第774話 トーナメント戦の準備 後編
さて、これで『グリーズ・リベルテ』主催のトーナメント戦は開催になったから、ステータス画面からトーナメント戦の管理画面を見ていこう。
ふむふむ、普通によく見る感じのトーナメント表が表示されていて、上から順に数字が振られているんだな。その表の下に参加者一覧と……今は選択出来ないけど『組み合わせの決定』とか『順番を飛ばす』とか『参加者への呼びかけ』とかの項目があるね。この辺は完全にトーナメント戦の管理用だな。
<トーナメント戦『グリーズ・リベルテ』にベスタ様が参加しました>
<トーナメント戦『グリーズ・リベルテ』にフーリエ様が参加しました>
<トーナメント戦『グリーズ・リベルテ』に十六夜様が参加しました>
<トーナメント戦『グリーズ・リベルテ』にイブキ様が参加しました>
<トーナメント戦『グリーズ・リベルテ』の参加人数が上限に達しました。参加募集を終了します>
おっと、一気に色々と表示されてきた。へぇ、トーナメント戦の名前に共同体名が表示されるのか。あ、一応変更は出来るっぽいけど、これって開催時に設定出来た方が良い気も……。よし、ここはいったんへの要望案件だな。
「お、参加出来たぜ! へぇ、ステータス画面で自分が参加してるとこのトーナメント表が見れるのか!」
「ふむ、無所属の参戦ボーナスは情報ポイントが200追加になるのか」
「……どうやらそのようだな」
なんですと!? えーと、あ、ホントだ。賞品の部分に情報ポイント600と表示されて、その後ろに『情報ポイントの総取り(無所属参戦ボーナス+200)』と注釈が入っている。無所属のプレイヤーが参戦したら、それだけで情報ポイントが200増えるのか。
でもこれって無所属の参戦が増えれば増えるのだけ、ボーナス増えていくのか? それに今回は参加費は情報ポイント100に設定したけど、そこの数値を変えたら増減するかが気になる所だね。……これはイブキのワガママを聞いてみて正解だったかもしれないな。
「あ、総取りに設定したから選べないみたいですけど、選択出来る報酬が見れますよ!」
「へぇ、400ポイントで各属性の進化の輝石があるじゃん! これ、勝ち抜けたら交換するより得じゃね!?」
「無所属では交換自体が出来ない……いや、増援クエストの報酬で交換は出来るようにはなるんだったな」
「おう、そうだぜ! でも、回数には制限があるからな!」
「無所属ってそういう風になってるんですね」
「何なら、フーリエさんも無所属に来るか? 歓迎するぜ?」
「いえ、僕は灰の群集で頑張りますので!」
「そりゃ残念っと」
あはは、思いっきりイブキの勧誘は断られてるね。さてと、俺からも情報ポイント600までで賞品として指定できるアイテムの一覧は見れるようにはなったけど、600以上は暗転してて見れないようになってるね。……スキル強化の種とか空白の称号を指定するにはどの位の情報ポイントがいるんだろ?
まぁ確実にその辺は気軽には取らせてくれない気はするけど、とりあえずイブキが言ってた進化の輝石以外にも各種回復アイテムや、食材の詰め合わせや、進化の軌跡のセットや、投擲用の弾のセットとか色々と使えそうなものもある。普段使いしそうなものは手に入りやすいみたいだね。
「……ふむ、流石にこの少人数ではそれほど良い物は選べないか」
「十六夜さんとしては残念な感じか?」
「……まぁな。スキル強化の種が欲しかったんだが、目立たずにというのは無理そうか」
「あー、なるほどね……」
確かに大規模なトーナメント戦でなければスキル強化の種は賞品に指定出来そうにないけど、そうなると必然的に中継も発生する可能性は高いんだよね。効果が凄まじい報酬は、その効果の分だけ取得の難易度は高そうだよな。
「……その辺りをどうするかはよく考えてみるか」
「……十六夜のようなプレイヤーは他にも少なからず存在していそうではあるな。いや、そこは後で検討するとして……ケイ、とりあえず今は先に進めてくれ」
「ほいよっと」
今のベスタの独り言が少し気にはなるけど、今はトーナメント戦を進めて行くのが先だな。まだ組み合わせが決まっていないから、俺の方の管理画面から組み合わせを決定していかないとね。
