第735話 乱入するモノ
今回のフィールドボスとして誕生させたアルマジロの表皮のような鎧っぽいのがあるキツネだけど、火属性持ちかつ水中への適応もない状態で湖の中へと沈めた事でかなり優勢に戦えている。
ま、アルマジロ要素の鎧っぽいやつの防御力が非常に高いけど、そこさえ避けてしまえばちゃんとダメージは入るから問題ない。それに火の魔法がメインだから、全く火が生成出来てない訳じゃないけど、ほぼすぐに無力化になってるね。ふっふっふ、地形こそ最大の武器という事だな!
まぁそんな風に油断をして予想外の形で今の状況をひっくり返されても嫌なので、慎重に対処はしていかないとね。さっきの攻撃でサヤが盛大に行動値を使ったから、その対応からやっていこう。
「まだ俺の拘束は可能だから、今のうちにサヤは行動値の回復!」
「うん、分かったかな!」
「ヨッシさんは今のうちに刺して効く毒を試してみてくれ。ハーレさんは大丈夫だとは思うけどヨッシさんが攻撃を受けない様にフォローをよろしく!」
「了解!」
「了解なのさー!」
さて、これで行動値を回復させつつ、効く毒がないかを試してみよう。魔法産の毒を水中で使うと薄まって広範囲に広がりそうなのもあるから、ここは物理毒で直接……って、キツネが盛大に暴れだした!?
魔法型かつ火魔法がまともに使えない状態のキツネに岩の拘束を破られて逃げられるとは思わないけど、それでも何かをしようとするのなら油断は出来ない!
「ケイ、抑え込め!」
「おう、分かってる!」
口から火が生成されたのが見えた……いや、口だけじゃない!? 拘束はしていなかった尻尾が長く伸びて背中側から頭部の方へと回して……って、キツネの狙いは魔法砲撃による火の昇華魔法!? ちっ、水の中で火の昇華魔法は流石にどうなるかわからないし、こうなったら発動前に潰して……って、遅かったか!
いや、途中で衝撃を与えてキャンセルさせれば問題はない! よし、岩を操作して湖底にキツネを叩きつけてキャンセルは成功っと。あ、でも少しは発動してしまってたか。
「わっ!?」
「サヤ、大丈夫!?」
「うん、大丈夫ではあるんだけど、水の中に少しの間だけでも火が伸びてきたのはびっくりしたかな」
ほんの少しの間だけとはいえ、水の中で結構な勢いの火を発生させるとは昇華魔法は凄いな。サヤの方に当たりかけたけど、無事に回避はしていたから問題ないけどね。
今のは多分俺の拘束を破壊しようとしてたんだろうけど、もし成功してたら至近距離からだったからそれほど威力が落ちずに流石に破壊されてたかもしれない。ふー、危ない、危ない。
「……ケイ、今のは大丈夫か?」
「ん? とりあえず岩にもサヤにも当たってないから大丈夫だろ」
「いや、そういう意味じゃなくてだな……。そこのサヤのいる場所の先って、成熟体のアロワナが――」
「アルさん、もうそれは既に遅いっぽいよー!?」
「ちっ、嫌な予感が的中か!」
「いやいや、ちょっと待てー!?」
「……もしかして、火の昇華魔法が当たったのかな?」
「……ありえるかもね?」
うっわ、そう言われるとそうとしか思えなくなってきたんだけど……。うん、姿はまだ見えていないけど、今いる場所より深いところから光っている魚影が徐々に見えてきた。ネス湖で深いところにいる光っている魚とか、以前にここに来た時の成熟体のアロワナそのものじゃん。
前の時は俺らには特に反応せずに素通りだったのに、今は近付いてきているのはかなり危険なんじゃ……くっ、下手すりゃこのまま全滅もあり得るな……。
「……あっ、こういう手もありか」
「どうした、ケイ?」
「いや、別にもう『水属性強化Ⅰ』は手に入ったから、全滅してもありかなーと?」
「……まぁ確かにそれもありではあるか」
「えー!? それじゃ瘴気石と経験値が勿体無いのさー!」
「なら、アロワナが来るまでにキツネを仕留めるまでかな!」
「それしかなさそうだね!」
「あー、それしかないよな!」
もう成熟体のアロワナから逃げるのは不可能だろうし、ここはアロワナからの攻撃をキツネで防御に使ってやる! ちょっとやけくそだけど、キツネは盾代わりだ!
