!」
「おう、任せろ! 『アクアインパクト』!」
「ありがとー! それじゃふっ飛ばすのです! 『連投擲』!」
とりあえずハーレさんが俺のロブスターの背中の上で、アルから貰ったアクアインパクトを魔法弾に変えて、近付いてくるエイや、海面に戻ろうとするカモメの動きを妨害している。
ふむ、水の衝撃魔法を分散させて投げていき、行動阻害に使っているのか。この使い方ははウィンドインパクトでも使えるようになれば水よりも効率が良さそうだけど、水でも海水の中で十分に……あ、海水の中での水……? 海水と水との違い……あ、そうか。これなら一網打尽もいけるかも?
「アル、海流の操作で今いる敵を全部集められるか!? 出来ればドーナツ状の海流にしてその海流に閉じ込める感じで!」
「多分出来るが、海の敵相手にはそう長くは保たねぇぞ!? 『略:旋回』『略:重突撃』!」
「少しの間でも動きを封じれるならそれで充分! サヤとヨッシさんとハーレさんで、敵が海流から出てこようとしたら逃げないように押し込んでくれ! その後は俺がやる!」
「分かったかな! そういう事なら、小型化解除! 『薙ぎ払い』!」
「了解なのさー! ヨッシ、氷の衝撃魔法を下さいな! 『傘展開』『魔法弾』!」
「地味に気に入ってるみたいだね、ハーレ。『アイスインパクト』!」
「この魔法弾、結構使い勝手がいいのさー! 『連投擲』!」
「それは良かったけど、流石に敵が多いね!」
うわー、俺が作戦を考えて指示を出してる間にもいろんな方向からどんどん攻撃が来ている。みんながそれぞれに迎撃はしてくれているけど……あ、カモメが海中から逃げ去っていった。
まぁこの乱戦でカモメを海中に留めて置くのは無理……って、海中に戻ってきてたトビウオを咥えていったぞ、あのカモメ。……それはとりあえず今はいいや。
「アル、海流の操作を発動! みんなはその海流の中に敵を叩き込め!」
「おう! 『海流の操作』!」
「了解! 『薙ぎ払い』『略:ウィンドボム』!」
「……出来ればエイ2体をまとめて……『アイスインパクト』!」
「ヨッシ、ナイスなのです! 『魔法弾』『並列制御』『略:ウィンドボム』『強投擲』!」
よし、みんながそれぞれの手段で、アルが操作する海流の中に今いる敵が全て放り込めた。とはいえ、海の種族ばっかりだから海流の中で普通に泳いでいてダメージはない。
「ちっ、ケイ! 全然ダメージがないけど、どうすんだ!?」
「それは承知の上! 操作時間は短くなっていいから、海流を最大加速しながら範囲を狭めてくれ!」
「何をする気なのか気になるが、とりあえず了解だ!」
「出てきたら駄目かな! 『連強衝打』!」
「サヤ、ナイスなのさー!」
急激に円形になっていた海流の幅が狭く、それでいて勢いが増した状態になったので、サメと1体のエイが海流から脱出しようとしてきた。でもそれはサヤが阻止してくれたので問題はないね。
それじゃ俺のやるべき事をやっていくとして……一網打尽にするならもう一手加えておくか。
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 54/70(上限値使用:9): 魔力値 215/218
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値2と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 52/70(上限値使用:9): 魔力値 212/218
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
間違っても昇華魔法にならないように、水はアルのドーナツ状になっている海流の空洞部分に少し生成し、土というか今回は砂を生成したけどこれは海流の外周部に生成っと。さて、次の準備だな。
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値を19消費して『砂の操作Lv3』は並列発動の待機になります> 行動値 33/70(上限値使用:9)
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値を6消費して『水の操作Lv6』は並列発動の待機になります> 行動値 27/70(上限値使用:9)
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
よし、これで準備完了! 後はアルに海流の操作を解除してもらって、その隙で一気に敵を水球の中に捕らえるまで!