えーと、さっきは選べなかった『組み合わせの決定』が選べるようになっているから選択してっと。あ、これは選択したら即座に組み合わせがランダムで振り分けられるんだ。
「あー、俺は2戦目か。でも相手はベスタとはな!」
「俺の初戦はイブキが相手か。……楽なのは後に取っておきたかったんだが」
「へぇ、小物扱いしてくれんじゃねぇか?」
「……そういう意味ではないんだが、まぁそう思うならそれでも構わん」
「良いぜ、ベスタ! 絶対ぶっ飛ばしてやる!」
おー、ベスタとイブキは2戦目なのに既に一触即発といった状態になってるけど、まぁよっぽどイブキが強くなっていなければこの組み合わせはベスタの勝ちだろうな。……イブキには悪いんだけど、ベスタがイブキに負ける様子が全然思い浮かばないんだよね。
それにしてもベスタとしては十六夜さんを警戒しているっぽいなー。……まぁ俺も十六夜さんと対戦となったら絶対に警戒するから、ベスタの気持ちは分かる。正直、十六夜さんの実力が未知数過ぎるんだよね。
「僕は十六夜さんとですね!」
「……俺は手加減はしないぞ?」
「はい! 全力でお願いします!」
「……良いだろう。俺の全身全霊をもって相手をしよう」
フーリエさんと十六夜さんの方は全然違う雰囲気ではあるけども、こっちはこっちで緊迫感はあるね。……十六夜さんはフーリエさんの意気込みに全力で応じていくつもりだね。ちょっとこれで十六夜さんの実力を見る事が出来るかもしれないな。
<桜花様がトーナメント戦『グリーズ・リベルテ』の中継を承諾しました>
お、桜花さんに指定した中継の承諾もこうやって通知されるんだな。さて、これで試合開始をしていけばトーナメント戦が進んでいく訳か。今までやった模擬戦よりもトーナメント戦の方が関わる人数が多い分だけ必要な設定項目が多かったけど、まぁこれらは報酬の事を考えると重要な内容ではある。
ただ、どうしても時間がかかるだろうから、正規の機能としてブロック分けが欲しいとこだね。多ければ他の共同体と分割してブロック分けみたいにすれば良いとか思ってたけど、参加費として徴収する情報ポイントが指定する報酬に関係するならそういう訳にもいかないもんな。
やっぱりまだテスト実装だから、色々と不十分な部分があるもんだ。……八百長の警戒もしてたし、色々と調整をしていく為のテスト実装なんだろうけどね。
「さてと、それじゃ俺は桜花さんのとこに移動してからトーナメント戦を開始するわ。1回戦のフーリエさんと十六夜さんはエンの樹洞に向かうとして、ベスタとイブキはどうする?」
「そのまま俺らもエンの樹洞の中で待機しておく。イブキ、それでいいな?」
「まぁそれで良いけどよ、これって前の試合とか見れたりすんのか?」
「……それなら桜花から、エンの樹洞の中でなら同じトーナメントのものであれば見れると聞いた」
「そういう事だそうだ」
「お、マジか! んじゃ、俺もエンの樹洞の中で待ってるぜ!」
へぇ、エンの樹洞の中が待機の為の場所にもなっているのは普通の模擬戦と一緒なんだね。ステータス画面からトーナメント戦の進行具合もチェックは出来るから、意外と常駐しなくても問題ないようにはなっているのか。
というか、十六夜さんは桜花さんから結構トーナメント戦についての情報は仕入れてきてたんだ。まぁ良い報酬が手に入る可能性があるならチェックはしておきたいよな。俺もどこかの機会でトーナメント戦に参戦したいとこだし、今度の土日にでもグリーズ・リベルテのみんなで参加してみる? ……それは今日の夜にでも相談してみるとして、さっさと始めていきますか。
「それじゃ中継というか実況の準備が出来たら呼びかけて、開始にするからなー!」
「はい、分かりました!」
「……あぁ」
「おっしゃ、勝ち抜いてやるぜ!」
「今回は油断は出来ないか……」
という事で、俺以外のみんなを地面に降ろしてから桜花さんの元に向けて移動開始である。まぁ桜花さんはエンの場所に近いのであっという間に到着したけど。……移動に使った岩は邪魔だから解除っと。
さて、それじゃ桜花さんの樹洞の中に……って、遠巻きに桜花さんの様子を伺っている灰の群集の人達がいる……? あれ、なんで樹洞に入らないんだろ?