「ハーレさん、危機察知で誰を狙ってくるかチェックを頼む! 俺はこのまま岩で拘束したまま、アロワナの攻撃を利用する!」
「了解なのさー!」
「その手があったか! そういう事ならケイはそれだけに集中しろ!」
「ほいよ! サヤは……悪いが、行動値が厳しいだろうから、ヨッシさんかハーレさんが狙われた場合は抱えて逃げ回わって時間を稼いでくれ」
「分かったかな! 『略:大型化』『略:自己強化』!」
「って事でアル、後の指揮は任せて良いか?」
「おう、任せとけ」
そんな風に作戦を立ててる内にアロワナが目の前まで来やがった! ちっ、作戦会議が終わるまでも待ってくれないってか!
げっ、アロワナの顔の前に何か光の球が発生して徐々に小さくなるように光が収束していくんだけど、あれってなんだよ!? 普通の光の操作でも、閃光との並列制御で使う光の操作とも何かが違う……? 今みたいに光を溜めていくような演出なんて……って、言ってる場合じゃない!
「ハーレさん、危機察知は!?」
「それが、私達には反応なしなのです!」
「はい!?」
え、俺達の誰も狙っていない……? あ、元々アロワナに攻撃を当てたか、もしくは攻撃行動に移行させたのは、俺らが戦っていたキツネだよな? もしかして、アロワナの標的って……。
でもハーレさんの危機察知の反応からすると俺らは狙われてないとはいえ、位置関係的にアルがヤバイはず!?
「アル、アロワナとキツネの直線上からすぐに離れろ!」
「ちっ、分かってる! 『略:旋回』!」
俺のその言葉を聞いてすぐにアルが回避行動に移るけど、これは間に合うか怪しいぞ! いや、それなら標的になってるっぽいキツネの方の位置を少しでもズラせば……! よし、アルの方向転換した方向と逆方向に……って、アロワナが収束していた光の球からレーザーっぽいのが発射されたー!?
「うお!? あっぶね!」
「……ぎりぎりセーフか」
何とかアロワナのレーザー攻撃がアルへと直撃するのは防げたけど、背中の蜜柑の木の葉っぱが少し消し飛んでいた。……うっわ、とんでもない威力。
それとキツネはアロワナのその一撃を受けて、下半身が消滅しているね。……うん、HPも残り1割も残っていない。俺が直前に少し移動させたから、その分だけ狙いが外れたみたいだな。
「……今の攻撃って何かな?」
「……ケイさんが使う光の操作とはまた別物って感じだよね。なんだかチャージをしてたみたいな感じだったしさ」
「はい! 成熟体からの新魔法だと予測してみます!」
「あ、それはありそうかな!」
「そこの3人、話し込むのはまだ早いって!?」
ぶっちゃけ俺としても今のアロワナの攻撃については非常に気になるけど、まだアロワナが辛うじて生きているキツネを狙ってるっぽいんだって! これなら岩の操作を解除して、キツネを解放した方が安全――
「わっ、眩しいかな!?」
「アロワナが閃光を使ってきたのか!?」
「ちっ、何を!? ハーレさん、危機察知は?」
「盲目中なのでわかりません! でも、奇襲の時にあるはずの警告音もないです!」
「……やっぱりキツネ狙いなのか?」
このタイミングでアロワナが閃光を使って来るとは思わなかったけど……うお!? なんか盛大に水の流れが乱れて……って、岩の操作の効果が切れたな。盲目で何も見えないけど、一体何が――
<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『横取りされたモノ』を取得しました>
<スキル『アイテム還元Ⅰ』を取得しました>
<ケイ2ndが規定条件を満たしましたので、称号『横取りされたモノ』を取得しました>
<スキル『アイテム還元Ⅰ』を取得しました>
え、ちょっと待って!? 何、この称号とスキル!? 周囲の様子は全く何も見えないままだけど、一体何がどうなった!? くっ、さっきまでは俺の懐中電灯モドキとアロワナの光で見えやすかったのに……。
いや、落ち着け。よく称号の名前を考えてみるんだ。『横取りされたモノ』という事は、俺らの獲物であったキツネを急に現れた成熟体のアロワナに横取りされたという事なんだろうな。状況的にそれは間違っていないはず。
それに地味に経験値が入ってきているから、キツネがアロワナに殺られたのか? でも討伐報酬は入ってきていない……。それにしてもLv19のフィールドボスにしては経験値は少ない気がするぞ?