「……なるほど、そういう事か。あー、でも大丈夫か……?」
「アルさん、どういう事ですか!?」
「説明するより、見るほうが早いと思うぜ。というか、もう限界だから解除するぞ! ケイ、狙いとしてもそれでいいな?」
「おう、元々そのつもりだから問題なしだ!」
「やっぱり狙いはそれか。おら、海流の操作解除だ!」
そう言いながらアルの海流の操作の効果が切れ、徐々に流れが無くなっていく。このまま放っておけば敵にただ逃げられてしまうだけだけど、砂と水を一気に追加生成していく。
砂はアルの海流の外に逃さない為の妨害の役目を果たす為に全体を覆うように生成していき、水は真逆にドーナツ状の海流の空洞部分から周囲の海水を押し退けるように広げて敵を呑み込んでいく。
「あ、そういう事! サヤ、ハーレ、ケイさんの生成している水球から逃れられないようにするよ! 『アイスニードル』!」
「……海水魚を魔法産の水って、あ、そういえば当たり前かな! 『略:ウィンドボール』!」
「はっ!? そういえば海水魚は淡水では生きられないのです! 『狙撃』『狙撃』『狙撃』!」
砂の妨害を強行突破しようとしてくるサメやエイをみんながなんとか押し留めてくれている。……よし、これでサメ、エイ2体、ウツボ、マグロを魔法産の水球の中に閉じ込める事に成功した。
ついでに水球の中に妨害に使っていた砂も放り込んで、どんどん砂を叩きつけていく! ふっふっふ、淡水の中に入り急激に動きが鈍くなっていくどころか、明確にHPが減り始めた。
「おっしゃ、作戦成功!」
「……サメとウツボもこれで大丈夫だったか。流石にそこまで種族全体に適応はしてこないって事だな」
「……ちょっと待って、アル、それってどういう意味だ?」
「あー、サメとかウツボの一部には淡水が平気なのもいるんだよ。……そういやエイにもいたか」
「ちょ、それってマジで!? もしそれだったら完全に失敗じゃん!?」
「まぁ結果的には問題なかったみたいだし、ナイス判断だったとは思うぜ」
「いや、まぁそりゃそうだけど……」
うわー、普通に淡水も大丈夫なサメやウツボやエイがいる事は考えてなかったよ。でも、そこは今の結果を見れば問題はなかったって事で良いんだろうね。
「それでここからどうするのー!? ジワジワ弱ってるけど、そのまま死ぬのを待ちますか!?」
「あー、それでも良いんだけど、とりあえず砂をぶつけまくって削ってはいくぞ」
「それなんだけど、外から電気魔法を撃ち込むのはどうかな?」
「それもありではあるなー」
さてと、サヤの提案もありだけど、ここから本当にどうしようかな? このまま魔法産の淡水で仕留め切るのは可能そうだけど、それじゃちょっと味気ない気もするし、やっぱり電気魔法を撃ち込んでもらうのがいいか。
あー、でも魔法産の水って電気は通すのか……? うーん、天然の雷は普通に流れてたし、純水って訳じゃないから大丈夫かな?
「よし、とりあえずそれをやって……あ、良い事思いついた」
「え、どんな方法かな?」
「えーと、その前にちょいと確認。アル、ヨッシさん、魔力値は少しは残ってる?」
「一応あるにはあるけど……ケイさん、どうするつもり?」
「えーと、アクアプリズンとポイズンプリズンで複合魔法が発動しないかなって思ってさ」
全部の複合魔法の組み合わせは把握してないんだけど、この組み合わせでの拘束の複合魔法はありそうな気はするんだよね。ヨッシさんの猛毒を使った毒の水で閉じ込めてしまえば、もっと倒すのは早くなるはず。
まぁその前に魔法産の水に電気魔法がどの程度有効かを先に確かめてみようっと。……全然効果が無いって事はないと思うけど、海水ほどの効果がない可能性があるからその辺を確認しておきたいしね。