まぁいいや、とりあえず樹洞に入っていこうっと。ん? 樹洞の中に人はいるにはいるけど、これまで何度かここで中継を見た時より圧倒的に人が少ないね。
「おっす、お待たせ」
「お、ケイさんが来たな」
「桜花さん、急な話だったのに受けてくれてありがとな。……ところで、この人数の少なさは?」
「あぁ、これか。十六夜さんは目立つのが好きじゃねぇのは分かってるから、一時的に樹洞に入れるのは灰の群集所属の俺のフレンドに限定させてもらってる」
「あー、そういう事か」
今、桜花さんの樹洞の中にいる人は常連かつ、特に信頼している人って感じか。商人プレイをしている桜花さんにとっては少し痛手なような気もするけど、この辺は十六夜さんへの配慮って事なんだろうね。
「……まぁ外に閉め出した形になっている人達には少し悪いとは思ってはいるが、何時間もって訳じゃないからこれくらいはな? 自分だけの都合で文句を言われる筋合いもないぜ」
「……それで文句を言って離れていくくらいなら、別にどっちでも良いとかそんな感じ?」
「ま、取引は俺が独占してる訳でもねぇからな。俺だっていつでもログインしてる訳じゃねぇんだしよ」
「確かにそりゃそうだ」
不動種でアイテムの取引をしているのは桜花さんだけじゃないし、取引が出来ない状態になるのは今の状況以外でも普通に存在する。
今まで何度か桜花さんが関係している十六夜さんの話は聞いているから、十六夜さんは桜花さんの常連なんだろうし、余計なケチをつける人を相手にするよりも優先度が高いんだろうな。
「ケイ、もう開始は出来るのかな?」
「あ、もう俺が開始にしたらすぐに出来るぞ」
「おー! それならすぐに始めるのさー!」
「そだね。ところで、どういう組み合わせになってるの?」
「お、そういや組み合わせはまだ表示してなかったな」
「ん? 桜花さんの方でトーナメント表って表示は出来るのか?」
「対戦中は無理みたいだが、今みたいな待機中なら問題なくいけるぜ。ほらよ」
そう言いながら、桜花さんがいつもの中継と同じように投影を始めていき、そこには組み合わせの決まったトーナメント表が表示されていく。おー、流石にこの辺の仕様はしっかりしてるんだな。
「わー!? ベスタさんはイブキさんとなんだー!?」
「フーリエさんは十六夜さんと対戦かな」
「……フーリエさん、このメンバー相手でほんとに大丈夫?」
「ヨッシさん、それは大丈夫です!」
「え、フーリエさん? あ、そういや連結PTだったっけ。……無茶はしないようにね?」
「いえ、無茶はします! それが全力で相手をしてくれる十六夜さんへの礼儀だと思いますから」
「……ふん」
「あはは、確かにそれはそうかな」
「フーリエさん、ファイトなのさー!」
「フーリエさん、頑張れよ」
「はい!」
ちょっとフーリエさんばっかに応援の贔屓がある気もするけど、未成体へ進化したばかりのフーリエさんと、灰の群集のトップクラスの戦力のベスタや、無鉄砲なところはあっても決して弱くはないイブキや、実力は未知数だけど確実に強者である十六夜さんというメンバーに紛れているんだからこれくらいはいいだろう。
「ところでハーレさんは実況だろうけど、今回に解説とゲストは誰?」
「解説はケイさんにお願いします!」
「って、そこは俺かい!? まぁ良いけどさ」
「ケイさんならそう言ってくれると思ったのさー! そして今回のゲストは、この方だー!」
そうしてハーレさんが指し示した先にいたのは、桜の根と脚が繋がって共生進化になっている桜花さんのメジロであった。
「桜花さんがゲストをやるの!?」
「まぁな。今回は取引と並行しながらじゃねぇから、俺も余裕はあるんだよ。ちょっとやってみたかったってのもあるから立候補させてもらったぜ」
「立候補だったのか。あー、でも普段は無理だもんな」
普段は桜花さんが中継している時は取引と並行作業をしながらだったりするから、今まではそんな余裕がなかった訳だ。でも今回は樹洞への立ち入りをかなり制限しているから、実況側に回っても問題ないんだな。てか、地味にやってみたかったんだね、桜花さん。
「ちなみに実況席はこっちな」
「おっ!? 桜花さん、このベンチみたいな形の岩はどうしたんだ?」
「それ、十六夜が持ってきてくれたんだよ。今回使うにはピッタリだろ」
「……確かにそうだな」
それにしても十六夜さんと桜花さんって、俺が思っている以上にかなり交流があるような気がするね。この巨大な岩のベンチは、妙に綺麗な断面だから天然ではなく切断して加工されているような……。これ、十六夜さんが巨大な岩を何かの手段で加工して作ってる?
うーん、水流の操作と砂の操作を併用して岩を切断した……? 昇華がなくても水と砂を予め用意しておけば不可能では……って、今はそこを深く考えてる場合じゃない!
とりあえず意識を切り替えて、ハーレさんと俺が実況席の岩のベンチの上に乗って、桜花さんのメジロは背もたれ部分に止まって準備は完了だ。
「それじゃハーレさん、開始の挨拶をよろしく」
「はい、分かりましたー! さぁ、トーナメント戦『グリーズ・リベルテ』の幕開けだー! 実況は主催となる共同体『グリーズ・リベルテ』所属のハーレと!」
「同じく『グリーズ・リベルテ』所属で解説のケイと!」
「取引、中継ならお任せあれ! ゲストは商人の不動種の桜花でお送りする!」
そこまで言った段階でトーナメント戦の管理画面から、トーナメント戦の開始を実行する。さて、これで1回戦の開始の準備が整ったらトーナメント戦が開始だね! 多分そこから1戦ずつは普通の模擬戦と同じになるはずである。