「称号『横取りされたモノ』にスキル『アイテム還元Ⅰ』か……。ケイ、またこれは報告事案なんじゃねぇか?」
「……多分そうなんだろうな。聞いたことない称号とスキルだしさ」
もしかしたら誰かが既に見つけている可能性もあるから確認は必要だけど、報告は考えておいた方がいいやつなのは間違いない。……フィールドボス同士が戦い合う事もあるとは聞いてたけど、この状況は驚きだな。
「……ねぇみんな、使ったはずの瘴気石が戻ってきたんだけど……?」
「ヨッシさん、マジで!?」
「うん、+10の瘴気石と+8の瘴気石」
「こりゃ、この称号取得時の戦闘に使ったアイテムが戻ってくるって感じか?」
「あー、それはアルの言う通りかもな……」
「それは良いんだけど、周りがまだ見えないのさー!」
「……あはは、やっぱり閃光は厄介かな。ハーレ、危機察知は大丈夫?」
「一応、今のところは問題なしです!」
ふむ、とりあえずみんな揃って盲目中だけども、襲われる心配はないっぽいな。それにしても、ある程度の予想は出来ているんだけど、キツネとアロワナはどうなった……?
うーん、下手に動くと危ないし、危機察知の反応がないなら盲目が治るまでは大人しくしておこう。
「あ、視界が戻ってきたかな」
「さてと、キツネとアロワナはどうなった?」
「……特に見当たらねぇな?」
「あ、何か落ちているのです!」
キツネとアロワナの姿は見えないけども、どうやらハーレさんが何かを見つけたみたいだね。とりあえずその見つけた物を確認していこうじゃないか。
えーと、ハーレさんが手に持っているのは……瘴気石か? ふむ、これはキツネが倒された証みたいなものなのかもしれないね。
「普通の瘴気石だったのさー!」
「……もしかしてだけど、キツネの討伐分の報酬の代わりか? 少なかったとはいえ、経験値もあるにはあったしよ」
「多分そうだろうなー」
本来ならキツネを仕留めたら手に入ったはずの経験値が少なくなって、参戦人数分だけ手に入るはずだった瘴気石は1つだけか。割に合うのか合わないのか、何とも判断に困るとこだな。
でもフィールドボスの誕生に使った瘴気石が戻ってくるのであれば、悪くもないのかも?
「あ、みんな。さっき瘴気石が戻ってきたって言ったじゃない?」
「言ってたけど、ヨッシさん、何かあるのか?」
「うん、ちょっとね。確定で戻ってくるのは『アイテム還元Ⅰ』を取得した初回のみって表示されてたんだ」
「……そう来たか」
「まぁ毎回戻ってくる訳もないわな」
「……確かにそれもそうかな」
「それで具体的に『アイテム還元Ⅰ』ってどういう効果なんだろねー!?」
「一応それも確認しといた方が良さそうだな」
さっきから周囲を警戒してはいるけど、あの成熟体のアロワナの姿は全く見当たらないんだよな。まぁ既にキツネを倒して去っていったのなら良いんだけど……って、あんまり良くはないな。狙っていた『水属性強化Ⅰ』を手に入れる事は出来たから第一目標はクリアしたけど、経験値は台無しになったからね……。
その代わりに得たスキルの性能がどんなものか確認してからでないと、気が済まないんだよな。まったく、一度は全滅を覚悟したとはいえ、それ以上の変な形になってしまった……。とりあえずスキルの内容をちゃんと確認しとこ。
『アイテム還元Ⅰ』
低確率で使用したアイテムを消費しなかった事になる。
(課金アイテムと一部のイベント配布アイテムは除く)
んー、アイテムが消費されない場合があるって効果自体は地味にありがたいけど、低確率ってのが微妙ー! えー、どのくらいの確率で使用されない事になるのさー。
確かにアイテムが減らない事もあるのは良いんだけど、完全なる運任せー! あ、でも結構強化した瘴気石を使った場合とかに効果が出たらかなりお得ではあるのか。無いよりはあった方が確実に良いスキルではあるんだな。
「これって、場合によっては便利じゃないかな?」
「ま、運次第ではあるから、発動したらラッキーなスキルだね」
「はっ!? これって帰還の実とかにも効果はあるの!?」
「……なるほど、転移系のアイテムにも有効な可能性もあるんだな。こりゃ早めに公表して、検証案件だな」
「……確かに転移系にも効果があるなら、そうなるな」
ハーレさんが言うまで転移系のアイテムに効果があるとは思いついてなかったけど、帰還の実に効果を発揮する可能性はあるな。でも課金アイテムとイベント配布アイテムが除外なら転移の実と転移の種はアウトな気もするね。
ただ一部のイベント配布アイテムは除くっていうのが気になるところ。この書き方なら、イベント配布アイテムでも消費しない事があるのも存在するって事だしね。スキル強化の種は絶対に除外側のアイテムだと思うけど。ま、その辺を確認する為にも群集への報告は必須だなー。